日本を代表する修善寺の温泉旅館「あさば」。534年続く歴史の中で培われた優美な自然の風景、凛とした佇まいと細やかなおもてなしで多くの客人を魅了します。2022年にはゲストがゆったりと過ごせる「サロン」が誕生!居心地の良さを追求した上質な客室と共にご紹介します。
目 次
「上質」という言葉が似合う宿

修善寺の桂川沿い。表通りから1本中に入った石畳の細い道に佇む「あさば」は、浅羽弥九郎幸忠氏が開いた宿坊に端を発します。厳格な審査をクリアしたレストラン、ホテルのみが加盟できる権威ある会員組織「ルレ・エ・シャトー」の宿としても知られています。
門をくぐった瞬間から、凛とした空気に満ちている様子に気づくことでしょう。


靴を脱いで中に入ると最初に感動するのがロビー。窓越しに見える悠然とした能舞台に圧倒されます。
旧大聖寺藩主、前田利鬯子爵より寄進された能舞台「月桂殿」。あふれる緑の山々に抱かれ、600坪の池へと橋懸かりをのばす幻想的な姿は、時間を忘れて見入ってしまうほど。名だたる芸術家による能、狂言などの公演が催される「修善寺藝術紀行」が開催される夜に、いつか泊まってみたいものです。

ロビーの壁には、韓国に生まれ日本を拠点に活動する、世界的な美術家・李禹煥氏の作品が掲げられています。

庭の木々や水音、鳥の声などが自然のBGMとして流れる静謐な空間。
チェックインやチェックアウトの前後に、ロビーで同行者とゆっくり対話される方を見かけ、憩いのスペースとなっています。


ロビーの一角には売店があり、宿で使用されている浴衣や純銀の鍋などオリジナルグッズやガラス、漆器などがセレクトショップのように並びます。一流品を使って客人をもてなしていることが、置かれている商品からも推察できることでしょう。
居心地の良い「サロン」にて、優美な自然と共に寛ぎの時間を

「あさば」では、定期的に宿の改修を行い、元来ある宿の風情に調和する現代的な要素を取り入れ、居心地の良さを追求しています。2022年5月には、宿泊客がくつろぐスペースとしてサロンがお目見え。

入口には現代美術家・宮島達男氏のLEDデジタル・カウンターを使用した作品が飾られています。

足を踏み入れた瞬間、清廉なる白い空間に目を奪われることでしょう。一定の間隔でソファが配置され、人との距離を意識せずに過ごせる設計。

水辺のウッドデッキは能舞台や池を望む特等席。彫刻家ハリー・ベルトイア氏の名作ダイヤモンドチェアが置かれています。

デッキ部分を横に進むと雄々しい岩肌の地層を間近に見る秘密の場所が。今回、改装したことで新しい見どころができました。

サロンにはアートギャラリーのように、それとなく展示された名作が点在しています。壁の奥に3つ並んだ小窓のようなものがありますが、こちらは李禹煥氏の手によるもの。

近づいてみると、ガラスが壁を貫通していて、先ほどご紹介した地層を部屋から見ることができます。部屋の中にいても自然を感じる空間作りの工夫ということですが、それを叶えるために唯一無二の作品が埋め込まれていることに驚きました!

奥の壁には、パブロ・ピカソの作品が飾られています。

入口を入ってすぐの壁には、フランスのアーティストであるダニエル・ビュラン氏のアイコンとも言うべきストライプ柄の作品が並んでいます。

一角にはアートブックや日本の文化にまつわる書籍が並び、ライブラリーのようになっていました。

お茶や自家製ブレンドのコーヒー、紅茶などが置かれ、自由にいただくことができます。また、シャンパンやビールなども注文できるので、夕暮れや食後に憩いの時間を過ごす方が多いそう。
洗練された客室の設えに魅せられる

長い歴史がありながら、清潔感に溢れ、どこか真新しさが感じられる館内。畳敷きの廊下を歩き、客室へと向かいます。
今回ご紹介するのは、2019年に離れの一棟を一から建て替えた「【はなれ天鼓】特別室 源泉かけ流し露天風呂・内風呂付」。宿泊客のみが立ち入れる特別感あふれるお部屋です。

220平米の広さを誇り、本間とベッドルーム、さらにテラスと源泉掛け流しの露天風呂・内風呂が備わります。聚楽壁や吉野杉の天井からは和の趣や風情を感じられ、格調の高さが伝わってくることでしょう。

小川のせせらぎを耳にしていると、まるで別世界へと誘われるよう。この庭も宿泊者だけが目にでき、特別感があります。

特注のツインベッドが備わる寝室には、「Bang&Olufsen」のスタイリッシュなテレビが置かれ、モダンな雰囲気を醸し出しています。


和の設えになっているウォークインクローゼットは、スーツケースを広げても余裕なほど。


「あさば」初の客室露天風呂からは、源泉掛け流しの温泉が常に溢れています。弘法大師由来の滑らかな湯に浸かり、庭園美を愛でる忘れられない時間を過ごせることでしょう。

洗面台はダブルシンクになっていて、ゆとりのあるスペース。

バスアメニティは、イギリスコッツウォルズ生まれのオーガニックブランド「バンフォード」が用意されていました。

湯浴みを堪能した後は、テラスや広縁で寛ぎながら鳥のさえずりに耳を傾ける贅沢な滞在が叶います。
出汁の美味さを味わう丁寧な料理

「あさば」の滞在において楽しみの一つが、夕朝食共にお部屋でいただくお食事。富士山の南側に広がる美しい駿河湾で揚がる新鮮な魚介に、飼料や環境にこだわり、美しい自然の中で育った天城山麓の軍鶏や黒豚、選び抜かれた地元・伊豆の伝統野菜や山葵をはじめとする食材がふんだんに使われています。

名物の「穴子黒米寿司」は、甘く柔らかな穴子と黒米ならではの食感が合わさり、絶品。調味料もすべて伝統製法で作られた無添加のものを使い、豊かな自然の恵みを活かした「地産地消」の料理を堪能しましょう。

朝食は自家製の風干しの干物と出来立てのだし巻き卵、山葵と削りたての鰹節をたっぷりかけた炊きたてご飯をはじめとする、日本固有の伝統的な朝ごはんがいただけます。
こだわり抜いた素材を用い丁寧に作られた料理は、歴史と共に培われた技術を感じられる美味しさ。

夕食前や朝食の前後に楽しみたいのが、竹林と池を望みながら四季の変化を感じられる野天風呂。時間により男女入れ替え制なので、源泉掛け流しの修善寺の湯を楽しんでみては。

日本の美しい四季の風情を五感で感じられる「あさば」。今回ご紹介したサロンに加え、2023年には一部客室にもお手直しをする予定とのこと。宿泊客にとって常に居心地の良い空間を追求するために、常に建物や設えを改装し、細やかなおもてなしを心がけているそうです。日本旅館ならではの伝統文化を大事にしつつ、風景と一体化する美の空間を取り入れることで、現代的な文化ともシームレスに共存する。その包容力こそ、「あさば」ならではの世界観なのではないでしょうか。
あさば
静岡県/修善寺












