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伊勢志摩発。ひらまつ流“渾身の一品”を求めて
インタビュー

伊勢志摩発。ひらまつ流“渾身の一品”を求めて THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 賢島(三重県/賢島)

食材の宝庫、伊勢志摩・賢島に位置する「THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 賢島」。2016年に「滞在するレストラン」というコンセプトで開業して以来、多くの美食家が足繁く訪れます。料理長を任されるのは38歳の若きシェフ、今村将人氏。宿泊ができるレストランで腕を振るうことへの挑戦について、お話を伺いました。

ひらまつグループが見出した「賢島」で、新たな発見の毎日

―エントランスのドアが開いた瞬間に広がる英虞湾の眺めが素晴らしいですね!

「THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 賢島」の土地は、現会長の平松(平松 博利氏)が選びました。僕はてっきり、「食材」の豊かさが理由で選んだと思っていたのですが、「食材が一番ではない、ここに立って景色を見たときに、直感でこの場所だと思った」と語っていました。

―景観も美味しいお料理の要素の一つということですね。伊勢志摩という地域性についてはいかがでしょうか。地元の生産者・水産者とやり取りすることで、食材との向き合い方に違いはありますか?

東京だと、欲しいものは何でも手に入ります。地のものはなくても、日本中の食材だけでなく海外の食材までその日のうちに手にできますが、ここではそうはいきません。
ただ、旅先でお客様が求めるものはやっぱりここでしか食べられないものだと思ったので、だったら自分で探していこうと。そうして見つけたものが旬のものであり、当然ここならではのものなので。

最初は業者も知らないですし、どこで何がとれるのかもわからないので、港や畑に足を運んだり地元レストランのシェフに話を聞いたりします。食材探しから調理が始まっている感じですね。

―自ら食材を探し回るという経験は、東京以上にされていらっしゃるということでしょうか。

東京ではほとんど行かなかったです。調理場から出ることがなかった。秋といえば松茸やキノコなど旬の食材を頼み、調理して季節感を出しますが、ここでは何がとれるかもわからなくて。原木シイタケが欲しくても手に入らない日があったり、「とれたよ」とその日の分だけを持ってきてもらえたり。ただ、次の日ももらえるとは限らないので、翌日はまた違うもので。
今は、漁師さんと毎日電話やメールでやり取りして「今日はこれが入ったよ」と教えてもらっています。その日にあがったものを聞いてからメニューを決める、というような食材選びになりますね。

―日々使われるものが変わっているんですね。

3年目にして、ここでも松茸が手に入ることがわかりました。少しの時間を見つけて松阪や津、伊勢、最近では尾鷲とか南のほうにも出向くようになって。とれるものが全然違うので、日々新しい発見ばかりです。

―「THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 賢島」は7室の個室ダイニングがあり、プライベートなディナータイムを楽しめますが、提供する側は大変なのでは?

料理という部分で、やっていることは今までと変わりません。
東京で100名の座席でやっていた頃に比べると、最大でも8組の「ゲスト」に向き合う料理を心掛けています。お客様の層もバラバラなので、女性2人や高齢の方、子連れの若いご夫婦など、個々のお客様にあった料理をお出ししています。

苦手食材の対応なども行き当たりばったりではなく、ちゃんと手をくわえたご提供ができるかなと思います。今日のメニューを説明した際に、魚介類が苦手という方がいらっしゃる場合は別の食材を仕立てます。
当日食事が始まってから苦手なものがわかることもありますので、臨機応変に。

―ここにきて魚介が苦手なのはもったいない。でもきめ細やかな対応をしていただけるのはさすがですね。

レストランの場合、お客様は100%食事が目的で来るじゃないですか。
この施設は、「ひらまつだから」、「美味しいものが食べたいから」という目的の方ももちろんいらっしゃるのですが、そうじゃない人もいて。たまたま賢島に来て、食事をしてみたらものすごく美味しかったと。
実は、最初ホテルでの仕事に対して、必ずしも食事目当てではない人が来ることにひっかかっていた部分がありました。
でも賢島って東京から5時間も6時間もかかるアクセスのあまりよくない所で、この場所にわざわざ来てくださる方々に食事の時間を楽しく過ごしてもらいたいと思うようになりました。大きなホテルに比べたら設備は少ないかもしれませんが、やっぱり食事ではしっかり満足して帰ってもらいたい。そういう点ではレストランの時とは違う思いがあります。

―お客様に対しての責任感がより強まったんですね。「ひらまつ」が手がけるホテルということで、お客様も憧れと期待を持っていらっしゃいますものね。

そうですね。初のホテル事業、ここが第一施設目ということで、失敗できないということはわかっていたし、プレッシャーもありました。お客様の期待値もすごく高いと自覚しているので、その期待に応えたいですね。

