2018年4月に開業した「京の温所(おんどころ)」。下着メーカーである株式会社ワコールが手掛ける、町家を再生した宿泊施設です。
1軒目の「京の温所 岡崎」に続き、8月には「京の温所 釜座二条」がオープン。京町家の価値や特性を活かしつつ、快適な現代生活が送れる「住まい」として考えられた空間には、京都に暮らしているような、“あたらしいもうひとつの日常”を体験できる工夫やアイディアが詰まっています。
今回は、8月1日にオープンした「京の温所 釜座二条」をご紹介します。
目 次
人々が集う、生まれ変わった京都の「住まい」

二条城のほど近く、釜座二条に位置する「京の温所 釜座二条」。建築家である中村好文氏が設計を、ミナペルホネンデザイナーの皆川明氏がディレクションを手掛け、築約150年の京町家をリノベーション。現代生活に寄り添う「住まい」として生まれ変わりました。

ロゴマークは、温かい家の中に人々が集まって、温かい食事を作ったり能動的に過ごしたりすることをイメージしたもの。さらには、女性の子宮のような意味も込められています。
日々の暮らしに小さなアートを

エントランスでは、モリソン小林氏の作品である、葉を模った鉄製のアートピースが迎えてくれます。居室へと続く引き戸は、2枚のガラスの間にミナペルホネンの“サムタイムズラッキー”というファブリックを挟んだオリジナルです。

奥に長い町家の構造をそのままに、1階にはダイニングキッチンとお風呂やトイレなどの水回り、中庭の先にライブラリースペースがあります。
能動的な滞在の中心にあるこだわりのキッチン

京都の食材で温かい食事を作る楽しみを、「京都で食べる」記憶にしてほしいという想いから、充実した設備のキッチン。広々とした対面型のカウンターには、グリル付の3口IHクッキングヒーターと大きなシンク。オーブンレンジも組み込まれており、長期滞在やしっかりと調理をしたい人には嬉しいですね。


調理道具や食器は、京都のものだけでなく、日本や世界各地からセレクト。使ってみて良いなと思ったものを実際に購入できるように、作家の1点物ではなく、流通しているものを揃えていることも宿のこだわりの1つです。


お皿は立てて収納することで、省スペースに。見た目の美しさと機能性を兼ね備えた調理器具や食器は、調理や食事の時間をより楽しく演出してくれます。

キッチンと一体感のあるダイニングスペース。テーブルや椅子は中村氏がデザインしたオリジナルで、曲線的なディテールが特徴的です。ソファベンチにはミナペルホネンのファブリックが使われています。
感性を刺激する自分だけの図書館

中庭には、この町家の歴史をずっと見てきた樹齢100年のイヌマキの古木が。それを臨むようにあるのが“庭のライブラリー”です。

ライブラリーの扉は普段は施錠されており、レトロな雰囲気が可愛らしい鍵を使って、ゲスト自身が開け閉めをするスタイル。自分で扉の鍵を開けるという行為を楽しんでもらいたいという、小さな遊び心です。

本棚に並ぶ約200冊の本は、「ワコールスタディホール京都」の選書を担当する、ブックディレクターの幅 允孝氏がセレクト。「食べる」「暮らす」「旅する」のテーマ別に並べられています。

本からインスピレーションを受けて、市場で食材を買って料理を作ったり、和菓子屋やパン屋を巡ったり、京都の旅をより印象深いものにしてくれるお気に入りの1冊に出会えるはず。
優しい光と木の香りに包まれる癒しのひととき

お風呂や洗面所、トイレなどの水回りがあるのは、もともとは京町家特有の「トオリニワ」として使われていたところ。家の表口と裏口を繋ぐ薄暗い通路として使われていた場所が、明るい空間に変わりました。

柔らかな曲線を描いた格子の天井は、天窓から入った光が美しく漏れ落ちる、こだわりのデザイン。時間によって雰囲気がガラリと変わります。

湯船に浸かって足を伸ばしたときに身体にフィットするよう、たまご型に造られた高野槇の浴槽。頭を乗せたくなるようなへりのカーブも絶妙です。窓からは小さな坪庭が見え、手水鉢の揺らぐ水面の様子に、一層と癒されることでしょう。

風呂椅子と風呂桶は、木曽のサワラで作られたもの。

バスアメニティは、アメリカで最も歴史のあるアポセカリーと言われる「シー・オー・ビゲロウ」のミニサイズ。爽やかなラベンダー&ペパーミントの香りです。

肌触りの柔らかい今治タオル。パジャマとドライヤーも引き出しに収納されています。長期滞在のゲストにも配慮し、洗面所の隣には扉で隠された乾燥機付の洗濯機も備わります。
歴史ある梁に見守られて眠る快適な寝室

2階へと続く螺旋階段。カーブの形状が美しいウォルナットの手すりは、まるで工芸品のよう。

ベッドを2台備えた寝室は、高い天井を渡る太い梁が印象的。もともと使われていた梁の中に照明を埋め込み、間接照明のようになっています。ベッドには「シモンズ」製のマットレス。敷布団と羽毛布団は「京都西川」。快適な寝具が安眠を約束してくれます。

ヘッドボードに使われているのは、ミナペルホネンの“タンバリン”という生地。細部にまでこだわりが詰まっています。

寝室奥の扉の中には、グルーミングスペースとクローゼット。身支度はもちろん、書斎としても使えるスペースです。ハンガーラックと引き出しもたっぷり。自分の荷物や衣類をしまえば、京都の自宅で過ごしているような気分になることでしょう。

屋根に沿って天井が低くなっている和室は、屋根裏部屋のような雰囲気。不思議と落ち着く空間です。3~4名で宿泊する際は、ここに布団を敷いて眠ります。

常駐するスタッフはおらず、完全にプライベートな空間で、京都の自宅のように過ごせる「京の温所」。ゲストが“京都の暮らし”を存分に楽しめるように、「暮らしの提案帖」という冊子を作成し、予約時やチェックイン時に渡しているのも、この宿ならではのおもてなしです。町家の歴史を感じながら、京都の自宅で暮らすようにシンプルに過ごす。それが「京の温所」流の上質な滞在と言えるでしょう。
※2018年11月に開業した「京の温所 御幸町夷川」はこちらでご紹介しています。
京の温所 釜座二条
京都府/京都市












