人気の温泉地として名高い、大分県由布院。2023年6月にオープンした「ENOWA YUFUIN」は、広大な敷地にヴィラとホテルが点在し、食材を自ら育て提供する“ボタニカル・リトリート”。今回は国内外の食通も注目する「ENOWA YUFUIN」に滞在し、客室からレストラン、自社農園の「ENOWA FARM」を取材。豊かな自然の恵みを五感で味わう美食ステイの模様をお伝えします。
目 次
由布院の自然が育む生命の循環を全身で感じるボタニカル・リトリート

「ENOWA YUFUIN」は、由布院の山手にある4万4千平米の敷地に10棟のヴィラと9つの客室、レストラン、温室、サウナなどを備えたオーベルジュ。食材の美味しさを最大限に活かした食体験は「FARM-DRIVEN(農場がメニューを決める)」をメインコンセプトに掲げます。開業の数年前から農地「ENOWA FARM」を所有し、葉物野菜、根菜、ハーブや豆類などの栽培を開始。

自ら耕した野菜や地元食材を使って調理するのは、N.Y.のミシュラン二つ星獲得店「ブルーヒル・アット・ストーンバーンズ」で経験を積んだエグゼクティブシェフのタシ・ジャムツォ氏。シェフが創造する食体験を始め、由布院の自然や生命の循環を五感で味わうウェルネスツーリズムを提供しています。

エントランスに到着すると、まずレセプションへ通されます。敷地内には地元由布院や九州の木材・石材が至るところに利用されており、雄大な自然の風土を感じる空間が広がります。

ウェルカムドリンクをいただいて一息ついた後は、客室へ。

敷地内は広大で傾斜も多いため、ヴィラに滞在するゲストはカートにて移動します。

また、送迎が必要なゲストには湯布院町内であれば事前予約にて対応いただけるとのこと。
刻一刻と変わる雄大な由布院の自然を見守る客室・ヴィラ
今回は、「The Rooms」「フォレストサイドヴィラ」「ヒルトップ スカイパビリオンA 由布市内ビュー」をご紹介します。

まずは2階建のホテル棟に9室ある「The Rooms」へ。約80平米でゆとりがあり、広々とした空間です。

石や木、土などプリミティブな素材が植物に彩られ、有機的な印象を与えます。

窓際には大きなツインのベッドが置かれていて、リビングスペースと仕切られている造り。

全てのお部屋には温泉が引かれています。泉質はナトリウム―塩化物・硫酸塩温泉(アルカリ性 低張性 高温泉)。泉温は92.8度の高温ですが、湧出地から自然に冷ます仕組みがあるため、お部屋に運ばれる湯の温度はちょうど良い温かさ。実際に入浴したところ、非常にとろみのあるお湯で肌に優しく感じました。聞けばpH8.9とのことで、アルカリ性の美肌の湯だ!と嬉しくなりました。

続いて、カートで「フォレストサイドヴィラ」へ。108平米の室内をさらに開放的にする大きな窓が印象的です。

訪れたときは桜が咲いていました。

露天風呂の先にはインフィニティ・プール。その向こうには杉林が広がっていて、風に揺れる木々のざわめきや鳥の鳴き声が聞こえてきます。

無垢や土壁風の壁材に、存在感のある石材が客室内にあり、インパクトがあるお部屋です。

ベッドは大きな窓際に置かれていて、眠りにつく夜、目覚めの朝と“植物に囲まれた隠れ家”のような滞在が叶います。

パウダースペースはダブルベイシンで、2人並んでもゆとりある広さ。

アメニティはオリジナルのパッケージでボタニカルなイメージです。歯ブラシも木材でできていて、サステナビリティへの配慮を感じます。

シャワーはレインシャワー付。


バスアメニティ・スキンケアアメニティはオーガニックコスメブランド「NEMOHAMO (ネモハモ)」を取り入れています。

カートでさらに坂を上がり、ヴィラの中で最も高い場所に位置する「ヒルトップ スカイパビリオンA 由布市内ビュー」へ。今回私はこちらに泊まりました。

165平米の広さで、天井が高くラグジュアリーな雰囲気のプレミアム・スイート・ルーム。

広々としたプールと露天風呂がついており、高台から由布院の市街地が一望できます。


また、バスルームにはダブルベイシンとバスタブ、レインシャワー付の独立型シャワーブースが備わっています。


客室内のミニバーや冷蔵庫に入っている飲み物は全てフリーでいただけます。また、冷凍庫の中には自家製のアイスクリームがあり、濃厚なミルクの味が湯上りにぴったりでした!