“料理”の完成度を高めることが、仕事における自己表現

―シェフを志したきっかけについて教えてください。

ありきたりですが、自分がササっと作った料理を美味しいと言ってもらえたのがうれしかったことがきっかけでしょうか。
生まれが福岡で、両親も料理の世界とは無関係。当然何も知らないなかで東京に出てきて。有名なところ、勢いがあるところというキーワードで就職先を探し「ひらまつ」を知った記憶があります。株式上場が2003年で、当時まだ4~5店舗くらいの頃に入社しました。

―企業の成長と共に、若くして料理長を任され、ホテル事業も好調ですね。平松氏が以前、「料理人も経営者も自己表現である」とおっしゃられていましたが、シェフにとっての自己表現とは何でしょう?

やはり、「料理」しかないと思います。シェフになってすぐの頃、平松から「お前の料理ってどんなだ」と聞かれたことがありました。
僕はここでしか働いたことがないので、「僕の料理は会長の料理です」と素直に伝えたら、「そんな姿勢じゃ良い料理人にはなれない、お前の料理を早く見つけろ」とアドバイスされました。
でも、一度完成した料理を自分の料理にしていくことがなかなかできなくて。
2012年に(「アイコニック」で)料理長になって以来、バチッとはまったなと満足する仕上がりは片手で数える程。お客様から「美味しいね」と喜んでいただけても、どこか「ひらまつ」や「教わったシェフの料理」っていう認識があって。
ああでもないこうでもないと試行錯誤するなかで、「できたな」って思えるものがようやく見えてきたかなと。

―紆余曲折を経て、ご自身のスタイルを洗練させていかれたのですね。

天才型の人って、なんでそんな発想がでるのかなというものを作り出すんです。僕は天才型ではないし、見すぎると印象に残ってしまうので、なぜそうしたのかは聞かないようにして、作り出そう、作り出そうと。
まだまだですが、ここ1~2年で料理のスタイルや環境が大きく変化して、少しずつできてくるようになりました。それでもまだ全部じゃないと思いますけどね。

この地元でしかできないことを、探していきたい

―休みなくお仕事をされているようですが、伊勢志摩で心を落ち着ける場所があれば教えてください。

ガイドブックに載っているところであれば、横山の展望台。志摩の入り組んだ海と陸がきれいで、夕日が沈む瞬間がおすすめですね。
あとは時間を見つけて釣りに出かけます。うっすら丸くなる水平線を見ていると、心が落ち着きます。
志摩市のあたりは車で15分くらいですが、県外から来る人もいるくらい良いスポットです。今の時期(11月)だとアオリイカ、チヌ(クロダイ)、サワラ。もう少し冬になるとヒラスズキ、アカハタ。少し沖に出るとアマダイなど高級魚も釣れます。
みんなで船を借りて釣ってきた魚を、お客様にお出ししたこともありました。

―本当に地元の食材に向き合っているのをひしひしと感じるエピソードですね。

出ていかないと届かないし、新しい出会いもないので。理想は隣に小さい畑を作ることですね。ハーブとかは始めていて、ミント水を作ったり、ベルベーヌ(レモンバーベナ)を使ったアイスをお出ししたりしています。

志摩は育ちが全然違うんですよね。日射が多いのか、日光が違うんじゃないかな。
そういうのを感じてほしいですね。この地域のものを使って一つ一つ作り上げているので、ぜひお食事を楽しみにお越しいただければと思います。

―「THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 賢島」の総料理長として、これから挑戦していきたいことがあれば教えていただけますか?

オープンしてからずっとやっていることですが、より地元と密着して、この地元でしかできないこと、ここだからできることを探していきたいですね。猟にもいきたいし、畑もやりたい。都心ではない、この土地だからできることをやっていきたいです。

翌朝漁港に出かけるシェフの生き生きとした表情から、食材探しへの熱意が見て取れました。彼の追い求める料理をまた味わいに、賢島を訪れたくなりました。歴史に裏付けされた「ひらまつ」の安定したホスピタリティが提案する、土地の個性をいかした「滞在するレストラン」というコンセプト。それはむしろ、信頼のおけるシェフに会いに行く旅なのかもしれません。

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今村 将人
1980年生まれ、福岡県出身。
調理師専門学校卒業後、2003年ひらまつ入社。
入社後は「レストランひらまつ広尾」や、「ひらまつパリ」などで研鑽を積む。
帰国後、都内レストランで料理長を勤め、2016年ひらまつ初のホテルの料理長として抜擢。
常に地元の生産者とのコミュニケーションを大切にし、素材選びにこだわりを持つ。

THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 賢島

THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 賢島

三重県/賢島

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