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【極みの美食対談】岩佐十良×徳山浩明:「徳山鮓」で味わう、唯一無二の発酵料理
インタビュー

【極みの美食対談】岩佐十良×徳山浩明:「徳山鮓」で味わう、唯一無二の発酵料理 里山十帖(新潟県/越後湯沢)

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一皿の料理の細部にまでこだわり尽くし、究極の美食体験をする宿――。JR「余呉駅」から車で約10分。“発酵料理”の概念を覆し、国内外問わず多くの美食家から注目を受ける宿「徳山鮓」。今回は特別企画として、「里山十帖」オーナーであり「自遊人」編集長の岩佐十良氏と、「徳山鮓」を創業し今なお第一線で腕を振るう徳山浩明氏の対談が実現しました。昨今注目を集める発酵料理の魅力や、お客様に喜んでもらうために大事にしている矜持とは。

「徳山鮓」でしか出会えない美食を求めて

岩佐十良(以下岩佐):私と「徳山鮓」さんの出会いは、6年くらい前になりますかね。今回で5回目でしょうか。1回目は、食に造詣が深いジャーナリストで写真家でもある森枝卓士さんに「徳山鮓に行ったことがないなんて!」と言われたのがきっかけですね。
創業時は、日本中でも地元の風土・文化を活かしたお料理を出されるお店って少なかったと思うんですが、「徳山鮓」を始めたきっかけをお聞かせください。

徳山浩明(以下徳山):もともと京都で修業していまして、33、34歳のときに「京都でお店を出そう」ということになって。昔の師匠に相談しに行ったら「お前の腕なら大丈夫だ」と。ただ、当時はバブルの崩壊もあり景気は悪く、タイミング的に少し待った方がいいのではないかということになったんですね。それで、故郷の余呉に帰ってきたときに「日本発酵機構余呉研究所」ができたんですよ。

徳山:私が研究所のオープンパーティーの料理人として選ばれて、お料理をお出ししていたら「今日の料理、素晴らしいんだけど誰が作っているの」と、当時研究所の所長で発酵学の権威でもある小泉武夫先生(東京農業大学名誉教授)から声をかけていただいたんです。そこから幾度かお酒をご一緒したときに、「いやあ、滋賀には鮒鮓というものがあるのに、なんでどこの料理屋も出さないんだ」って言われて。「鮒鮓は匂いがするから、みんなに嫌われるんですよ」って言ったら「じゃあそこを何とかすればいい」って、簡単にとても難しいことをおっしゃると思いました。でも小泉先生には「発酵の魅力をもっと多くの人に伝えられる施設が作れたらいいね」という夢があって、それで生まれたのがこのお店。だから「徳山鮓」は、先生の夢みたいなお店なんですよ。

岩佐:素敵な出会いですね。

徳山:今では、発酵料理を自分のオーベルジュでやりたいという方に、「徳山鮓」へいらしていただけるようになりました。

すべては一つの水で。絞り込んだ食材たち

岩佐:ここは本来ならば、何でも手に入る場所だと思うんです。日本海は小浜まですぐですし、若狭湾もすぐそば。しかも、京都から明石の鯛なども引っ張れる。なおかつ、滋賀には琵琶湖の幸や山の幸もある。そんな何でも揃う環境の中で、「徳山鮓」は琵琶湖よりもさらに余呉湖の周辺ってところに絞り込まれた。これ、なかなか大変だったと思うんですけれども。

徳山:よく“地産地消”と書かれる方がおられますが、私はあまり使いたくありません。“地産地消”は、どこまでの範囲のことを指しているのかがわからないからです。自分が住んでいる場所から30~50km圏内の食材というわけではなくて、私は一つの水で全部が仕上がっている場所が自分の範囲だと思っています。山も水も違ったら、同じ食材ではないんですよ。仕込み水にこだわってお酒を作るのも同じ意味。同じ水から育った山菜、お米、野菜、魚。それらは、すべて同じ遺伝子のような気がしますね。

