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マッキー牧元選書「あの人の本箱」を解説!本と共に泊まる「箱根本箱」
コラム

マッキー牧元選書「あの人の本箱」を解説!本と共に泊まる「箱根本箱」 箱根本箱(神奈川県/箱根)

本には旬がある。以前「【滞在記】マッキー牧元の“宿・食探訪記” 「箱根本箱」お部屋編」という記事で、そう書いた。
表紙や背表紙を見た時、なぜか目が止まる。
その本は、僕がやってくることを待っていたかのように、そこにいるのである。
その瞬間が、旬である。今すぐ手に取って読まなければいけない。
ネットで買うのもいいが旬を逃すので、いざ手元に届いた時には、食指が動かなくなっていることが多く、再び旬が来るまで「ツンドク」になってしまうのである。

その点、ここ「箱根本箱」は、旬を逃さない。館内にある本が、今すぐ読まれるのを待っている。
気になれば手に取り、部屋に持ち帰っても、その場で読んでも良い。気に入ったら購入することもできる。もう本好きにとってはたまらない空間なのである。

さらに良い点は、自分が普段手を出さないジャンルの本がたくさんあることである。僕は仕事柄、食関係の本が圧倒的に多い。
だが今回泊まった時は、「ゴリラと学ぶ」という本にハマった。
霊長類学者でありゴリラ研究の第一人者、京大総長を経て、総合地球環境学研究所の現所長になられた山極寿一氏と、異色の火山学者・鎌田浩毅氏による対談集で、鎌田氏が山極氏にゴリラの生態や人間の行動の発祥などをたずねるという構成になっている。
人類の親戚といわれるゴリラの研究者による対談には、共食や共感、子育てに関する示唆が多くあって、深く考えさせられた。多分本屋やネットでは一生出会うことなかった本だろう。

こうして「箱根本箱」では、視野を広げることができるのである。
様々なジャンルの本が置かれているだけではなく「あの人の本箱」コーナーがあり、文学者、科学者、デザイナー、建築家、学者、ミュージシャンなどの著名人が、選書されている。
僕自身も一昨年依頼があり、光栄にも選ばせていただいた。選んだ本は、以下である。

辛永清氏の「安閑園の食卓」、田辺聖子氏の「春情蛸の足」、リンダ・チヴィテッロ氏の「食と人の歴史大全」、杉森久英氏の「日本料理と天皇」、林明耀氏の「ラーメン食いてぇ!」、ジャック・アタリ氏の「食の歴史 人類はこれまで何を食べてきたのか」、浅野陽氏の「酒呑みの迷い箸」、田代和久氏の「ラ・ブランシュ 田代和久のフランス料理」。

嵐山光三郎氏の「素人包丁記」、入江敦彦氏の「京味深々」、開高健氏の「白いページ」、中江百合氏の「季節を料理する」、長田弘氏の「食卓一期一会」、斉須正雄氏の「調理場という戦場」、スティーブン・レ氏の「食と健康の一億年史」などである。
歴史、科学的考察、社会科学、料理本、エッセイ、小説、漫画、詩集、社会科学など、様々な分野で、食と向き合った本を選んだ。

例えば「春情蛸の足」は、大阪人が愛する、きつねうどんやお好み焼きなどを題にした短編集で、各料理と大阪人との密愛関係が、明晰かつ人情深く描かれている。思わず食べたくなる描写も見事だが、庶民食の立ち位置を、社会学、文化人類学の面からも、考察している点が、たまらない。
先史時代から現代に至る食文化の歴史が詳細に語られる、知の巨人、アタリ氏による「食の歴史」は、食文化だけでなく、歴史に基づいた食の未来予測を提示したビジネス書でもある。また企業や国に対する提言や食事を他人と食べることの大切さにも触れている。

あるいは漫画の「ラーメン食いてえ!」は、荒唐無稽な展開だが、話の芯に愛があり、笑いがあり、家族愛や友情があり、哲学がある。真理をついた味への表現があり、ラーメン屋の真実と批判もあり、料理の深層に触れている。
こういった具合に、食欲とは人間の本能であるとともに、業であり、エロスであり、ユーモアであり、哲学でもあり、恋でもある。

どの本も、料理をする、食べるということへの執着があり、人間として、いや食べることがなによりも好きな僕にとっての道標となる聖書である。
同時に、飛び込んでくる言葉は、人生のお守りである。食べることに興味がある方は、ぜひ読んでほしい。
いや普段、食べ物や料理の本など手にしない人こそ「手に取って」と本に呼びかけられたら、ぜひその機会を得てほしい。

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箱根本箱

神奈川県/箱根

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