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「一期一会」の心でもてなす、古都の老舗旅館
インタビュー

「一期一会」の心でもてなす、古都の老舗旅館 炭屋旅館(京都府/京都・中京区)

京都・麩屋町三条に、大正初期からの佇まいを残す「炭屋旅館」。本格的な数寄屋造りが特徴の、茶の湯の宿です。京都を代表する老舗の宿で、気持ちにゆとりを取り戻す素敵な時間を過ごす旅。今回は女将の堀部寛子様に、「一期一会」を大切にされるおもてなしの心について伺いました。

開業のきっかけは「お茶」。趣味が高じて宿屋へ。

―外観の佇まいから、背筋が伸びるような凛とした美しさを感じますね。旅館開業のきっかけについて教えてください。

もともと先々代も、人をもてなすことが好きやったと思います。大正の始め頃のことですね。政府登録になったのは昭和に入ってからです。
生業は刀の鍛冶屋だったのですが、趣味が多く、お茶を習ったり焼き物を焼いたり、色々なことに興じていました。京都には家元がたくさんおいでになりますので、全国から大勢の方がお稽古にお越しになっていました。お稽古場で仲良しになっていくにつれて、うちは京都の真ん中にありますから、食事にお誘いしたりお稽古のおさらいをしたりするようになって。夜も遅くなると、新幹線や飛行機もない時代でしたので、「一晩如何ですか」というわけでお泊めしていたんです。

それも度重なるうちに、とても助かるけれどいつもタダでは恐縮すると、心得のある方は絵を描いたり、ちょっと御礼を置いていかれたのです。その結果、いつの間にか宿屋になっていました。
毎月来てくださる方のために一部屋増やしておこうとか。入口は狭いのですけれど、奥へ奥へと伸びていった感じですね。

―その後、新館を建てられたのは前回の東京五輪の頃だったそうですね。

その頃は京都・奈良が新婚旅行のメッカで、定番のコースでした。当時はアメリカ文化の影響で、ベッドが流行っていたこともあり、新館を建て増しした際に、新婚さん用に畳ベッドを各部屋に2台ずつ入れて、8つ部屋を作りました。その後は日本人の体格も良くなり、外国の方も増えてきましたので、全て取り外して畳の部屋にしました。最近は日本人のご夫婦がベッドを好まれるようになってきているので、また新たにベッドのお部屋を増やしています。

お茶の心で伝える、炭屋旅館流のおもてなし

―先ほどはお茶をごちそういただき、ありがとうございました。
いただいた瞬間、不思議な安らぎを感じました。「おもてなし」という言葉自体はみなさん使われていますけれど、その「おもてなし」をどのようにされるのかお聞かせください。

この人にはどういうおもてなしをさせていただいたらいいのかな、どうしたら満足していただけるのかなと考えるのが私の仕事。難しいけれど、それが楽しみの一つです。

「お茶を差し上げて人をもてなそう」というときは、「お部屋を適当にしておく」「お湯を沸かしておく」「お菓子を用意しておく」「設えを整えておく」「お水を撒いておく」。お客様が来て居心地よく過ごしていただくために、色々なことをしておかなければいけないのです。それがおもてなしに繋がると、私の父は考えていました。茶の湯を全面的に推して、お茶の心で人をもてなすことができないかなと考え、今でもおもてなしに繋いでいます。お客様をおもてなしすること全てが、お茶の心ですね。

―先ほど通りがかったところに「一期一会」の言葉が書かれていましたが、その精神をまさに表されているんですね。

本当に、一期一会そのものですね。今度いつお目にかかるかわからない方でも、今その場を楽しんでいただく、その時を満足していただく。全て「一期一会」だと思いますね。

お花を一日おきに変えているということもすごい気配りですよね。

特に夏の暑い時期は枯れるのが早いので… 特にお客様がおいでにならないお部屋は冷房もつけないので、日持ちが悪いです。

―この仕事を始めて色々なご縁ができて、一回一回の出会いを大事にしようと考えるようになりました。お話を伺い、その大切さを身に染みて感じました。

それは良かった です。おしつけがましくなく、おもてなしの心がお客様に伝わったら最高に嬉しいですね。

伝統文化を、次世代に伝える

―京都は海外からのお客様が非常に増えていますが、気を付けていらっしゃることは何かありますか?

