「露天風呂付客室」や「プライベートプール」など、旅好きな一休.comユーザーからの人気が高いキーワードは色々ありますが、ここ最近特に人気が高まっているのが「オーベルジュ」。今回は、2020年度の一休.comクチコミ高評価ランキングにて、中日本のリゾートホテル部門1位を獲得された「オーベルジュテラ」をご紹介いたします。

お話を伺ったのは、オーナーの寺澤宣法氏と、シェフの寺澤沙弥果氏。ご夫婦でもあるお二人が考えるオーベルジュの魅力から、料理へのこだわりなど、たっぷりと語っていただきました。
目 次
1.「オーベルジュテラ」誕生のきっかけ
- 蓼科で約20年間親しまれてきた「オーベルジュ ドゥ シェ・マリー」さんを引き継いで2019年1月にオープンされたそうですが、出会いのきっかけについてお聞かせください。

(宣法オーナー)
初めて「オーベルジュ ドゥ シェ・マリー」を訪れたのは20歳の頃で、ドライブで蓼科へ来ていました。当時の僕はフレンチには全く興味が無く、たまたま旅行雑誌で「オーベルジュ ドゥ シェ・マリー」を見付けました。
その後も通うようになり、当時のオーナーだった石井さんと仲良くなったのは、共通の趣味(車)が分かってからです。石井さんと仲良くなってフレンチやワインのことを教えてもらい、そこから興味を持つようになりました。奥さんと知り合ったのもフレンチやワインがきっかけです。
結婚後は、神奈川の相模原でビストロをやろうと考えていましたが、奥さんの妊娠・出産があって叶いませんでした。
そんな時に石井さんから、限界集落と言われていた高知県大豊町にある山荘のレストランでの仕事の話をいただきました。最初はお断りしたのですが、シェフが急に辞めることになってしまい、奥さんがピンチヒッターとして生まれてすぐの子供を連れて高知に行くことになりました。
実は前々から、「オーベルジュをやらないか」と打診いただいていたのを断り続けていたんですが、高知で山荘の立ち上げのお手伝いをしていくうちに、「こういった仕事も悪くないな」と腹をくくることができました。2年くらい山荘をやるつもりだったんですが、石井さんが病気になり、「オーベルジュ ドゥ シェ・マリー」が閉館の危機に瀕してしまったので、2018年の春に物件を購入して現在に至っています。
2.「オーベルジュテラ」が考えるオーベルジュの魅力
-オーベルジュは一般的に「宿泊施設があるレストラン」と言われていますが、お二人が「オーベルジュ」を一言で説明するとしたら何でしょうか?

(沙弥果シェフ)
「もうひとつのお家」ですね。リピーターのお客様も多いので、好みの味付けや食材を考えながら、毎回違うメニューをお出しするようにしています。蓼科にあるもうひとつのお家にいる、専属のシェフのような存在でありたいと思っています。

(宣法オーナー)
あとは、「地域の発見」です。八ヶ岳エリア自体が食材庫みたいなもので、海の魚にこだわらなければ、前菜からデザートまで、半径20~30キロメートル圏内で殆どの食材をまかなうことができます。その魅力をお客様にお伝えするのが僕らの仕事です。「オーベルジュテラ」という滞在型のレストランでの体験を通じて、地域にどれだけ興味を持ってもらえるかが重要なので、お客様の地元に無いものを見付けるきっかけになれたらと思っています。
3.「オーベルジュテラ」の料理の特徴とこだわり
-「オーベルジュテラ」の、料理へのこだわりを教えてください。

(宣法オーナー)
都心からのお客様が多いですが、食材は、華美なもの、豪華なものはご希望されない方が多い印象です。ここでは畑から朝採れの野菜をご用意できるので、それらをなるべく手をかけず、食べ疲れない料理にすることを心掛けています。うちのシェフは、素材を活かした料理が上手なので、お客様からも好評いただいています。

(沙弥果シェフ)
地元の美味しい野菜をたくさん使っているので、畑でかじった野菜の味をそのまま感じられるような料理を意識しています。火を入れたり味付けをしたり、ちゃんと手は加えますが、せっかく野菜が美味しい場所に来ていただいているので、野菜の旨みや新鮮さを感じられることを大事にしています。
-地元の食材で、いま注目されているものはありますでしょうか?

