日本全国の数ある「美食の宿」のなかでも、食材から仕入れ、調理法まで一皿の料理に対して細部にまでこだわりを尽くした「極みの美食宿」。その料理を味わうためだけに宿を訪れる価値があると言えるでしょう。そこで今回は、これまで取材した「極みの美食宿」をまとめてご紹介いたします。
長崎・壱岐の絶景と黒アワビの炭火焼きとしゃぶしゃぶ
壱岐リトリート 海里村上(長崎県/長崎・壱岐)
神々の島と呼ばれる長崎県・壱岐島に建つ「壱岐リトリート 海里村上」。料理や絶景、唯一無二の温泉を求めて訪れる常連客が絶えないお宿です。客室すべてに源泉掛け流しの露天風呂が備わり、湯船に浸かりながらオーシャンビューが楽しめます。
料理長を務めるのは、壱岐島出身の大田誠一さん。フランチ、イタリアン、日本料理を学び、20代の若さでフランス料理店の料理長を任された人なんです。
その料理長が手掛けるお宿のスペシャリティは「黒アワビの炭火焼きとしゃぶしゃぶ」。「特製アンチョビソース」をつけていただきます。
もう一つのスペシャリティは「海里焼き」。ウニが獲れる時期限定の一品です。アワビの上にウニをドカッと乗せて、炭火でじっくり焼き上げる贅沢すぎるお料理。五感すべてで体験してみてはいかがでしょう。
ご紹介した記事はコチラ「【極みの美食宿】海里村上×長崎県・壱岐島産のアワビ」

壱岐リトリート 海里村上
長崎県/長崎・壱岐
摘草料理の滋味深さを知る1日わずか4組のみの宿
美山荘(京都府/洛北 花脊)
京都の奥座敷・花脊の里にひっそりと佇む料理旅館「美山荘」。「峰定寺」の宿坊として建てられたことが始まりという1日4組限定のお宿です。宿の周りは山や森のみ。全4室の客室は清流に面し、四季折々の景色が眺められます。
絶えず訪れる美食家たちのお目当ては、季節の草花や旬の野菜に魚を取り入れた「摘草料理」。使用する季節の草花や野菜は、4代目当主・中東氏自らが毎朝、野山に分け入り摘み取ったもの。
野草や山菜、茸はもちろん、清流を泳ぐ川魚や、猪や鹿などのジビエも都会では出会えません。
夕食で当主がこだわるのは最後のご飯。あえて素朴なものにするよう意識し、お漬物とお味噌汁で最後にほっこりしてほしいのだそう。派手さを求めず、日本人好みの滋味深い料理。五感で安らぎたい方に、おすすめのお宿です。
ご紹介した記事はコチラ「【極みの美食対談】作家・柏井 壽 ×「美山荘」中東 久人 :「美山荘」で出会う季節の感性」

美山荘
京都府/洛北 花脊
里山でしか味わえない風土の味覚
里山十帖(新潟県/越後湯沢)
東京駅から新幹線と在来線を乗り継ぎ、1時間半ほどで到着する「里山十帖」。宿は山の中にポツンとあり、まさに“里山”といった雰囲気です。
「里山十帖」オーナーであり「自遊人」編集長の岩佐十良氏。氏の思いで、宿のお食事は「大地の恵みを感じていただくこと」「食材の力を感じていただくこと」をテーマに、“二十四節気、七十二候”を大切にした料理を提供しています。
特にこだわるのは旬の素材。その日その日に入るもので、どう季節や旬に応じたものを提供しようかを考えて料理を作っているそう。
市場になかなか出回らない天然の自然薯などの「量として採れないもの」や「山に自生しているもの」を「里山十帖」だからこそ味わえるのも、多くの美食家を惹きつける魅力のひとつ。昔の日常を発見する「非日常の楽しみ」という新たな美食に、触れてみてはいかがでしょう。
ご紹介した記事はコチラ「【極みの美食対談】マッキー牧元×岩佐十良:「里山十帖」で食す、風土に根ざした恵み」


