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渓谷が奏でる四季に触れ、滞在そのものを愉しむ
インタビュー

渓谷が奏でる四季に触れ、滞在そのものを愉しむ 扉温泉 明神館(長野県/松本・扉温泉)

長野県松本市入山辺。標高1050mの山の中、「扉温泉」という秘境に、世界的に評価されるリゾートがあります。約90年にわたり宿泊客を迎え入れる「扉温泉 明神館」。季節を変えて宿泊したいと願う方も多い「扉温泉 明神館」の代表取締役社長 齊藤忠政氏にお話を伺いました。

「いままでの旅館の在り方を壊す」という意識

―「扉温泉 明神館」は季節を変えて訪れるリピーターが多いですよね。お客様は明神館のどんな部分に魅力を感じられていらっしゃるのでしょうか。

そうですね。川の水が合流する場所など、自然界と人間界が最初に重なる、自然のパワーを持っている「パワースポット」的なスピリチュアルな感覚はありますね。お客様が「何か居心地が良かったのよね」と六感に気付くような。

―自然の恵みや、土地から受けるエネルギーに魅かれている方が多いのでしょうね。明神館、という名前にも「神」という漢字が使われていますが、由来は何ですか?

近くにある明神平に神が下りたという伝説と、龍が下りた場所という伝説があります。それにちなんで、温泉にも龍という漢字を入れて「白龍」「青龍」という名前にしています。龍の通り道だったというのは、特に海外の常連のお客様の中には感じる方もいるんですよ。温泉街とは一味違った自然の神秘を間近に感じるピュアな場所でもあります。

―お客様をお迎えするにあたって大切にされていることについて教えてください。

お客様に対して押しつけがましくないサービス、というのが一番ですね。居てほしいときに居た、というスタイルを心がけています。
もう一つが、ここに来る必然性をつくることです。食事は、自分たちの畑と、250軒の契約農家さんの野菜を中心に安心・安全なものを提供しています。田邉シェフが10年以上かけて築いてきた人脈ですが、土地のものを集約し生まれたエネルギーをお客様に味わってもらえるような料理スタイルに力を入れています。
来年から室内の改装も考えています。今期は外回りを、森林浴などをお客様にどう感じていただくかということを大切にした施設をつくる予定です。

―アクティビティや体験についても、今後は考えてらっしゃるのですね。

ここに来るお客様は、目的が松本や安曇野の観光地ではなく、宿で過ごすことが目的という方が多いです。押し付けではないコンテンツを楽しめる雰囲気をどうやって作ってあげるか、というのが大きな課題。自然は好きな方もアクティビティには抵抗があったり、きっかけとなるプチ体験にするとか、線引きも必要です。
「お客様にとって居心地の良い場所とは何か」をより追求していかないといけないと思っています。

―約90年という歴史ある宿が、どうやって現在のスタイルになったのでしょうか?

大学時代にバックパックで世界を旅するような番組が流行っていたので、バイトして貯めたお金でアジアを周りました。教授に「どこに行けばいいですか?」と聞いたら「バリ島に行け」と言われて。最後の滞在だけはいいところに泊まろうと一人で「ピタマハ」という王様がやっているホテルに泊まりました。そこは言うなれば「Sense of place(土地の感覚)」を活かしていて。日本とは全然違う、日本はすごく遅れているなと感じました。
当時の会長も多くの日本人同様「インドネシア=観光後進国」というイメージ。「観光の先進があるはずない」と言って聞かなかったので、バリ在住の友達にアレンジしてもらって会長をリゾートホテルに連れて行って、やっと価値を共有することができました。日本にはない世界観で宿ができていることに魅了されて、宿を改装する際もこれを持ってこようということに。
その頃、アマンリゾーツがピタマハと同じくらいのクオリティで開業していて、支配人にも話を聞いたところ「君たちはここに来る必要ないよ」と言われました。「僕たちは日本で学んでこれを作ったのに、なんで君たちはもっと日本を見ないんだ?」と。

―日本の旅館を、ということですか?

