創業から数十年や百年以上の歴史を持つ老舗旅館は、伝統的な建築技術を今に伝える貴重な文化財です。今回は、全国の老舗旅館の中でも、多くの宿泊客を癒してきた歴史ある温泉も楽しめる宿を厳選して6軒ご紹介。名湯と伝統建築で、日本ならではの情緒を味わう旅に出かけてみませんか?
目 次
1.開湯600余年の温泉地に佇む老舗旅館で2種類の泉質と美食に癒される
時音の宿 湯主一條(宮城県/白石市・鎌先温泉)

伝承600余年の宮城県白石市・鎌先温泉の開湯と共に創業した「時音の宿 湯主一條」。傷や婦人病、リウマチ等に効能があると言われる名湯「奥羽の薬湯」と“つや肌の湯”とも呼ばれる「洞窟の湯」の2種類の泉質が楽しめる老舗旅館です。

別館に全24室ある客室の中でも、温泉を独り占めしたい方は、宿で一番人気の露天風呂付客室「一條スイート」がおすすめ。源泉掛け流しを楽しめる他、このお部屋にしかないカウチ岩盤浴も嬉しいポイントです。別荘のような広い空間に、疲れた心が癒されることでしょう。

日本の情緒を感じさせる、本館も必見です。釘を一本も使わず、大正から昭和にかけて造られたという伝統建築は、木造一部4階建て。今は、個室料亭「匠庵」として宿泊客をもてなし、ジャズが流れる完全プライベートな空間で「ミシュランガイド宮城」でも高い評価を得た逸品料理が振る舞われます。
時音の宿 湯主一條
宮城県/白石市・鎌先温泉
2.再現不可能と言われる文化財建築で自家源泉100%の名湯に浸かる
会津東山温泉 向瀧(福島県/会津若松)

福島県・会津若松の奥座敷、東山温泉の湯川沿いに佇む「会津東山温泉 向瀧」は、明治から昭和初期にかけて造られた建築や、赤瓦葺き入母屋根の玄関が印象的な全24室の温泉旅館。いにしえの日本に誘われそうな登録有形文化財第一号の伝統建築は、再現不可能な建物とも言われ、残すために日々磨かれているとか。

特筆すべきは、動力を一切使わない自家源泉100%の「きつね湯」。流れ口には、ナトリウムとカルシウム成分の結晶が付き、お湯の濃さが感じられる名湯です。関節痛が和らぎ、お肌がすべすべになると言われる温泉で、体の芯まで温まりましょう。

特別室「はなれの間」は、多くの著名人を迎え入れた伝統的なお部屋。廊下に囲まれるように造られた、20帖ある厳格な書院造りの畳部屋は、和の風情を感じさせます。100%源泉掛け流しのお湯に浸かれる専用浴室もあるので、プライベート旅行にも最適です。
会津東山温泉 向瀧
福島県/会津若松
3.秘湯の一軒宿に備わる明治の面影を残す大浴場で、お湯の入り比べ
法師温泉長寿館(群馬県/法師温泉)

群馬県、長野県、新潟県にまたがる上信越高原国立公園の中に立つ「法師温泉長寿館」は、創業140年を誇る秘湯の一軒宿。玄関すぐ左手には囲炉裏が設置され、薪や茶釜が沸く音が、憩いの場として宿泊客を惹きつけ、昔ながらの山間の生活様式を体験させてくれます。

この宿の名物と言えば、明治の面影を残す鹿鳴館風の大浴場「法師乃湯」。弘法大使が巡錫した際に発見されたと伝えられ、下に敷き詰められた玉石の間からポコポコと自然湧出する100%の源泉が特徴的です。微妙に温度が違う4つの浴槽を入り比べするのも良いですね。

全33室の中でも、本館は国の登録有形文化財に登録された、宿で最も古い客室棟。数々の文化人に愛されたお部屋は、当時の面影のまま今に残ります。法師川沿いにある別館のお部屋は全室リバービューで、日本ならではの風情を味わうことができるでしょう。
法師温泉長寿館
群馬県/法師温泉
4.箱根湯本の名湯を満喫できる西洋と数奇屋造りが融合する重要文化財
箱根湯本温泉 萬翠楼 福住(神奈川県/箱根湯本温泉)

