加賀百万石・加賀藩の城下町として栄えた金沢。戦災を免れたこともあり、藩政時代から続く美しい街並みには、今なお、長い歴史が偲ばれる素晴らしい宿が点在しています。今回ご紹介する宿は、そんな金沢の歴史がそこここに漂う、10室以下の宿。加賀友禅や九谷焼などの伝統工芸に、あるいは加賀料理など、洗練されたお料理に、さまざまな場面で金沢らしさが漂う宿ばかりです。
目 次
1.金沢の伝統文化ともてなしを継承する加賀料理の名宿
料亭旅館 浅田屋(石川県/金沢)

金沢の台所「近江町市場」のすぐ隣。純和風の端正な外観がひと際目を引く「料亭旅館 浅田屋」。前身は、加賀藩に命じられて約200年にわたって続けた御用飛脚とか。月に3度、江戸と金沢を往復する「江戸三度」の任を全うし、宿へと姿を変えたのが1867年(慶応3年)。以来、150余年にわたって、多くの旅人を迎えてきました。

秋田杉を用いた数寄屋造りの建物にわずか3室。温泉もエレベーターもありませんが、加賀蒔絵や九谷焼など、金沢の伝統工芸の粋を集めた設えや料理から「金沢での滞在をより良いものに」という、もてなしの心が強く伝わってきます。

自慢の料理はもちろん伝統的な加賀料理。さらに「能登牛の治部煮」「紅ずわい蟹茶碗蒸しトリュフ餡」など、この宿ならではのオリジナリティを加えた名物料理も多く、伝統+αの魅力がたっぷりです。
料亭旅館 浅田屋
石川県/金沢
2.前田公縁の地に立つ、ミシュランガイド五つ星の旅館
料亭旅館 金城樓(石川県/金沢)

古くから商人町として栄え、華やかな文化が生まれた浅野川界隈。「料亭旅館 金城樓」が佇むのはその一画で、実は前田利家公の長女に婿入りした前田対馬守の豪奢な屋敷跡。宿屋を始めたのは1890年(明治23年)。

大きな瓦屋根を載せた現在の外観は、辺りのランドマーク的存在と言っていいでしょう。6つの客室は純和風ですが、ベッドを備えた部屋もあるので和布団が苦手な方もご安心を。

料理は茶懐石の伝統と北陸の郷土料理を巧みに取り入れた懐石料理。代々受け継がれてきた器に美しく盛られ、供されます。宿は「ミシュランガイド北陸2021特別版」で、北陸唯一の五つ星に輝いた旅館。すぐ近くには泉鏡花の生家跡に立つ「泉鏡花記念館」や江戸時代の茶屋が現存する「主計町茶屋街」などがあり、金沢の歴史の真ん中にいる気分に浸れます。
料亭旅館 金城樓
石川県/金沢
3.金沢の美味を多彩に楽しめる、ユニークな試みのオーベルジュ
東山のオーベルジュ 薪の音 金澤(石川県/金沢)

紅殻格子が並ぶ重要伝統的建造物群保存地区「ひがし茶屋街」。今も5軒のお茶屋が営業を続ける、趣ある茶屋街に立つのが「東山のオーベルジュ 薪の音 金澤」です。
客室は本館に2室、道路を挟んだ向かい側の離れに2室。いずれもシンプルながら、和と洋が絶妙に溶け合ったデザインです。

特筆すべきは、館内のレストラン「東山 和今」の前衛的日本料理。山海の幸に恵まれた地元の食材をメインに用い、少量多皿で提供。個室か、割烹カウンター、またはテーブル席でいただきます。料理は月替りですが、献立にメニュー名はなく、用いる食材が知らされるだけなので、逆にワクワクしてしまうかもしれません。

「金沢の美味をあれこれを満喫して欲しい」との思いから、夕食を提携の老舗料亭や寿司店、洋食店などでとることも可能。宿がコンタクトをとってくれるので、一見さんのハードルの高さを感じることなく、名店の味を楽しめます。
東山のオーベルジュ 薪の音 金澤
石川県/金沢
4.魯山人も称賛したもてなしの全てを堪能できる老舗料亭旅館
金沢料亭 山乃尾 (石川県/金沢 東山)

子来坂の急坂を登った先、静かな高台に立つ「金沢料亭 山乃尾」。全4室はすべて離れ。高台ゆえにどの離れからも金沢の街が眺められるのが魅力。

特に「【離れ 弥生】〜ひがし茶屋街を見下ろす贅沢な朱(あか)の間〜」からは、美しいひがし茶屋街を俯瞰で一望!お部屋に居ながらにして、金沢らしい風情に浸って過ごせます。創業は1890年(明治23年)。初代当主の太田多吉は、魯山人から「北陸一等の名物男、金沢の国賓、茶会の逸材」と呼ばれた数寄者。彼のもてなしを受けたくて遠方からも多くの美食家が通ったとか。

白山連峰と日本海に囲まれた金沢は、山海の良食材に恵まれています。それらを美しく雅やかな一品へと昇華させた加賀料理そのものと、料理に“着せた”器との見事な一体感も味わいどころの一つ。創業時から受け継ぐ「一客一亭」のもてなしの心を、髄の髄まで堪能できます。
金沢料亭 山乃尾
石川県/金沢 東山
5.金沢の奥座敷・湯涌温泉に佇む、大人のための美食宿
金沢湯涌温泉 古香里庵 (石川県/湯涌温泉)

たとえば、著名な観光スポット「兼六園」からは車で約25分。金沢の奥座敷として知られる湯涌温泉は、歴代藩主が足繁く通った藩御用達の湯治場。開湯1300年を誇る名湯で、今は静かな山間に8軒の宿が佇みます。

そのうちの一つ「金沢湯涌温泉 古香里庵」は、全4室がスイート仕様。1階にある2室には露天風呂が、2階の2室には半露天風呂が備えられ、ナトリウム–塩化物・硫酸塩温泉がなみなみと注がれています。

九谷焼や山中漆器に盛られて提供されるお料理は「新北陸金沢創作懐石」。2か月ごとにメニューが替わり、夏なら赤イカ、秋はノドグロ、冬は活ガニや天然ブリなど、地魚が夕食のメインに。特に青いタグ付きの加納ガニ(オスのズワイガニ)の身は甘く、味噌は濃厚。刺身やブリしゃぶでいただく天然の寒ブリは脂がのってとろけるような味わいです。
金沢湯涌温泉 古香里庵
石川県/湯涌温泉
さまざまな文化を育んできた金沢は、いつ訪れても長い歴史と伝統に身を浸せる街。ぜひ、その風情がたっぷり漂う金沢の宿へ、出かけてみませんか。












