岡山でも有数の観光地である倉敷市の美観地区。なまこ壁や虫籠窓、本瓦葺の屋根が重なる家並みは美しく、エリアのサイズ感もゆっくり歩きの散策にぴったりで、多くの人々が訪れます。その美観地区に2024年に開業したのが「撚る夜YORUYA」。地域にも開かれたワインバーを併設した、新感覚の料理宿です。
目 次
築100年の素封家別邸を改修

伝統的家屋が並ぶ美観地区の中でも、ひと際端正な姿を見せる「撚る屋 YORUYA」。いくつもの格子窓から柔らかな光がもれる夜は、一層凛とした風情に。辺りの顔と言ってもいいほど、洗練の構えです。この建物は、明治時代に呉服屋を営んでいた素封家「難波家」の別邸として建てられたもので、築110年。別邸時代は、ここで商談が行われたり、宴会が開かれたり。さまざまに活用されてきましたが、旅館として親しまれていた時代もあったとか。

この度の開業にあたっては、新たな建物も加えて改修され、2024年11月に料理宿として新スタートを切りました。ちなみに宿の運営は、広島県尾道市の「Azumi Setoda」や琵琶湖の辺りで一棟貸しの料理宿「福田屋」を手掛ける「Naru Developmeents」が行なっています。
5タイプ13室で、ゆっくりくつろぐ

館内は、伝統を踏襲した外観とは少し趣を異にし、新と旧が程よく入り混じったこだわりの空間。5タイプ13室のほか、縄のれんをくぐってすぐの所には、宿泊者以外でも利用できるカジュアルなBARスペースが設けられており、地域との交流の場にも。北前船の中継地として栄え、多くの人やものが行き交った倉敷らしさを象徴したスペースです。

「スイート」は1室のみ。専用の庭や半露天風呂が備えてあって、広さは約76平米。ゆったり広々しています。改修部分と増築部分が絶妙に混ざり合った空間からは手仕事の温もりも感じられ、アットホームな趣も。肩肘張らずに過ごせる雰囲気です。

母屋棟の2階に位置する「スタンダード」は3室。広さは約30平米。畳敷のフロアや天井を渡る梁の存在感が光ります。このほか、坪庭が見えるメゾネットタイプの客室、天井の高い「ジュニアスイート」などから、宿泊するお部屋を選べます。
季節の移ろいに合わせて素材と調理法を選ぶ

料理宿を名乗るだけあって食事の評価が高いのも特徴のひとつ。
提供されるのは、暦の上の四季ではなく、二十四節気・七十二候、実際の季節の移ろいに合わせて、素材を選び、調理法を変えた日本料理。コースのみの提供ですが、塩や酢、ポン酢など、基本的な調味料まで手作りしているそうで、この宿に足を運ばなければ味わえない料理ばかりです。

たとえば、岡山名物のデミカツをアレンジした一品は、多くのゲストがこの宿のシグネチャーに推す必食メニュー。倉敷は瀬戸内海に面しているため、海の幸に恵まれている一方で、実は近郊には昔から牛肉に親しむ食文化があるそうで、いわば牛肉の料理はこの辺りの郷土料理の一つと言っても良いのかもしれません。

ダイニングには中央にコの字型のカウンターが据えられており、調理する手元を見ながら食事できるのも魅力。隣り合ったゲスト同士で会話が進むこともありそうです。先述のBARスペースは10席ほどの小さな空間ですが、光を落とした粋なワインバー。地元産はもちろん、国内外から取り寄せた多種多様なワインが並んでおり、夕食後のひとときを過ごすのにもってこいです。

江戸時代の干拓事業によって生まれ、人と物が行き交う集散地として、紡績業の産地として栄えた倉敷。「大原美術館」をはじめ、気の利いた民芸品店や個性的なショップが立ち並ぶ美観地区の一角に立つこの宿へは、JR倉敷駅から歩いて約20分。ただ通り過ぎるだけでなく、一夜をこの宿でじっくり過ごすことで見えてくる、倉敷の魅力。それを発見しにぜひ出かけてみてはいかがでしょう。
撚る屋 YORUYA
岡山県/倉敷市