寛永2年(1625年)創業の「箱根湯本温泉 萬翠楼 福住」は、箱根湯本でも希少な自噴式の源泉を単独管理する老舗温泉旅館。江戸時代から多くの湯治客を迎え入れ、15代将軍・徳川慶喜や福沢諭吉など、誰もが知る偉人達にも愛されました。

西洋建築と数寄屋造りが融合する擬洋風の建築は、見どころ満載の意匠がそこかしこにある重要文化財建造物。「明治棟」と「昭和棟」からなる全15室のお部屋の中でも、歴史や建築が好きな方は「萬翠楼」と「金泉楼」を擁する「明治棟」がおすすめです。

自慢の温泉は、透明なアルカリ性単純泉。湧出量が、少なくとも毎分100リットルを超えるほど豊富な源泉は「真綿にくるまれるようなお湯」と好評です。大浴場では源泉掛け流しを楽しめ、レトロな雰囲気を感じさせる「一円の湯」や、木の香り漂う「扇の湯」の露天風呂で、生まれたてのお湯を堪能してみて。
箱根湯本温泉 萬翠楼 福住
神奈川県/箱根湯本温泉
5.修善寺温泉に佇む、文人墨客とゆかりのあるノスタルジックな老舗旅館
文化財の宿 新井旅館(静岡県/伊豆・修善寺温泉)

静岡県・修善寺温泉に佇む「文化財の宿 新井旅館」は、明治5年(1872年)創業の老舗旅館です。名だたる文人墨客とゆかりがあり、数多くの作品がこの旅館から生まれたとか。宿自体が文化財であり、観光地でもあることから「文化財ガイド」(有料)も実施しています。

全31室のうち一部の客室棟や、渡り廊下、大浴場「天平大浴堂」などが登録有形文化財。ノスタルジックな雰囲気をぜひ満喫してみて。渓流沿いの客室「特別室」は「竹林の小径」を一望でき、美しい四季と共に日本の情緒を楽しめる造りです。

館内のお風呂は全て、弱アルカリ性単純泉の天然温泉掛け流し。なかでも、貴重な台湾桧を使用した「天平大浴堂」は、日本画家・安田靫彦が考証設計の様式・材質・技術全てに優れた名建築。お寺のお堂にいるかのような、厳かな佇まいに歴史を感じられそうですね。
文化財の宿 新井旅館
静岡県/伊豆・修善寺温泉
6.大正浪漫に浸れる老舗旅館で信州最古の温泉と武家屋敷を満喫
別所温泉 旅館花屋(長野県/別所温泉)

「別所温泉 旅館花屋」は、信州最古の温泉地・別所温泉で、大正6年(1917年)に創業した温泉旅館。伝統と風格を受け継ぐ、和と様が融合する建物からは当時の宮大工達の情熱が伝わり、大正浪漫に想いを馳せる優美な時間が過ごせそうです。

ほぼ全館が登録有形文化財に指定され、日本の情緒を感じさせるお部屋が全部で36室。なかでも「武家屋敷 桜御殿」は、宿の中でも最上級の貴賓室です。旧上田藩の上級武家屋敷の様式が細部に至るまで再現され、武家屋敷に宿泊するという知的探求心が満たされる体験となりそうです。

大浴場「大理石風呂」では、ほんのり硫黄が香るpH8.9の天然温泉を掛け流しで堪能できます。高く優雅なドーム型の天井と、大正浪漫を感じさせるステンドグラスは開放感たっぷり。湯上りには「図書室」でのんびりと庭園を眺めながら、読書するのも素敵ですね。
別所温泉 旅館花屋
長野県/別所温泉
今回ご紹介した宿は、日本を代表する文化財と名湯ばかり。何かの記念日やご自身へのご褒美に、ぜひ一度訪れてみませんか。