今からちょうど15年くらい前に、一休の元社長の森さんがアポイント無しで炭屋においでになりました。ちょうど宿でもパソコンを買った時期なのですが、母の時代には、ご紹介や、どなたかの「つて」でいらっしゃるお客様がほとんどでした。メールで予約が入ってくる、一見さんのお客様を受け入れるようになったので、母は最初すごく心配していました。
森さんが初めていらしたときは本当にびっくりしましたけれど、懲りずに何度も足を運んでくださって、誠意に負けました。今ではインターネット経由で一休のお客様に多くご予約いただいていますし、地球狭しと、世界中からお客様が訪れてくださいます。当時に比べて本当に変わりましたね。一休が成長し続けていることは私もすごく嬉しいですし、一休と一緒に成長したと思っています。

海外のお客様も、ホームページや噂を聞かれてご存知でしょうけれど、「いまどきのホテル」とは違う日本らしい宿だとわかって来てくださっている、日本びいきの方が多いです。お箸、浴衣、畳、日本のお風呂など、日本に馴染もうとされる方が多いので、あまり困ったことはないです。浴衣を着付けて差し上げるとすごく喜んでいただけたり、なぜ上手にお箸を使えるのかと聞いたら、自国でもお箸を使ったことがあるというような話で盛り上がったり。

一つお願いがあるとしたら、召し上がれない食材の情報は、早めにいただけると嬉しいですね。生ものがダメというのをおいでになってから言われることがあるのですが、急に別のものを用意できないので… 夜遅い時間での対応はやはり難しくて。事前にわかっていれば、もちろんちゃんと準備できるので、そういった情報はどなたでもなるべく早く教えてくださいとお願いしています。

―日本文化に親しもうとする海外の方が多い一方で、逆に私たち日本人の方が伝統文化に触れる機会が少なくなっているように感じます。

日本人が、外国に行って、いかに日本文化を知らないかということに気付いて、こちらを訪れられることがあります。余計に、日本の文化を残していかなければと思います。

お茶席にお招きすると、海外の方はトライしようとされますが、日本人は知らないことを恥ずかしがってしまいます。お茶の飲み方を知らないとか。知らなくても、挑戦しようという気持ちは、海外の方のほうが貪欲です。たじろがずに、どんどんこういったところに来て、挑戦してほしいです。「敷居が高い」とよく言われますけれど、一度来てしまわれれば一見さんでもないですし、怖がらずに日本文化にどんどん触れてほしいです。

―実は私自身も、茶道をあまり知らないので、今回お伺いする前に知人に聞いたり調べたりしたのですが、ある方に「わからないことをちゃんと伝えて、そこで勉強させてもらえばいい」と言われました。

本当に、その通りですね。例え間違ってしまっても、一度でも二度でも体験すれば、今度お茶席に入ったときに自信が持てますから。まずはチャレンジしてみてください。「炭屋に行ってお茶席に入った」ということで、一回経験したことになります。うちでは毎月7日と17日にお茶席を用意していますので、それが少しでも、訪れた方の気持ちのお土産になったら嬉しいです。

―一休.comでは「こころに贅沢させよう」という言葉を大切にしているのですが、女将が考える「こころの贅沢」とはなんでしょうか?

「ゆとり」ですね。なくてもいいけれど、あった方がいいもの。誰かに「毎日毎日忙しくてスケジュールいっぱいでしょう?しんどくなったときはどうするのですか?」と聞かれたときに、すかさず「スケジュールを一つ外すのよ」と答えました。一つ予定をやめるだけで、気持ちがフッと楽になってゆとりができる。あんまり詰めてしまうと、神経も苛立ちますし、自分で自分を殺してしまうようなこともありますからね。一日何もしない日を作るとか、ちょっと余裕を持つこと。いいものを着ていいものを食べる、ということではなくて、気持ちのゆとりがすごく贅沢に繋がるような気がします。最近特にそう思います。

―最後に、一休.comユーザーにメッセージをお願いします。

京都の旅館ということで敷居が高いと思わず、気楽にお越し頂けたら嬉しいです。
高級ホテルがどんどんできていますけれど、炭屋のような日本ならではの設えとはまた違いますので。日本の伝統を守る旅館の良さを、日本人であればこそぜひ訪れて感じてもらいたいです。いつまでも守って、次に繋げていきたいと思っていますので、守っているところを、見に来てください。

「時間に余白を作る」という軽やかな女将の言葉に、ともすると慌ただしい日常に馴れきっている自分を猛省し、美しい生き方を教えていただいた気がしました。
人生という旅の途中でこの宿に滞在し、お茶をいただき、日本文化をじっくりと味わい、自らのルーツに思いを馳せる。この宿には、張りつめた心をじんわりと温めてくれるような不思議な力が潜んでいます。

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炭屋旅館
女将 堀部 寛子(ほりべ ひろこ)

裏千家学園で3年間茶道の修業、その後、家業の炭屋旅館を手伝う。父・公允(こういん)は裏千家老分をつとめるが、15年程前に体調を崩し、入退院を繰り返す。看病する母を助け、またその母も入院。気が付いたら「手伝う」という気持ちがいつの間にか「頑張らなくては」に変わっていた。
毎月7日と17日の夜には、お茶が好きだった先代・先々代の供養の釜を懸け、宿泊のお客様をもてなしている。
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炭屋旅館

炭屋旅館

京都府/京都・中京区

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