FOLLOW一休コンシェルジュをフォロー

FOLLOW一休コンシェルジュをフォロー

総支配人が語る、伝統を未来へつなぐ「クラシックホテル」の魅力【奈良ホテル編】
インタビュー

総支配人が語る、伝統を未来へつなぐ「クラシックホテル」の魅力【奈良ホテル編】 奈良ホテル(奈良県/奈良)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴い、宿泊施設の営業内容が急遽変更・休止となる場合があります。宿泊施設・店舗の最新情報につきましては、当該施設まで直接お問い合わせください。

ホテル文化の礎を築き、伝統を今に伝え続けるクラシックホテル。色あせることのない風格に、魅了される人も多いのではないでしょうか。そんなクラシックホテルの魅力をインタビューを通してご紹介。
今回は“西の迎賓館”と言われ、多くの賓客をもてなし続ける「奈良ホテル」の総支配人・林勝利氏に、ホテルの魅力やおすすめの過ごし方、未来に向けての取り組みなど、幅広く語っていただきました。
※インタビューはオンライン上で行いました。

1.激動の時代を駆け抜けた「奈良ホテル」の歩み

―まずは「奈良ホテル」の歴史をお聞かせください。

日露戦争後、日本を訪れる海外のお客様が急増し、政府は外国人が泊まれる宿泊施設を造ることを推奨したんですね。
これを受けて、「都ホテル」創始者の西村仁兵衛が建設に動き始め、明治39年、今のこの土地を買収、その後鉄道院が土地を引きとり、奈良ホテルが建設されます。

当初の建設予算は5万円だったそうですが、最終的には35万円もかかったそうです。
その価値が今で言うといくらなのか分かりませんが、「鹿鳴館」の建設費が18万円だったそうなので、それと比較するとかなりお金をかけたことが想像できますよね。

そんな流れで明治42年に“西の迎賓館”として「奈良ホテル」が開業しました。明治44年には乃木希典大将が宿泊され、彼が植えた松が今でも残っています。

ただ、当時ホテルに泊まれる人というのは、外国人とごくわずかな日本人だけでした。
その結果、経営が厳しく、大正2年にホテル運営は鉄道院の手に渡り、そこから国の直営になったわけです。

この時代はホテルにとって最も華やかな時でした。利益を上げる必要もないですしね。
大正11年にイギリスのエドワード皇太子、アインシュタイン博士、それから昭和10年には「ラストエンペラー」でも知られる溥儀、その後、チャップリン、ヘレン・ケラーなど、そうそうたる方々にお越しいただいています。
著名人が来館する度に高額な装飾や食器を購入したり、設備をリニューアルしていたそうです。

ただ、この幸せな時代は昭和20年で一旦終わります。
終戦後、クラシックホテルは、ほとんどが米軍に接収され、レクリエーション施設になります。その後、昭和27年に「サンフランシスコ講和条約」を結び接収が解除され、日本交通公社(現在の株式会社JTB)が運営する普通のホテルに戻ったんです。
昭和29年には、当時結婚されていたマリリン・モンローとプロ野球選手のジョー・ディマジオが宿泊される予定でしたが、マリリン・モンローが急遽、朝鮮戦争の慰問に行かなくてはならず、ジョー・ディマジオだけが宿泊されたというお話も残っています。

しかし戦後の混乱期ですので、なかなかお客様がやってこない。経営も厳しくなり、再び国の管轄、当時の国鉄に運営を返上します。
ですが、当時の国鉄は関連事業を行うことを禁止されていたので、食堂車などを運営していた「都ホテル」が運営を引き継ぐことになったんです。

昭和34年には、当時の皇太子殿下・同妃殿下にお泊りいただきました。
さらに東京オリンピックや大阪万博などを機にお客様も増え、昭和58年には新館を建設、そこから今の「株式会社奈良ホテル」が運営するようになります。

昭和58年にはオードリー・ヘップバーン、平成15年と22年にはダライ・ラマ14世が宿泊されるなど多くの著名な方々にお越しいただき、今に至ります。

2.当時の面影を随所に感じるクラシックホテルならではの過ごし方

―誰もが知っている人ばかりが来館されていますが、その方々も見たり触れたりした調度品が館内の至るところにあると思います。訪れた際に、ぜひ見てもらいたいものはありますか?