里山十帖
新潟県/越後湯沢
一流料理人が調理する一匹丸ごと“あら(クエ)”づくし
洋々閣(佐賀県/唐津市)
佐賀県・唐津市に佇む約130年の歴史を持つ老舗料理宿「洋々閣」。お部屋は全部で20室あり、そのすべてで樹齢約200年の黒松が並ぶ庭園を望むことができます。お部屋の窓を開ければ、風に乗ってかすかに聞こえる唐津湾の波の音が、心を優しく癒してくれるでしょう。
「おこぜ尽くし」や「黒毛和牛のしゃぶしゃぶ」など、絶品料理はいくつもありますが、ご紹介するのは「あら(クエ)づくし」。生け簀で泳いでいたクエを料理長が鮮やかにさばきます。
「あら(クエ)の薄造り」に生臭さは一切ありません。クエの弾力ある歯ごたえと旨味を純粋に味わえます。
「洋々閣」のスペシャリティ「あら(クエ)のちり鍋」は、仲居さんが目の前で調理。陶芸家・中里氏がわざわざ「洋々閣」のためだけに造ったお鍋と食器が、お料理をより一層美味しく感じさせます。“本物”にこだわるお宿の思いに、ぜひ触れてみてください。
ご紹介した記事はコチラ「【極みの美食宿】洋々閣×佐賀県唐津産のクエ」

洋々閣
佐賀県/唐津市
鮮度抜群の伊勢海老で調理されたソテーと濃厚スープ
オーベルジュあかだま(長崎県/西海市)
「オーベルジュあかだま」があるのは、長崎県の西端、西彼杵半島から大島大橋を渡った寺島。決してアクセスが良いとは言えませんが、新鮮な海の幸を使った「あかだま」ならではの美食の虜となったリピーターが絶えず訪れる人気のお宿です。
お宿のスペシャリティは「伊勢海老」を使用した一皿。料理に使用する魚介類は、オーナーシェフ自ら地元漁港に行き、漁師さんから直接仕入れるため鮮度は抜群です。
獲れたての伊勢海老を使用したソテーは、アメリケーヌソースとハーブのソースの2種類でいただきます。
朝食に提供される「伊勢海老のスープ」も格別です。伊勢海老にたっぷりと詰まったミソの濃厚な味わいが、目覚めたての身体に染み渡っていくのがわかる一品。予約がなかなか取れない宿ですが、食材から仕入れ、調理法にまでこだわり抜いた一皿を味わってみてください。
ご紹介した記事はコチラ「【極みの美食宿】オーベルジュあかだま×長崎県産の伊勢海老」

オーベルジュあかだま
長崎県/西海市
ここだけでしか味わえない究極の発酵料理「鮒鮓」
徳山鮓(滋賀県/余呉)
JR余呉駅から車で約10分。“発酵料理”の概念を覆し、国内外問わず多くの美食家から注目を受ける宿「徳山鮓」。
京都の料亭で研鑽を積んできた徳山浩明氏が、生まれ故郷の滋賀・余呉に創業したお宿です。
お宿で提供されるのは「徳山鮓」だからこそ完成された“発酵料理”。使用する食材も「地産地消」よりもっと具体的に、「同じ水で育ったすべての動植物」とこだわって仕入れているそうです。
「徳山鮓」のスペシャリティのひとつ「鮒鮓」。“発酵料理”である熟れ鮓全般で、独特な癖のある味に苦手なイメージを持つ方も多いと思います。その癖を最大限にうま味に変え、新たな組み合わせで楽しませてくれる「徳山鮓」。これからも進化していく徳山鮓ワールドは要注目です。
ご紹介した記事はコチラ「【極みの美食対談】岩佐十良×徳山浩明:「徳山鮓」で味わう、唯一無二の発酵料理」
美しい自然の中、美味しいお料理とお酒を一緒にいただき、その気分を保ったまま気持ちよく眠る。シンプルながら、これこそがまさに「極みの美食宿」です。この贅沢なひとときを過ごしてみてはいかがでしょう。
更新日時2020.08.21 11:30