
「晩の泊まりは箱根か三島ただし湯本の福住か」と、江戸時代のかごかき唄にも歌われている老舗「箱根湯本温泉 萬翠楼 福住」。
そのルーツを辿っていくと、初代の当主がこの地に宿を開いたのは約400年前。寛永2年まで遡ります。

現在の旅館の輪郭ができたのは明治12年のこと。伝統の数寄屋造りと西洋建築が融合する擬洋風建築の「萬翠楼」と「金泉楼」が完成したのは、新橋〜横浜間に蒸気機関車が走り、盛んに文明開花が叫ばれていた頃でした。

築140年になろうとする今も多くの宿泊者が訪れますが、平成14年、萬翠楼と金泉楼の2棟は、現役の旅館としては初めて国の重要文化財に。また、「神奈川の建築100選」にも選ばれるなど、ほかにはない特色を持った宿として知られています。
擬洋建築の美に浸る

部屋は全部で15室。昭和になって建てられた昭和棟と、萬翠楼と金泉楼を擁する明治棟に分かれていますが、歴史好き、建築好きならオススメはやっぱり明治棟。

なかでも人気なのは萬翠楼の15号室。4室からなる広さもさることながら、ここでは特に富士山や花、鳥などが描かれた天井画に注目を。その数なんと48枚! また、皮を剥かない自然のままの柱や、その柱の曲がり具合に合わせて微妙なカーブを付けた戸など、当時の職人さんの技術の高さには驚かされるばかりです。

もうひとつの人気は和と洋が融合する金泉楼の30号室。今でいうメゾネットスタイルで、上下の部屋を繋ぐのは螺旋階段。天井は白漆喰。その天井に映えるシャンデリア。まさに見事なまでの和洋折衷です。

館内全体で見ても、手の込んだ格子細工、樹脂の欄間、コンセントを隠す飾り棚など、見所をあげたらきりがないほど。凝った意匠に囲まれていると、当時の人々の息遣いまで聞こえてきそうです。
真綿に包まれるような温泉

萬翠楼の部屋はお風呂付きではありませんが、金泉楼と昭和棟の各部屋には専用の檜風呂があって、箱根の湯を心ゆくまで堪能することができます。

ここの湯は、箱根湯本では希少な自噴式の源泉。透明なアルカリ性単純温泉で「真綿にくるまれるような湯」と評判とか。タイル張りでクラシックな雰囲気の大浴場「一円の湯」「扇の湯」があり、それぞれに露天風呂も設けられています。

食事は食事処で季節替わりの日本料理をどうぞ。今の季節は小田原漁港の地魚のお造り、駿河湾沖の金目鯛の彩り椀や桜エビのわっぱ飯など、春満開の献立。もちろん名物の焼胡麻豆腐も味わえますよ。

宿の命名は明治の政治家、木戸孝允によるもの。福沢諭吉、井上馨、伊藤博文など、この宿に逗留した政治家は数知れず。また皇族方や多くの文人墨客にも愛されました。時間が許せばスタッフが館内を案内してくれるので、歴史に浸りたい人にはうってつけの宿と言えるでしょう。












