その宿に泊まること自体が旅の目的になる……。そんな素晴らしい宿が、日本にはたくさんあります。その中でも、様々なメディアで人気を集めているのが、有名建築家が手掛けた宿。“建築家の作品に泊まる”というそこでしかできない特別な体験が叶うと、建築ファンだけでなく、幅広い層から注目されています。
今回は、有名建築家が手掛けた宿の中から、故・渡辺明氏、隈研吾氏、坂茂氏、故・遠藤新氏が設計した宿をご紹介いたします
目 次
【渡辺明氏が手掛けた宿】
渡辺明氏設計の歴史あるホテルがリニューアルオープン
沼津倶楽部(ぬまづくらぶ)(静岡県/沼津市)

壮麗な富士山と駿河湾を望む、東海道随一の景勝地・千本松原。その閑静な場所に立つ「沼津倶楽部(ぬまづくらぶ)」は、約110年の歴史を持つ数寄屋造りの建物と、建築家・渡辺明氏の設計による水盤に面した宿泊棟からなる宿です。2023年6月に、スイートルームを含む全8室の客室とレストランを一新し、リニューアルオープンしました。

3,000坪の敷地内に立つ宿泊棟は、木と土といった自然由来の素材を使用。日本の伝統的な建築を受け継ぎながらも現代的な“和”を表現した渡辺氏の意匠が、建物全体の調和を作り出しています。

おすすめの客室は、松林の景色を一望できるバルコニーと専用露天風呂を備えた「沼津スイート」です。洗練された設えのお部屋と眼下に望む庭園の景色は、まさに和と洋、モダンとクラッシックの融合。滞在を通じ、自然との一体感を生み出す建築美を存分に味わえるはず。
沼津倶楽部
静岡県/沼津市
【坂茂氏が手掛けた宿】
坂茂氏設計のアート作品のような海辺のヴィラに泊まる体験
Simose Art Garden Villa(広島県/大竹市)

2023年4月、広島・大竹市に開業したヴィラとレストラン、敷地内の美術館が一体となったアート・オーベルジュ「Simose Art Garden Villa」。木立に囲まれた「森のヴィラ」と水盤に面した「水辺のヴィラ」、それぞれのエリアにある10棟の設計を手掛けたのは、世界的建築家・坂茂氏です。

坂氏の建築を象徴する「紙管」を配した「紙の家」や木漏れ日のような光が注ぎ込む「キールステックの家」など、1つのアート作品でもある個性豊かなヴィラに宿泊できるのは、何とも贅沢。“海辺の建築作品に泊まる”というコンセプトの通り、瀬戸内海の風景とも調和した建築の意匠を味わえる、特別な滞在となるでしょう。

夕朝食やフリーラウンジでの飲食、東西の工芸・絵画作品を展示する下瀬美術館の入館チケットなどは、全てオールインクルーシブ。夕食はオーシャンビューのレストラン「OZAWA」で、地元の幸や有機野菜を使った身体に優しいフレンチをいただきましょう。
Simose Art Garden Villa
広島県/大竹市
【隈研吾氏が手掛けた宿】
隈研吾氏設計のゼロエネルギーホテルで、愛媛の魅力を感じる
ITOMACHI HOTEL 0(愛媛県/西条市)

“水の都”ともいわれる愛媛・西条市。2023年5月、この地で日本初のゼロエネルギーホテル「ITOMACHI HOTEL 0」が開業しました。2棟に分かれた建物の設計を担当したのは、日本を代表する建築家・隈研吾氏。石鎚の山並みをモチーフにした大屋根をはじめ、愛媛の自然の豊かさを感じさせる意匠が随所に凝らされています。

客室は全57室。このうち「HOTELタイプ」は、愛媛で採れる自然石の1つで青々とした色と模様が特徴的な「伊予青石」の色味をモチーフにしています。また、旅館を現代的に解釈したという離れ形式の「VILLAタイプ」では、温泉露天風呂に癒されつつ、プライベートな滞在が可能です。

自然にちなんだデザインの建物で寛ぎ、併設のカフェで地元の食材にこだわった料理をいただけば、愛媛の魅力を五感で感じられるでしょう。
ITOMACHI HOTEL 0
愛媛県/西条市
世界遺産に囲まれた地に、隈研吾氏が手掛ける古今融合のホテルが誕生
紫翠 ラグジュアリーコレクションホテル 奈良(奈良県/奈良市)

奈良、と聞けば真っ先に思い浮かぶような春日大社や興福寺、東大寺などの世界遺産。2023年8月、これらに囲まれた名勝地・奈良公園の西端に「紫翠 ラグジュアリーコレクションホテル 奈良」が誕生します。

設計を手掛けたのは建築家・隈研吾氏。約9,000坪の敷地内にある8棟の建物のうち、ホテルメイン棟のレストランは大正時代に建てられた「奈良県知事公舎」をリノベーションした古今融合の空間です。

全43室の客室には、奈良の伝統工芸を活かしたデザインが施されており、窓から望む庭園の緑と相まって和の風情を醸し出します。天然温泉を楽しめる「ジュニアスイートルーム(温泉露天風呂付)」などの客室なら、周囲を囲む自然を愛でながらの湯浴みが叶うでしょう。伝統の息遣いを感じるゆとりある空間で羽を伸ばし、旅の疲れを癒してみては。
紫翠 ラグジュアリーコレクションホテル 奈良
奈良県/奈良市
【巨匠フランク・ロイド・ライトの弟子・遠藤新氏が手掛けた宿】
遠藤新氏が手掛けた、登録有形文化財の邸宅に泊まる贅沢
国登録有形文化財 葉山加地邸(神奈川県/三浦郡)

「旧帝国ホテル」の設計で知られるアメリカの建築家、フランク・ロイド・ライトの弟子・遠藤新氏が1928年に設計した「旧加地邸」。リノベーションを経て、2020年11月に1日1組限定の宿泊施設「国登録有形文化財 葉山加地邸」として生まれ変わりました。

建物は、地下1階、地上2階建て。大谷石のアプローチから玄関に入り、エントランスホールを抜けると「加地邸」自慢のリビングサロンがゲストを迎えます。サロンは竣工当時の趣を強く残しており、フランク・ロイド・ライトの哲学を継承した遠藤新建築の妙が特に現れたスペースです。

地下のバスルームは、当時の梁を残したまま日の光が注がれる吹き抜けの空間となるよう、建築家・神谷修平氏率いる「カミヤアーキテクツ」が改修を施しました。かつての邸宅の意匠を受け継ぎつつ、快適な滞在が叶う施設で、歴史を感じる時間を過ごしてみませんか。
国登録有形文化財 葉山加地邸
神奈川県/三浦郡
今回は、有名建築家が手掛けた宿の中から、渡辺明氏、隈研吾氏、坂茂氏、遠藤新氏が設計した宿をご紹介しました。“建築家の作品に泊まる”という、そこでしかできない特別な体験は、旅をより思い出深いものにしてくれることでしょう。












