「秘湯」とは、交通の便が決して良いとは言えないような山奥や大自然の中にひっそりと存在する温泉のこと。日本の原風景や温泉情緒を味わえる秘湯の宿は、温泉好きや旅好きの人々を中心に、わざわざ訪れたい場所として支持されています。
今回は、不便さの中にも快適さを備えた、個性豊かな秘湯の宿を全国から厳選してご紹介いたします。
目 次
1.自然湧出の湯と歴史を重ねた湯処で、秘湯の情緒に浸る
法師温泉長寿館(群馬県/法師温泉)

創業約140年の歴史の中で、多くの文人墨客に愛されてきた「法師温泉長寿館」。上信越高原国立公園内に佇む、秘湯の一軒宿です。明治期のモダンを感じる「本館」と、昭和初期に建てられた純和風の「別館」は、国の登録有形文化財に登録されています。


3つの大浴場の中でも特筆すべきは、宿の名物であり、建築されてから1世紀以上経っている鹿鳴館様式の建物や浴槽が貫禄漂う「法師乃湯」。男女別の脱衣室から入り、湯船は混浴というスタイルも、昔からのまま。浴槽の下に敷き詰めた玉石の間から源泉がポコポコと自然湧出しており、温泉の成分をそのまま肌に感じられます。温度が異なる4つの湯を巡りながら、建築当時の様子に思いを馳せてみては。
法師温泉長寿館
群馬県/法師温泉
2.白樺林に囲まれた秘湯の一軒宿で、硫黄が香る白濁の湯に癒される
白骨温泉 小梨の湯 笹屋(長野県/白骨温泉)


中部山岳国立公園内にある「白骨温泉 小梨の湯 笹屋」は、広大な白樺林に囲まれた秘湯の一軒宿。数寄屋造りや古民家を移築再生した客室の全10室は、どのお部屋からも白樺林が見え、夜にはライトアップした幻想的な景色も楽しめます。

白濁の硫黄泉で、古来より「三日入れば三年風邪をひかない」言われるほど効能高い白骨温泉。なかでもこの宿の源泉は特に香りが強く、硫黄の香りが充満した内湯は、硫黄の温泉好きな方にも好評です。湯船の周りに見られる淵模様もまた、秘湯の雰囲気を高めてくれます。内湯はガラス戸が開閉式になっており、暖かい時期は半露天風呂に、秋冬にはガラス越しに紅葉や雪景色を眺めながら白骨の名湯を堪能できます。
白骨温泉 小梨の湯 笹屋
長野県/白骨温泉
3.稀少な“目の温泉”と昔ながらの入浴法を守り続ける秘湯の一軒宿
目の温泉 奥湯沢 貝掛温泉(新潟県/越後湯沢 貝掛)

開湯約700年もの歴史を持つ貝掛温泉。戦国時代は上杉謙信公将兵の隠れ湯として、江戸時代からは「目の温泉」として多くの人々に親しまれてきた秘湯です。「目の温泉 奥湯沢 貝掛温泉」は、山木と渓流に周囲を囲まれた奥湯沢の一軒宿で、近隣にはコンビニもお店もありません。


“目を湯で洗う湯治”は、昭和初期まで「貝掛の目薬」が生産・販売されていたという貝掛温泉ならでは。約37度の「ぬる湯」の湯口から湯をすくい、目を浸したら、1~2分まぶたの開け閉めを繰り返すのがおすすめです。ぬるい風呂に30~70分ほど入り、上がり湯として熱い風呂にサッと入って温まるという「長湯」もまた、昔から守られている入浴法です。
目の温泉 奥湯沢 貝掛温泉
新潟県/越後湯沢 貝掛
4.古き良き湯治場の情緒と山陰最古の温泉に寛ぐ、創業130年の老舗宿
岩井温泉 岩井屋(鳥取県/岩井温泉)

約1200年前に開湯し、山陰最古の湯と言われる岩井温泉。湯治場として栄え、柄杓で頭から湯を「かむる」ことに由来した独自の入浴法「ゆかむり」が今もなお残されています。
「岩井温泉 岩井屋」は、そんな歴史ある温泉地で約130年続く老舗宿。湯治場情緒を留める木造りの佇まい。民芸家具が飾られた畳敷の館内には、お香の匂いが漂い、懐かしい旅籠の雰囲気を感じられます。


温泉は、自然湧出の天然掛け流しの含芒硝石膏温泉。大浴場、露天風呂、貸切風呂の趣の異なる湯船で楽しむことができ、宿名物の「源泉長寿の湯」は、直立しても胸まで浸かる深い浴槽が特徴。湯底に敷いた松板の下から湧く温泉を直に感じながら、古き良き温泉情緒に癒されて。
岩井温泉 岩井屋
鳥取県/岩井温泉
5.日本三大秘境の自然と秘湯の癒しを谷底の露天風呂で満喫
和の宿 ホテル祖谷温泉(徳島県/祖谷渓)

「和の宿 ホテル祖谷温泉」は、日本三大秘境に数えられる徳島県の祖谷にある一軒宿。祖谷渓の断崖というロケーションを活かし、客室や展望レストランからは、深く切り込んだV字型の渓谷にエメラルドグリーンの川が流れる祖谷渓を見下ろします。


他ではなかなか体験できないこの宿の魅力が、約170メートル下った谷底にある露天風呂。パノラマの景色を傍らに、傾斜42度もある断崖をケーブルカーでゆっくりと下ること約5分。祖谷川にせり出すように設けられた男女別の露天風呂には、湯量豊富な温泉が自噴しています。白い湯の花が浮いた白濁の湯は、まさに源泉の証。川音をBGMに湯に浸かれば、自然の力を全身で感じられることでしょう。
和の宿 ホテル祖谷温泉
徳島県/祖谷渓
6.田舎の風情が漂う全室露天風呂付の離れ宿で温泉三昧
山あいの宿 喜安屋(大分県/筋湯温泉)

大分県九重町、標高1,000メートルの高地にある筋湯温泉街から少し離れた場所に立つ「山あいの宿 喜安屋」。雑木林の中に点在する全10室の客室は、温かな風合いの土壁と黒塗りの板塀が古民家を彷彿とさせる離れの造り。どのお部屋にも、様々な趣向を凝らした露天風呂が備えられています。


この宿の温泉は、清らかに澄み切ったナトリウム-塩化物泉。なめらかな肌触りの泉質に加え、湯船のみならずお部屋の暖房にも使われているほどの豊富な湯量も自慢です。「お風呂棟」にある内風呂付の露天風呂、林の風景を見ながら湯浴みができる貸切露天風呂、家族湯は全て源泉掛け流し。自然の中に身を置き、温泉三昧のゆったりとした時間を過ごしてみては。
山あいの宿 喜安屋
大分県/筋湯温泉
今回は全国にある、個性豊かな秘湯の温泉宿をご紹介しました。
手付かずの自然に囲まれた秘湯の宿で、日本の原風景や温泉情緒をしみじみと味わいましょう。












