FOLLOW一休コンシェルジュをフォロー

FOLLOW一休コンシェルジュをフォロー

山代の自然と歴史が生み出す、軽やかな和の形 
インタビュー

山代の自然と歴史が生み出す、軽やかな和の形  べにや無何有(石川県/加賀)

加賀・山代温泉郷にひっそりと、山庭を囲むようにして建つ『べにや無何有』。柔らかな日差しの中で自然に癒され、静かで平和なひとときが過ごせる空間が広がります。今回は、オーナー・中道一成様、女将・中道幸子様に伺った『べにや無何有』の魅力をご紹介します。

「何もない」ことに価値を見出す取り組み

エントランスに入った時から自分の家のような感じがして、とても心が落ち着く空間ですね。こちらの壁も素朴で素敵です。

(中道幸子様:以下女将)「自分の家のような感じがした」とおっしゃっていただきありがとうございます。ルレ・エ・シャトーの基本精神の“ファミリースピリット”とも重なるので、とても嬉しいです。
こちらの土は「珪藻土」と言って、能登半島で日本一採取量が多いものです。よく七輪などに使われるので、ダイニングでも七輪を使っています。ロビーは全て珪藻土で、叩き仕上げの土間づくりとなっています。土間の一角には山庭に落葉していた本物の紅葉を遊びで仕込んだりもしています。

「べにや無何有」という宿の名前の由来についてお伺いできますでしょうか。

(中道一成様:以下社長)
祖父と祖母が昭和3年の創業時に付けたのが“べにや”という名前でした。昭和45年、父の代にこの場所に移り、私達の代になってからは30年ほど。約90年の歴史がございます。
“無何有”という名前は、建築家の竹山聖氏との出会いから生まれました。今の時代にふさわしい宿として、理想の空間を作りたいという思いから、彼に設計を担当していただきました。まず、広い庭のある敷地を見ていただき、建築によってこの土地の持つ力を出来るだけ引き出していただきたいとお願いしたことが出発点となりました。

(女将)当時は団体旅館が全盛の時代でしたが、私たちは既存の旅館とは全く違うコンセプトで宿づくりを始めていました。竹山さんは、その思いを汲み取ってくれて、“無何有”という名を提案してくださいました。「無何有」とはもともと荘子が好んだ言葉で、何も無いこと、無為であるということ。“何も無いことに価値を見出す”という思想は、私たちが目指す宿の形と響きあうと感じ「べにや無何有」という名になりました。

『べにや無何有』ならではの魅力や、大切にされていることはどのような点でしょうか?

(女将)名前が示す通り “何も無いことに価値を見出す”日本人独特の美意識を大切にしています。“清らか”であること、 “簡素”であること、“自然との調和”を3本の柱としています。
「茶室」に代表されるように、椿の花が一輪活けてあるだけですがすがしい清らかな気持ちになるのは、日本独自の美しさ。そんな美意識を大切にしています。
また、畳や障子、竹、和紙といった、昔から日本で使われてきたけれども現代の生活では無くなりつつある伝統的な素材を、改めて丁寧に調整し、あまり重たくない簡素で軽やかな新しい和の形を目指しております。
自然との調和で言えば、ロビーでは外から陽が差すと土間の上に影が映り、木漏れ日が風とともに揺れる瞬間を感じられます。時間と共に陰影が白い壁を伝うように移り変わっていく無何有の風景を、できるだけお客様に愉しんでいただけるように心がけています。

日本人でも忘れてしまいがちな文化を大事にされているからこそ、海外のお客様からの評価が高いという点につながるのかもしれませんね。

(女将)海外の方は、ゴージャスさとは違う美しさや、“禅”に代表されるような雰囲気に魅力を感じていただけているようです。『日本の美しさを感じることができた』というご意見が多いですね。

ルレ・エ・シャトーの取り組み

2008年に加盟されたきっかけはどのような経緯だったのですか?

