谷川岳の麓に佇む「旅館たにがわ」の別邸として、1997年5月に開業した「別邸 仙寿庵」。豊かな四季の景観を間近に楽しめる、贅沢な空間設計。自然に囲まれた露天風呂。心地良い空気の中で味わう、素材を活かした季節を感じる美食。ルレ・エ・シャトー加盟施設として定評がある「別邸 仙寿庵」の魅力を、常務取締役 久保 英弘様とのインタビューを通してお伝えします。
目 次
谷川岳の自然。それが「原点」
– 山と川に囲まれた、素晴らしいロケーションですね。ラウンジからの景色も、雪が辺り一面を覆っていて、まるで桃源郷のようです。

ありがとうございます。私は中学生の時、親戚のお兄ちゃんに「ここの山はすごい。今は感じないかもしれないけど、本当に宝物だよ」と言われたことがあって。その後高校からスキーの推薦で埼玉に行き、東京の大学へ進学しましたが、仕事に就いてから地元の魅力に段々気づき始めました。小学生の頃からスキーの大会で北海道をはじめ各地をいろいろ回り、旅館の仕事を始めてからほぼ全国各地に行きましたが、改めて地元みなかみの良さが引き立ってくるように思いました。
この土地に生かされて、旅館が成り立っている。かつ、お客様が求めていることを、年を重ねていくたびに感じています。
– もしずっとこちらにいらっしゃったら、当たり前のものになってなかなか気づかないかもしれませんが、東京や別の場所にいくと良さがわかりますよね。

そうですね。海外に行くとひときわ「日本の文化をきちんと守っていかないと」という気持ちになります。四季の設えや行事を大切にして「日本を表現する」。ルレ・エ・シャトーもですが、ここでしかできない事、ここでしか得られないものをお客様にどう経験していただくか。何ができるかスタッフにも問いかけながら、常にやっております。
– 客室の露天風呂からの景色や読書室など、自然と接する機会が多い空間になっていますね。久保さんがこちらに戻られた頃にはもう仙寿庵はあったのですか?

その頃はまだ原野が広がっていました。バブルもはじけて、なにもこの先見えない時代でしたが、心から寛いでもらえて、喜んでいただける非日常的な空間を作りたいという社長の想いで一から始めました。
もともとは本館として「旅館たにがわ」があって。祖父母が高崎から出てきて、水上でダム建設に携わり、人材派遣や山の仕事をしていました。谷川岳に魅せられて、谷川に移り住んで旅館を購入したのがそもそもの始まりです。当時から、水上温泉は上越線の開業と共にある種賑わっていましたが、谷川温泉は駅から近いのに寂れていました。そこで谷川岳がひとつのポイントだろうということで、「谷川岳に手が届きそう」というキャッチフレーズで「旅館たにがわ」を始めました。
谷川岳みたいな目の前まで岩場が見える観光地ってそんなにないですよね。だからここは恵まれているなとつくづく感じます。
この自然、山、谷川岳、水が我々を育ててくれた原点ですね。
– それで「別邸」なのですね!「仙寿庵」というお名前は、どういう由来でつけられたのですか?

環境と人が屋号の由来です。仙人が住んでいるくらい清らかで何もない立地と、お客様に幸せになっていただく小さな宿というイメージです。
心地よく過ごしていただける空間にしようと細かな点まで設計士の方と社長とで話し合って決めました。
ルレ・エ・シャトー加盟宿として取り組まれていること
– ルレ・エ・シャトーに加盟されていることで、国内外の旅慣れたお客様が訪れていらっしゃいますね。どういうことを心がけていらっしゃいますか?

基本的には日本らしさを出しつつ、快適な空間をどう提供できるかを考えています。言葉もすべて英語ではなくて、お迎えのときは「いらっしゃいませ、Welcome to Senjuan.」。最初から“Good morning.”より、「おはようございます、Good morning.」。ちょっとした人と人の触れあいで、旅の良さが増すじゃないですか。
– スタッフの方は英語が堪能なのですか?