旅館やお寺とかを学んだみたいですね。あちらでは、日の出から日の入りまで、地形、川までの距離とかをすごく大事にしていました。
あと、日本の施設はよくきらびやかだったり、金ぴかのロビーだったり、見せたいものを一度に10すべて見せがちですが、彼らは玄関で2を見せ、客室に行くまでに1を見せ、全部で10になるように工夫されています。
でも実は日本のお寺でも、座った位置に合わせて「借景」を作ったりしているじゃないですか。それにすごく納得して、この地に必要なリゾートを作ろうという考えに変わっていきました。「土地の感覚」を活かしたものを作ろう、「国定公園」ならではの自然を最大限にお客様に味わってもらおう、と。
「バリそのもの」を持ってきてしまうと単なるトレンドになってしまう。バリの良さの本質は「自然との共有」や「土地の感覚を活かす」こと。
信州松本の扉温泉の中で、土地の感覚や地形の強みを活かすとしたら、「立ち湯」や、「客室露天風呂」をつくることかなと考え、学んだ要素を入れていきました。

そして「エコリゾート」という意識ですね。20年前にホテルジャーナリストである“せきねきょうこ”さんのエコロジーに関する講演を聞き、知り合ったことがきっかけです。ヨーロッパのエコリゾートを一緒に見て以来、エコロジーにも力を入れています。デンマークのグリーンキーを取得して、グリーンキーのプログラムに基づいたエコロジーをやってきました。
この1,050mの国定公園の中にいると、東京や松本市内という「都市」では感じられないような自然の変化がよくわかります。私たちとしては「エコロジー」という制約を設けるのではなく、スマートに伝えられないかなと思って。2002年頃から「土地の感覚+エコロジー」という取り組みを入れた、「とんがった宿」を作ろうと走り始めました。いままでの旅館の在り方を壊そうと。
当時は新しい取り組みでは取材もすごかったです。倉庫に行けば200冊くらい残っているほど。

―その当時から時代を先取りした考え方をされていらっしゃったのですね!

また、当時のサービスはお宿に着くなりせわしなく食事やお風呂の時間を聞かれていました。「夕食は18時しか空いていません」「夕食時の飲み物はどうしますか?」とかね。とりあえずゆっくりお茶でも飲ませてほしいじゃないですか(笑)。朝も、お客様が食事に出ている間に布団を上げて。戻ったら部屋が綺麗にされているから、もう帰るしかない。でも「それが旅館」と皆さんが疑わなかった時代。私自身はバリでの経験があるので、自分が思うままにリゾートを愉しむ自由さがほしかった。そこで食事の時間は聞かず夜は18時~20時、朝は8時~10時の間でお好きな時間にどうぞいう形に変えました。お布団を上げてほしくなければ、カードを置いてもらえたら上げませんよ、といったことを手作りで始めました。今や他の旅館もやっていますけど、当時は先進的でした。
好きな時間に食事ができたり、お風呂に入れたりすることはお客様にとって明神館の特徴になっていると思います。

ただ、長野県の国定公園とは言え、地域的なハンデがあるのも事実。首都圏から1~2時間で行ける場所と競合するのは非常に大変ですので、ここに来る必然性や、付加価値を考えていかないといけない。お客様に認知して、わざわざ来てもらうような宿でなくてはという危機感がありました。そこで団体旅行が主流な時代に思い切って「個人旅行」にシフトし、それからは「個」を主体にしています。
改革を始めて1~2年経ち、今度はハードの改装に着手しました。土地の感覚を最大限に活かしたものを作ろうと、客室露天風呂、ダイニング棟、アロマ棟、と徐々に進めていきました。ちょうど「デザイナーズ旅館」が流行りだした時代。他にもそういうお宿が出てきてくれたというのもあって、2001年~2002年頃が宿の転換期でした。

―サービス面の改善、ソフトの改善にまず取り組まれ、「お客様ファースト」に変わったのですね。

その頃、松本市内で飲食店をやっていた田邉シェフを紹介していただきました。信州の野菜だけでなく日本のトップと言える彼は、同年代ということもあって、革新的なことを一緒にやってきました。
「旅館だから和食」ではなくフレンチでもいいじゃないかということで、チョイスのフレンチを始めました。今でこそ、旅館で鉄板焼きやフレンチもありますけれど、旅館でフレンチが食べられるなんて当時はありませんでした。「旅館と言えば和食」を変えてきたというのも自負しています。