(社長)ルレ・エ・シャトーは女将が前からずっと魅力を感じていました。“ファミリースピリット”というか、各宿やオーナーが持っているキャラクターや自然、歴史が輝くグループ。そういう特別な魅力を感じていました。

素晴らしい施設が多数集まる中で2013年に「ウェルカムトロフィー賞」を受賞されたのも、「べにや無何有」の魅力が新鮮に映る部分があったからではないでしょうか。

(女将) “ファミリースピリット”が評価された点は、本当に嬉しかったです。「ウエルカムトロフィー」受賞の際、トリノのオペラ座で、世界中のメンバーの前で「おもてなし」のプレゼンテーションとして、主人とふたりでティーセレモニーを披露いたしました。
日本のルレ・エ・シャトー加盟メンバーの皆さんにも手伝っていただき、日本から持参した着物をルレ・エ・シャトー会長のジャウメ・タピエス氏と、ドミニク・ロワゾー副会長に着ていただき、お客様役をしていただきました。

(社長)お茶はやはり手間がかかるので、茶を濾したり、お湯の用意をしたり、日本チームが皆で協力しくれて温かみを感じました。快く手伝ってくださって、すごく良い思い出です。

(女将)300~400名が集まる会議中に、静まり返った会場でティーセレモニーを行い、終わった後はすごい拍手でした。日本のおもてなしを支える「お茶の精神」が世界のメンバーに認めてもらえたことが嬉しかったです。日本のもてなしの心は外国人にもちゃんと伝わると確信したタイミングでもありました。

ルレ・エ・シャトーでは“地域貢献”を重視されていらっしゃいますが、心がけていらっしゃることはありますか?

(社長)元々この地域は美味しいものがいっぱいあり、世界的なシェフも関心を持っておられます。食材はもちろん九谷焼や漆もあり、すごく恵まれているな、と思っています。
その上で「無何有らしい形」を考え、献立なども料理長と女将とで常にコミュニケーションを取りながら、工夫しています。

(女将)土地との関わり合いでいうと、2006年に始めたスパ「円庭施術院」の取り組みがあります。山代は1300年の歴史がある古くからの温泉地で、平安時代の末期に非常に栄えていました。当時は山代の中心に『薬王院温泉寺』があり、町も温泉も全て寺のものでした。
(べにや無何有が建つ)高台の辺りは当時の本堂の跡地ということが薬王院温泉寺の縁起図に書いてあり、 “薬師山”という名前で呼ばれていたことを2004年頃に知りました。当時の温泉寺のご長老が、加賀市の美術館で説明されていたのを聞き、薬師山の歴史をお客様に伝えたい、と強く思いました。

スパに結び付けた由来ですが、その当時の薬師山では、五十音の基礎を作った明覚上人という悉曇学の大家が薬王院温泉寺の住職を務めており、その明覚を慕って日本各地から学僧が集まり、経典研究などを行う一大文化圏を作っていたそうです。遠方から来た学僧が薬草を持ち込み、温泉や薬草を使って、病気の治療を施したという史実が残っています。そこで、「温泉」と「薬草」を最新の技術で現代に蘇らせ、スパのトリートメントに活かして行こうと スパ「円庭施術院」で“薬師山トリートメント”を始めました。

スパの生い立ちの背景が壮大ですね。土地のものを紹介するというルレ・エ・シャトーの精神に則っていらっしゃるんですね。

(女将)昔からその土地で行われていた施術は、今も変わらず人の心と身体を癒してくれるはず。そういう願いで、「円庭施術院」を作りました。
ダイニング「懐石方林」でも、正面に広がる山庭が昔からの薬師山の雰囲気を彷彿とさせるような空間になっています。
いらした人に「ここに来てよかった、ここならではの出会いがあった。」と思えるものに触れていただける。そんな土地の魅力や歴史は、私達が誇りにすべきものだと思います。

海外のお客様も多くいらっしゃる中で、取り組まれていることは何かありますか?