岩佐:「徳山鮓」さんのお料理は、お皿の中に同じ水で育ったすべての生態系が表現されています。
新鮮な越前ガニがいくらでも手に入る立地ですから、冬の「徳山鮓」でそれを出してもおかしくないわけですけど、出さないんですね。

徳山:その世界のスペシャリストの方々がいらっしゃるんですから、あえて出さなくてもいいと思っています。

徳山:宿泊するお部屋もそうなんです。うちはすべての客室に露天風呂が付いていたり、お部屋がいくつもあったりするわけではありません。

岩佐:本日、泊まらせていただくお部屋は、余呉湖はもちろん素敵な梅の花が見える素晴らしい景色でした。とても寛げる自然の空間だと感じましたね。
「徳山鮓」さんのように、“わかっていただけるお客様”だけに絞り込んでいくスタイルで成功した姿は、他の施設に「地方でもやっていける」と勇気を与えてくれたことだと私は思います。

“発酵”へのこだわりと美食への追求

岩佐:徳山さんが余呉湖を中心とした生態系に絞り込んだのは、発酵というものがベースにあったからだと思うんです。“発酵”そして“鮒鮓”は、ここの気候・風土じゃないとできない。東京などでも“発酵”はしますが、余呉の発酵とはまた違ったものになるでしょうね。
「徳山鮓」さんのあたりは、関西圏では一番雪の降るところで、雪が降るということは、夏は高温多湿になりますから、水が豊富で山には非常に豊かな山菜が育つ。山も川も湖も豊かで、発酵の環境が整っている。これが日本海側、雪国の特徴なんでしょうね。

徳山:余呉湖の魚や鮒鮓に使うニゴロブナも獲れますし、京都で教わった技術と素材を合わせて、どういう風にすればいいかをいろいろ考えていく。そういう料理をお出しすることで、徐々に受けてきたと思います。

徳山:私のように余呉に住んでいると、“熟れ鮓”があったので発酵を身近に感じていました。でも、小泉先生から「何の料理にしても、味噌、醤油、酢とかが必要。発酵ものがないと料理はできないんだよ」と聞いたときは衝撃でしたね。料理人さんは野菜や魚を調理するわけですが、そのわき役は全部発酵もの。私がこの店を始めることをきっかけに、鮒鮓を世に出すという運命もあったんですけど、やっぱりあの当時は誰も発酵をやっていなかったんです。

岩佐:20年くらい前だと、自分のところで味噌を作っている料理人ですらほとんど聞いたことがないですね。その時代なら、もちろん漬物もほとんどのところが作っていないですし。ましてや鮒鮓というものを、京都で修業をした料理人さんが作るっていうのは、ちょっとあり得ないことだったと思うんですよね。今でこそ私も言っていますが、“ローカルガストロノミー”の考え方は、たぶん徳山さんが先駆けだったのではという気がしますね。

岩佐:もうひとつ「徳山鮓」さんのすごいところは、鮒鮓の味なんですよね。熟れ鮓全般に言えますが、鮒鮓ってみなさん「癖があるので好き嫌いがあります」とおっしゃるわけですね、「食べられないかもしれません」って。でも「徳山鮓」さんの場合、癖があるって言われる方はほとんどいらっしゃらないんじゃないかと。熟れ鮓の概念を持っている方の8~9割が、そのイメージを覆されると思うんです。たぶん、徳山さんが子供のころに食べられた鮒鮓は癖があったんですよね。でも今それがないのは、特別な添加物や機械を使っているからではなく、発酵を研究して研究して研究したら、今の味になったわけですよね。これって“綺麗な発酵”と言えばいいのか、それとも“菌が喜んでいる発酵”とか“状態がいい発酵”と言えばいいんでしょうか。

徳山:処理はきちんとしております。「ここは絶対に掃除しないとダメだ」とか「この匂いはダメだから、絶対に取らないと」とか、いろいろ考えるじゃないですか。それを試行錯誤して今の形になってきた。最終段階は昔に戻るかもわからないけど、今これだけ鮒鮓が全国に浸透してきて、みなさんが作られるようになって、召し上がっていただけるようになったら、また違う発酵のステージに行けますし。発酵はコントロールできるものではありませんけど、自分の経験値の中でコントロールしていって、それがどうなるかっていうのをちゃんと説明できるようにしようと。究めることはできないですけど、今言われている鮒鮓にしても今後はもっと劇的に変えるかもしれません。