日本の「旅館」という文化を世界に発信し、地域と共に盛り上げていく

―ルレ・エ・シャトー加盟とその理由についてお聞かせください。

ルレ・エ・シャトーに加盟したのは、明神館は2008年、ヒカリヤは2014年ですね。当時の日本支部長「強羅花壇」さんと「あさば」さんからの紹介がきっかけとなりました。
世界のどこの国に行ってもホテルはありますが、日本の「旅館」というのは世界にはない。日本文化が味わえ、1泊2食が付いてきて畳で過ごせる旅館には、世界に発信するぐらいのクオリティがあると思っていました。それには同じ考えや価値観を共有している仲間とブランディングをして、海外から誘客したいと。ルレ・エ・シャトーのお客様は、ライフスタイルや滞在先で自分の人生が豊かになる経験・体験をすることを大切に考えている方たち。そういった方が来てくれるようになったと感じています。
理事をやらせてもらって、すごく奥が深い組織だということが改めてわかりました。特にシェフとのつながりが強いですね。加盟レストランやホテルは、8割以上が2つ星以上。先日、「ル・ルレ・ベルナール・ロワゾ―」のシェフに来ていただきイベントを行いましたが、加盟していなければ、きっかけは作れませんからね。いきなり2つ星、3つ星のフレンチとコラボしたいと言っても「誰ですか?」ってなりますから。世界に行けば、ルレ・エ・シャトーは誰もが知っていますからすぐ話ができます。スタッフのクオリティを上げるという意味でも、すごくプラスになっています。

―ルレ・エ・シャトーは、食を通じて「地域貢献」をすることに意識を向けていますが、取り組まれていることがあれば教えてください。

地域と共に歩み、ブランディングして一緒に発信していくことはずっと前から取り組んでいます。どこの温泉地でも同じかと思いますが、どうしたら地域を豊かにする好循環を生むかということを一緒に考えていかないといけない。地域に支えてもらって、地域に盛り上げてもらって、地域に恩恵があるからうちも輝けるのです。
明神館は一軒宿ですから、地元・入山辺に対して何か協力的なことをするとかですね。例えば、住民の運動会があれば率先して協力をしています。やはり自分たちにも返っていますし、ここで商売をさせてもらっている以上、一緒にやっていくというのは大きなことですね。
松本市内のレストラン「ヒカリヤ」は、建物は130年以上になる国の文化財です。私が従業員に伝えているのは「建物を使わせてもらっている」ということ、「謙虚な気持ちで自分たちや地域の人たちに向き合いなさい」ということ。おかげさまでお客様は飛躍的に増えていますし、誰がどう助けてくれるかわかりませんから、非常に大切なことですね。

―最後に、一休.comユーザーと明神館ファンの皆様に向けて、今後の展望も含めてメッセージをお願いいたします。

実は、初めてOTA(オンライン宿泊予約)を始めたのが一休さんでした。団体から個人にシフトしようと考えていた時期にちょうどネットが流行り始めたのがきっかけです。当時はまだ数件の掲載で、創業者の森さんと一緒に二人三脚でお宿を開拓して盛り上げていきました。一休.comのユーザー様は、私たちの成長過程を全部見てきてくれた、共に歩んできた大切なお客様だと認識しています。ずっと育ててもらい、どんどんバージョンアップしてきた経緯があって、大切に思っています。
これから、自然や国定公園ならではの宿づくりや、新しい、おもしろい取り組みをしていきますので、楽しみにしていてほしいですね。また、エコロジーを掘り下げてちゃんと伝えていきたいと思います。原点に返って、安心・安全はもちろん、宿の個々の特性をうまく活かした「ここでなければできないこと」を展開していきたいです。お客様にはそれを見極めてもらって、さらに愛される宿にしていきたいですね。

「快適さとエコロジーの両立」という、難しい取り組みに真摯に向き合われている「扉温泉 明神館」。『滞在を愉しむ自由さの提案』というメッセージは、お客様への敬意とあたたかなおもてなしに表れています。
凛とした山の中に佇む、隠れ家のような現代リゾートの風景。それこそが「ここに来る必然性」を生み出していらっしゃるのではないでしょうか。

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齊藤 忠政(さいとう ただまさ)
株式会社明神館 代表取締役

1997年  朝日新聞社グループ企業・株式会社朝日旅行会 入社
2000年  株式会社明神館 入社
2007年  シックスセンス株式会社 設立
シックスセンス株式会社 代表取締役(レストラン ヒカリヤヒガシ・ヒカリヤニシ)
2011年  長野県旅館ホテル組合青年部組 理事
2013年~ Relaia&Chateaux 日本・韓国支部長
2013年~ おいしい信州ふーど(風土)公使
2016年  JapanTimes(英字新聞 ジャパンタイムス)
「アジア圏で最も期待される次世代リーダー100人」に選出され、同紙に若者に対するメッセージが掲載される
2017年~ 全国旅館ホテル生活衛生同業組合 青年部 北関東信州ブロック ブロック長
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扉温泉 明神館

扉温泉 明神館

長野県/松本・扉温泉

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更新日時2019.05.28 13:56

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