(女将)世界中からお客様をお迎えしておりますが、日本の美やおもてなし、文化を求めていらっしゃる方が多いです。歴史や日本らしさを大事にされる点では、日本のお客様と何ら変わりはありません。
外国のお客様への取り組みとしては、連泊の方が多いため「ユニークエクスペリエンス」に力を入れています。外国人だけでは行くのは難しい山奥の限界集落の自然の中でのワサビやしいたけ採りの体験、人とはまず出会わない山間の滝「鶴ヶ滝」への散策など、無何有のスタッフがお客様をお連れします。
(社長)「鶴ヶ滝」には昔から竜神様が住んでいると言われていて、捧げものとして生卵を滝壺に投げて捧げる風習があります。スタッフが生卵を持参して、風習について説明し、お客様に滝壺めがけて生卵を投げ入れていただくと、とても喜ばれますね。土地の習慣についての理解や、自分がした体験が貴重な思い出として残るのかな、と。

スタッフがお連れするというのはなかなかユニークですし、究極のコンシェルジュのようですね。

(女将)スタッフが一緒に行くということに加え、無何有のユニークエクスペリエンスにはもう一つ約束があって、お客様は、ただ何かを見たり、話しを聞いたりするだけではなく、お客様自身に何かに挑戦していただいています。
紙漉き作家さんのところでの紙漉き体験や、蕎麦づくり体験、無何有のシェフとのクッキングクラスなど、多くのエクスペリエンスを用意しております。
地方の文化の担い手と、外国のお客様をつないでいくということも、無何有の役割の1つだと考えています。

今の時代に求められる「旅のかたち」

―お客様から求められているニーズの変化などがあれば、お教えいただけますか?

(社長)国内外を問わず、建築やデザイン、茶席といった日本文化、伝統文化に興味を持たれている方が多い印象です。日本文化に造詣が深い外国人の方も非常に多く、知識も豊富ですので、本物をきちんとお伝えしないと、と常々感じます。
(女将)北陸新幹線が開通して以来、金沢が話題になっていることもあり、日本のお客様も「金沢らしさ」「加賀らしさ」「石川らしさ」を求めていらっしゃいます。土地の歴史などをご紹介しながら、「べにや無何有」らしさを出していければと思います。

一休.comでは「こころに贅沢させよう。」をコンセプトとしております。べにや無何有様が考える“こころの贅沢”とは何でしょうか?

(女将)「新しい発見や出会い」がこころの贅沢ではないでしょうか。
失われつつある日本の良さ、和の形など「自分のルーツ」に気が付くことかもしれないですし、その土地ならではの歴史や文化や人と触れ合うことかもしれないですし。知らなかったことに出会って、成長できたな、と思うことが心の贅沢かなと。

(社長)この土地は本当に豊かで、歴史も文化もあり、提案できることが何か必ずあります。2度3度来られても深みが加わってきますので、また来なくちゃ、ということを感じていただき、それが興味を膨らませていくというきっかけになっていただければと。
ゆっくりするのはもちろん大事ですが、ぼんやりしている中で本当に興味があったことに気づくのがこの場所であればいいな、と感じます。

引き算の美学の中で、軽やかな和を提案されている「べにや無何有」。自然光の美しさに触れ、静かな悟りやひらめきが生まれるような力を持つ印象を受けました。清い空気の流れの中、安らぎに秘めた情熱が感じられる宿の魅力は、連泊することで一層深みを増すのではないでしょうか。

▼スパのご予約はこちら
https://spa.ikyu.com/day_spas/660049/

***********************************
中道一成
金沢大学法文学部卒業後家業を継ぐ。1993年三代目べにや無何有社長に就任。
山代温泉観光協会副会長、謡観世流シテ方梅若実氏に師事、茶道裏千家専任講師

中道幸子
金沢大学教育学部を卒業後、金沢市にて小学校教員として勤務。その後べにや無何有女将。
スパ円庭施術院ディレクター、Yogaインストラクター、華道古流教授、茶道裏千家専任講師
***********************************

べにや無何有

べにや無何有

石川県/加賀

この記事が気に入ったらシェア!

あわせて読みたい

「憧れの旅館」の人気記事