レベルはまちまちですが、お客様にご不便のないよう努力しています。また、「地元の企業や生産者に貢献しよう」というルレ・エ・シャトーの20の約束というコンセプトに基づき、週に1回地元の英会話の先生に来てもらっています。
そういえば、地域貢献の一環で、地元の養蜂家さんと協力して高品質なはちみつを作ろうと思っています。少しでも郷土に還元できるようにしていきたいですね。
また10年前から、観光庁が推進する「雪国観光圏」に参加しています。雪国ならではの文化を観光という視点から後世に伝えるという取り組みで、県をまたいでの広域の事業です。先程もお話したのですが地域性を生かしたいという私の想いと重なり豪雪地帯の雪を材料としたトリートメントを開発しました。
– ルレ・エ・シャトーでは加盟施設同士のコラボレーションも話題を集めていますよね。2017年に札幌の人気フレンチ「モリエール」とのイベントを開催され、とても盛況だったということで、その時のエピソードをお伺いしたいです。
お互い「ファミリー」という位置づけなので、話し合いの中で勉強できる交流が沢山あります。そういう働きの中、モリエールさんと一昨年からイベントを始めました。
モリエールさんの料理は、土地のものを美味しく、素材を活かした形で提供されていて、私達の目指すべきところです。技法は日本料理とフレンチなので全然違いますが、料理に対して「どうしたらもっと美味しくできるだろう、来年もっとこれ以上にするにはどうしたらいいのか」と掘り下げていく考え方は勉強になりました。
コラボレーションによって、「モリエールさんの料理がここで食べられる」となったら、お客様もわくわくするし、宿の魅力になりますよね。
つい先日も「神戸北野ホテル」の山口シェフと「扉温泉 明神館」の田邉シェフ、「ルレ・ベルナール・ロワゾー」のパトリックシェフに来ていただいてイベントを開催しました。フランス料理のサービスの仕方はうちのスタッフにも勉強になったし、箸を使うフランス料理も斬新でした。パトリックさんも肉料理は普段大皿でいっぺんに出すけれど、日本には食器も楽しむという文化があるからと、あえて肉と野菜を分けて提供されていて。初めての試みだったようです。
次はどういうふうに出したらいいかと真剣にメモを見て、聞いて出そうとするスタッフの姿勢をパトリックさんが評価して下さって。『同じルレ・エ・シャトーの仲間はやっぱり一流だ』と言ってくれて、嬉しかったです。スタッフが一生懸命やってくれている証ですので。
– そういう経験ができること自体が、宝物であり財産になりますよね。

「いかに経験を積めるか」が人の魅力を増す要素ですね。スタッフが色々な経験を積むことに伴って旅館のレベルが上がっていくというのが私の持論です。
だから地域のイベント、例えば中之条町主催のビエンナーレや雪国観光圏のイベントにも極力参加してもらう。それでどんどん人に説明できるようになる。こちらがハブとなってお話しして、お客様が色々な場所に滞在できる形に持っていきたいです。宿が「情報提供の場」の役目をしていく必要があると思っています。
また、旅館同士も協力しあおうといつも言っています。先日の熊本の震災で、お客さんが来なくなって旅館は困っているだろうと現地の観光協会を通して声をかけました。その結果、ある宿から「(スタッフを)2人お願いしたい」と依頼され、短期間ですが働いていただきました。お互い助け合いだと思っているし、持ちつ持たれつの交流ですからね。そういうご縁を大事にしていきたいです。
いつでも「帰れる」場所でありたい
– 今の旅のニーズや、トレンドをお聞かせください。最近お気づきの点はございますか?

時々お客様からちょっと飲める場所があるといいねと言われます。ラウンジでは23時までセルフサービス形式のフリードリンクを用意しているのですが、やはり人との触れ合いを求めていらっしゃるのかなと。それで、今年4月から外にテラスを作ってバーラウンジとして過ごせるようにする予定です。

東京行った時や、学生時代に「いいね田舎があって」と言われた事があります。
都会生まれの人たちは身近に自然がない環境が多いと思うので、故郷の代わりになれるような場所を旅館は作れると考えています。そこで、「そうだ結婚式だ」とひらめきました。10年ほど前に何組かここで式を挙げた方がいらっしゃって、故郷のようにお越しくださいますし、来られない方でも年賀状をいただきます。関係性が繋がっていくから、ウェディングっていいなと思って。先日大学生とコラボレーションして「冬のウェディング」というPVを作ってみました。いずれ実現させたい取り組みですね。
– 一休.comでは、「こころに贅沢させよう」をキーワードにしています。久保様の考える「こころの贅沢」とは何でしょうか?

子供の頃は、好きな空間で過ごす事でした。旅館の大屋根があって、そこに布団敷いて昼寝するの。最高でしたよ。光が差し込む中、張り詰めた空気と自然の音はなんとも言えない時間でした。大人になった今は、空間よりも大切な人といる事が最も重要であり
その人と過ごす時間こそ、心の贅沢だと思います。
その時間が、かけがえのないのもである事に気づくきっかけとして、当館がお役に立てたら幸いです。

『お客様の喜ぶ顔が見たくて』と自らチョコレートを作ってふるまう久保様。「人と人とのつながり」を大事にされているエピソードから、「別邸 仙寿庵」のお客様に対する想いの強さを感じました。
広大な谷川の自然が近くにあるからこそ楽しめる、穏やかで豊かな時間。そしてスタッフの方々が醸し出すあたたかな空気感が、束の間の癒しを与えてくださいました。
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1971年群馬県みなかみ町生まれ。
大学卒業後、大手食品卸会社勤務を経て、家業である旅館業につく。
2001年テレマークスキー世界選手権に出場。
雪国観光圏理事にして新潟、長野、群馬の 三県七市町村を繋ぐ道 スノーカントリートレイルのコースを作成中
西武文理大学 ゲスト講師
趣味はトライアスロンと文具収集
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別邸 仙寿庵
群馬県/谷川