クローゼットはウォークイン可能な広さになっていて、スーツケースを置いてもゆとりがあるスペースになっています。

ルームウェアはふわふわのバスローブとセパレートタイプの寝間着、外出用のコートと屋外のプールやサウナへの行き帰りに便利そうなグレーのパイル地のアウターがありました。
市場に出回らない大地の美味を自ら育てる「ENOWA FARM」

オーベルジュ内でのレストラン「JIMGU」では、毎朝シェフのタシ・ジャムツォ氏が自社農園の「ENOWA FARM」へ出かけ、その日いちばんの食材からメニューを考えています。今回は特別に、タシ氏を始めとするスタッフの方と実際に畑を見せていただきました。

“FARM TO TABLE”を提唱するブルー・ヒル・アット・ストーン・バーンズで副調理長を務めた後、この宿の思想に共鳴して日本に移住したタシ氏。
「京都石割農園」の石割照久氏を招いてファームを造り、数年かけて野菜やハーブを栽培しています。新芽など、市場に流通する大きさよりも旨味のつまった部位をその場で味わい、状態を確認して食材を決めていくそう。


国内ではなかなか作られていない、珍しい野菜の栽培も果敢に挑戦しています。食品残渣リサイクルを取り入れ、持続可能な有機栽培を目指しているとのこと。

恵まれた環境で牛や鶏がのびのび育つ由布院の生産者とも連携し、地域共生にも取り組む、循環型の宿泊施設を目指していることが伝わってきました。
その日採れた食べ頃の食材を遺憾なく発揮する、驚きと発見の食体験

期待に胸が膨らむ中、いよいよお食事へ。「ENOWA YUFUIN」の食体験は、実際に野菜やハーブに囲まれた時間を過ごすことから始まります。円形の室内ガーデン「INDOOR GARDEN」には、季節のハーブや植物が至るところに植えられています。

宿の中にこんな素敵な場所があるなんて!ガーデニング好きな方ならきっと歓声を上げてしまうことでしょう。見取り図を見ながら、すくすくと育つ植物の瑞々しい息吹を存分に感じます。


立派に育ったケールやアーティチョーク。「ENOWA EARM」のみならず宿の中にも収穫できる場所があるとは驚きです。

この素敵な雰囲気でウェルカムドリンクや前菜をいただくなんて、まさに非日常の体験。

菜の花やホワイトアスパラガスなど朝採れの野菜に、緑のディップソースをつけていただきます。口に入れた瞬間水分が広がり、目の覚めるような美味しさ。

ニンジンのタルトや自然薯を使ったドーナツ、ビーツのタルトと、見た目も華やかな前菜をいただいてから、レストラン「JIMGU」へ。


テーブルには、お野菜で彩られたブーケが飾られていました。

まずは青首大根と赤カブ、大分県産のヒオウギガイと共にホワイトバルサミコで味付けされたスライスサラダ。タシ氏のお料理は繊細で美しく、お皿が出てくるたびに歓声を上げてしまいます。

続いて地元の関サバ。ラディッシュとニンジンのムース、ビオラをチャイブのオイルでいただきます。まるで、食べるお花畑のよう。


ローストしたニンジンは味が全て異なります。サバイヨンソースやニンジンの葉を用いたソース、おからと竹炭のパウダーで、絵画のような一皿。ヘルシーでありながら深みのある味で、ワインが進みます。

メインは鹿児島の「ふくどめ小牧場」のサドルバックという豚の部位を食べ比べ。モモと肩ロース、ほほ肉を、マッシュポテトやチップス、キャベツ、カブの葉のピューレと共に。

サドルバックは初めて食べましたが、脂身が柔らかく噛むほどに旨味が増していきます。しっかりとした赤ワインによく合いました。

スパイスを練りこんだ餡玉の上に葛をのせ、ストロベリーのジュレとチュイルで飾られたデザートまで、完食しました。それぞれの食材が持つ力強さや旨味の広がりに、驚きと感動の連続で、あっという間に感じたほど。

翌朝、爽やかな由布院の風と共にレストランへ向かうと、2種類の卵を見せていただきました。この珍しい青い卵は「アローカナ」という鶏。鶏小屋で鶏卵生産も始めたというから驚き!


まずは3種類のジュースやサラダ、ポタージュ、フルーツなどが用意されます。パンは自家製。数種類が用意され、春の季節だったので桜餅に見立てたスコーンが印象的です。

卵料理はオムレツと目玉焼きが選べます。「アローカナ」の卵で目玉焼きにしましたが、鮮やかで弾力があり、濃厚な味わいでした。ビタミンなどの栄養分も豊富で、珍しい卵なのだそう。周囲に散りばめられた野菜もシャキシャキとした食感。

さらに、バナナのパンケーキも別皿で提供されました。しっとりした食感とバナナの甘みが合わさり、お腹も心も大満足。
天空のサウナで、由布院の自然に抱かれる

滞在中に訪れていただきたいのが「ENOWA YUFUIN」のサウナ(有料・要予約)。敷地内で最も高い、緑の森の中にあります。サウナに辿り着くために山を切り開いた階段を昇れば、ちょっとした冒険気分を味わえることでしょう。

サウナの片面は大きな窓ガラスになっていて、ベンチに腰掛けると、由布院の雄大な景色が目の前に広がります。ロウリュのグッズもあり、身体の内側からしっかり汗をかいた後は、立ったまま入れる水風呂へ。

ウッドデッキの椅子に寝転んで、森の息吹を感じたり、鳥の声に耳を傾けたり、心を空っぽにする時間でととのうこと間違いなし。

ずっと訪れてみたかった「ENOWA YUFUIN」。由布院の自然の恵みを体感し、身体も心も満足するような、豊かな時間を過ごすことができました。食材の鮮度の良さは天下一品、それ以上にシェフを始めとするスタッフがそれぞれゲストのためにより良いものを提供しようとする姿勢に心を打たれました。もし、日本の食の魅力を感じたいと思ったなら、まずは由布院を目指してみてはいかがでしょうか。
ENOWA YUFUIN
大分県/由布市