岩佐:多くの賞を獲得しても、「究めることができない」とおっしゃるのは、微生物の世界が偉大すぎるからだと思うんです。実際、他の方々からしたら相当究めていらっしゃいますし。以前お会いした際に、「いろいろと企業秘密があるんです」というお話がありましたけれども、相当な工夫をしていらっしゃって、できる限り菌に寄り添いながら自分のイメージする味に近づけられている感じがありますよね。

岩佐:鮒鮓は本当に難しいと思います。しかも、様々な素材で試されているじゃないですか。試す機会が1年に1回しかないというのも発酵の面白さであり、大変なところでもあり、それが永遠に続いていくところなのかとも思うんですけども。

徳山:1回しかないからこそ、アイデアを大事にしてますね。99%失敗するとしても、1%の可能性があるならやらなきゃ納得できないんです。まあ、失敗してもヒントになるわけで。そうやって、少しずつ進化して次の段階へ行けると思っています。

岩佐:ちなみに、「徳山鮓」さんに来て「私、鮒鮓が苦手なんです」って方は……。

徳山:たまにおられますよ(笑)。

岩佐:いらっしゃるんですね!?

徳山:ええ、でも、そういう人にこそ来てほしいとお話しさせてもらっています。挑戦してほしい、鮒鮓が嫌いなまま一生を終えるのは損ですよと。それで「じゃあ食べてみようかな」となったら、まずはマイルドなものから食べてもらって。その流れで、鮒鮓の前に食べる料理として「鯖の熟れ鮓」ができたんですね。チーズを合わせて食べて、「想像したものと違う」「なんでこんな味がするの?」と、まずそこで熟れ鮓の概念を外してもらうんです。

岩佐:たしかに、生とか酢じめよりも鯖に旨味が乗っていると感じました。そして「吉田牧場」さんの「カチョカバロ」との相性も素晴らしい。通常では手に入らない、「吉田牧場」さんのチーズ。良いものと良いものを合わせているから、バランスが取れていますよね。

徳山:ありがとうございます。今後も新たな取り組みをいろいろ考えています。興味を持っていただけた方には、ぜひ「徳山鮓」へお越しいただければ嬉しいですね。うちでしか味わえないこだわりの純米酒「紫霞の湖」もご用意してお待ちしています。

“発酵料理”や“ローカルガストロノミー”など共通点が多い岩佐さんと徳山さん。お客様をおもてなしするために、何を大事にしなければいけないのか。その矜持を感じた対談でした。美しい自然の中、美味しいお料理とお酒を一緒にいただき、その気分を保ったまま気持ちよく眠れる。シンプルながら、到底真似のできない唯一無二の宿「徳山鮓」。まさに「極みの美食宿」です。

***プロフィール***

岩佐十良
1967年東京都生まれ。武蔵野美術大学在学中の1989年にデザイン会社を創業し、のちに編集者に転身。2000 年に雑誌『自遊人』を創刊。2004年、拠点を東京から新潟・南魚沼に移転。2014年に宿をリアルメディアと定義した「里山十帖」を新潟県大沢山温泉に開業し、グッドデザイン賞BEST100に選出される。「箱根本箱」「講 大津百町」等の企画ディレクションも行う。

徳山浩明
1960年生まれ、滋賀県出身。高校卒業後、京都の老舗料亭「河しげ」で修業。余呉湖半の宿へ料理長として招かれて帰郷した際、東京農業大学の教授であり、発酵学の権威である小泉武夫氏に出会い「発酵料理」の道を究めること決意。郷土料理のそれとは一線を画す『鮒鮓』を完成させる。2004年、余呉湖湖畔に「徳山鮓」を創業。

【徳山鮓】公式ホームページ https://tokuyamazushi.com/

 

里山十帖

里山十帖

新潟県/越後湯沢

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更新日時2020.03.31 12:10

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