日本近代文学館

大正11年、アインシュタイン博士が来館された際にピアノを弾いているのですが、そのピアノが戦後行方不明になっていました。
「奈良ホテル」創業100周年の記念行事を考えていた際に、当時「交通科学博物館」というところに保管されていた1台のピアノが、アインシュタイン博士が弾いたピアノではないかという話になったんです。
ただ精度がよくない写真しか残っていなかったので、確証がなかったんですね。
そんな時、新聞にあった「第一次南極越冬隊」の記事で隊長の西堀栄三郎さんが、来日されたアインシュタイン博士の通訳として同行していたことがわかったんです。
その後、西堀さんのご子息を訪ねて詳しくお話を伺いました。写真の原板は日本近代文学館に残っていることがわかり、写真に映ったものと保管されていたピアノの特徴を照合し、本物であることがわかりました。

おそらく進駐軍に接収される時にピアノを持っていかれないよう、当時の職員が旧大阪鉄道管理局の倉庫に、避難させたのだと思うんです。
当時の人たちの機転と偶然の積み重ねで、63年ぶりに「奈良ホテル」に帰ってきたピアノはロビー「桜の間」に展示してあるので、そういった歴史を感じながらぜひ見ていただきたいですね。

もう一つは置時計ですね。上皇陛下が即位された時の記念として、奈良ホテルで15分ごとにメロディが流れる置時計を作りました。
平成2年に上皇皇后両陛下がいらっしゃった際にご案内したところ非常にお気に召され、ご出発される日の朝も、ロビーにお越しいただきメロディをお聴きになられたエピソードもあります。

そういう物語を感じながら見ていただくのも、大きな見所かと思います。

―一つ一つにストーリーがあるのが素敵ですね。
そんな調度品を巡るのはもちろんですが、林総支配人がおすすめしたい「奈良ホテル」ならではの過ごし方を教えてください。

まずは建築を見ていただくことですね。
「奈良ホテル」の建物は、日本銀行の本店や東京駅などを手掛けた明治の大御所、辰野金吾の設計です。
桃山御殿風造りの木造建築で、日本の美を全面に出しながらも館内にマントルピースの暖炉と鳥居を重ねて和洋折衷を象徴するなど、非常に面白い建築になっています。

2つ目は美術館のような楽しみ方です。
ホテルには多くの日本画が飾られ、中でも上村松園の「花嫁」と、中村大三郎の「美人舞妓」は、昭和10年頃に当時の鉄道省が作成した、海外に日本観光を宣伝するためのポスターに起用された有名な画です。
その他にも横山大観や川合玉堂の絵画も所蔵しています。解説付きのパンフレットもお渡ししているので、ぜひ活用してみてください。

3つ目は敷地内で四季を感じていただくことですね。
2万平米以上の敷地には120種類くらいの樹木が植えられていて、四季折々の風情を楽しむことができます。歩きながらゆっくり過ごしていただく、こういう楽しみ方もあります。

そして私が一番好きな過ごし方ですが、「ティーラウンジ」で1日8個限定のアップルパイと「ロンネフェルト」の紅茶を飲みながらゆっくり過ごす、これが本当に贅沢な時間です。
窓の外には鹿もよく来るんですよ。そういう時間を楽しんでいただけるのが、「奈良ホテル」ならではの過ごし方ですね。

3.伝統を今へ伝えるクラシックホテルの未来

―ホテルを取り巻く環境が変化する中で、“クラシックホテル”はどのような存在であってほしいか、林総支配人のお考えをお聞かせください。

クラシックホテルというのは、歴史の波に揉まれながらも先人の努力によって何とか維持され、生き残ってきたのだと思います。
設備は古くなりますが、これからも修繕を繰り返して、引き継いだバトンを後世に繋いでいくというのが我々の使命だと思っています。

そしてクラシックホテルは、遺産として残っているのではなくホテルとして営業していることに価値がある。
利用していただいてこそのクラシックホテルなので、どんな人にもお越しいただける存在であってほしいと思います。

そしてもう一つ、伝統を守ることはすごく大事ですが、常に新しいことにチャレンジすることこそが、クラシックホテルだと考えています。
先人たちが常に新しいことに挑戦してきたからこそ、現代もクラシックホテルは生き残れていると思います。
「不易流行」「伝統は革新の連続なり」という言葉の通り、そういうことにしっかりと取り組んでいくことが、クラシックホテルの在り方だと思っています。

時代ごとに新しいことに取り組み、それを今後も続けるのが、守っていくことに繋がっていくんですね。
そんなクラシックホテルの在り方を実現するために、「奈良ホテル」で取り組んでいることをお聞かせください。

「奈良ホテル」がやっていくこととして、まずは建築物や美術品などの歴史的資料を後世に残すために、維持して磨きこんでいくということはベースにあります。
例えば大正時代、実際に利用していた椅子は、再生して現在も利用しています。ディスプレイするのではなく、使っていただくことに意味があるんですよね。

そして創業111年にして、はじめて企業理念を作りました。約2年間かけて、継承していくべきものや価値は何かということをスタッフ皆で議論しましたね。
各現場で毎日話し合いながら、この企業理念をどう行動に落とし込んでいくかということを試行錯誤しています。
これが結果的にお客様へのサービスへと繋がっていくと思うんですが、企業理念を掲げることで我々の想いをしっかり継続していく仕組みを作れたと考えています。

それだけではなく先人から引き継いでいる魂を新しい技術、例えばDXなどをうまく取り入れ、結果的にお客様と直接向き合える時間を増やせるようにしていきたいです。
ですが、一番大切なのは基本的なことを愚直にやっていくことだと思っています。

今でいう歴史や伝統は、当時の人からしたら最新だったもの。それを守りながらも新しいことにチャレンジし続ける姿勢が、愛され続ける「奈良ホテル」を作り上げているのだと感じました。先人に想いを馳せながら、奈良ホテルでのひとときを楽しみたいですね。

*************
総支配人 林 勝利氏
1968 年生まれ。岡山県出身。
1991 年 JR 西日本に入社後、主にグループホテルのチェーン統括業務や関連事業全体の人事業務等に携わる。
グループホテルやチェーン本部でホテルマネジメントの経験を積み、「ホテルホップインアミング(現ホテルヴィスキオ尼崎)」代表取締役社長兼総支配人、「ホテルグランヴィア京都」執行役員営業部長を経て、2019 年より「奈良ホテル」常務取締役総支配人に就任。

奈良ホテル

奈良ホテル

奈良県/奈良

この記事が気に入ったらシェア!

更新日時2021.04.21 10:52

あわせて読みたい

「近畿の厳選宿」の人気記事

編集部おすすめ記事

キーワードから探す

エリアから探す

人気のエリア

全国のエリア

北海道 北海道
東北 青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県
関東 群馬県 茨城県 栃木県 東京都 神奈川県 千葉県
甲信越 山梨県 長野県 新潟県
北陸 富山県 石川県 福井県
東海 岐阜県 愛知県 三重県 静岡県
近畿 大阪府 京都府 滋賀県 奈良県 和歌山県 兵庫県
中国 岡山県 広島県 鳥取県 島根県 山口県
四国 徳島県 香川県 愛媛県 高知県
九州 福岡県 佐賀県 長崎県 大分県 熊本県 宮崎県 鹿児島県
沖縄 沖縄本島 宮古島 石垣島 沖縄離島