(宣法オーナー)
料理を通して未知なる食材との出会いも楽しんでいただきたいので、牛肉は「信州白樺若牛」を使っています。長野県産の新しいブランド牛で、赤身が美味しいお肉なんです。
“地産地消”がコンセプトですが、あえてフランスから鴨を仕入れることもあります。なぜかというと、地元のリンゴやフルーツを使ったソースは、豚や牛でも良いですが、ベストではないんです。地元のリンゴをデザート以外の方法で美味しく食べてもらうことを考えると、最高の組み合わせはやっぱり鴨なので、鴨はよく使っています。
-リンゴをより美味しく食べてもらうために鴨を取り入れるという考え方は目から鱗でした!地元食材へのリスペクトを感じられますね。
(宣法オーナー)
逆に、ジビエは基本的にやっていません。リクエストがあれば作りますが、「この場所ならでは」「オーベルジュテラならでは」の食材や味わいを大事にしたいですからね。地元の牛をメインに白馬豚や鴨などを使っています。

長野には海が無いので魚は川魚が中心でしたが、信州サーモンや、最近ではチョウザメの養殖が近所で始まって、八ヶ岳エリアだけでだいぶ魚をまかなえるようになってきました。そういった食材を使った料理をお出しすると、お客様の気付きのきっかけになるのではと思います。チョウザメはまさにそうですね。
-そのチョウザメは、どのようなお料理になったのでしょうか?

(沙弥果シェフ)
最近では、前菜としてお出ししています。サメと信州サーモンを重ねて紅白にして、ジャガイモ、玉ねぎ、地元のキュウリを千切りにしたものを巻いて、サラダ感覚でさっぱりと食べられます。ソースは、安曇野のわさびと生クリームを合わせたものです。骨は軟骨なので、煮込んでしまえば全部無くなってしまうのですが、表面がヌメヌメしているため、最初は捌くのが大変でした。捌く前の原型の写真をお客様にお見せすると、見た目のインパクトと大きさに、かなり驚かれますね。
-ここに来て初めて食べる食材があるというのは、特別感がありますし、大きな楽しみになりますね。
(沙弥果シェフ)
ここならではの食材もそうですが、お客様との会話で「こういう食材が好き」という事をお聞きすると、早速それを取り入れた料理を作りたくなってしまうんです。
そのお客様が他で食べたものとは違う料理にしてお出しすると、喜んでいただけるので、反応を見るのが楽しくて、新しい食材を使って、いつもと違う料理を作ってしまうんです。
-まさに「専属のシェフ」ですね!お客様のために考えられた新しい料理がお客様の満足に繋がるという素敵な連鎖が、「オーベルジュテラ」さんのファンを生んでいるのですね。

(宣法オーナー)
数ある宿の中から選んでいただくことを考えると、小ささを活かしてお客様に寄り添ったおもてなしができるのが、僕たちの強みだと思っています。恐らく、ここまでお客様に寄り添っている施設は他には無いので、お客様が他の宿に行かれたとしても、「オーベルジュテラも良かったな」と思い出してもらえるのではと思います。
料理の話から逸れますが、僕の中で二人組の「究極のスタイル」は、ミュージシャンの「B’z」です。ギターとボーカルだけの最小の二人だけでも、バンドメンバーなどを交えてもライブもやっていて、その感じがいいなと思うんです。
僕らも基本は二人だけど、生産者さんや、たくさんの個性的で魅力的な人たちの力をお借りして、たまにはリピーター様も巻き込んでやらせてもらっています(笑)。二人だからこそ、関わってくれる皆様の良さも活かすことができて、臨機応変に色々なことが実現できるので、最強の二人です。
-生産者さんとは、どのようなコミュニケーションを取られているのでしょうか?

(宣法オーナー)
「自由農園」という産直市場と仲良くさせてもらっていて、よく連絡を取っています。最初は地元の信金さんに紹介してもらった農家さんや、自分で調べた農家さんを回っていましたが、決めかねてしまったので、プロにお任せすることにしました。買い物に行って情報交換をしながら、直接繋げてもらえる生産者さんがいれば繋げてもらう、という感じです。

(沙弥果シェフ)
お肉は、私がお肉屋さんから買っています。「こういうお肉が欲しいのだけど」と相談したり、地元で推しているお肉を聞いたりして、実際に使ってみて良かったものを選んでいます。
私自身がまだ深く知らない食材もあるので、プロの方から情報をもらって、そこからメニューを考えていますね。
冬は食材が少ないので、地元だけでなく各地から食材を取り寄せることもしています。“地産地消”がコンセプトですが、僕たち自身が日本各地を食べ歩いて見付けた地方の食材や、その時に繋がった生産者さんのつてで色々仕入れてみて、新しい料理を作るのも面白いと思うんですよね。
-クチコミを拝見したところ、ワインのペアリングも好評ですね!

(宣法オーナー)
珍しいワインや高級なワインを揃えている訳ではなくて、お客様に合わせたワイン、料理を出そうと常に心掛けています。
変な誤解をしないでほしいのですが、ペアリングのポイントのひとつは、お客様を洗脳すること。お客様との信頼関係があれば、そんなに失敗することはないんです。

例えば、ワインを一口飲んだお客様に「このワインは甘みが強くて……」とご説明すると、人の脳は味わいの中に甘みを探そうとします。
もちろん、そこに行き着くためには関係性が重要なので、お客様の嗜好や、普段どんなお酒を飲んでいるかをしっかりとヒアリングしています。僕自身は博物館の学芸員のようなもので、関係が築けているお客様は、私の説明を信用してくれます。それが結果として、ペアリングの満足に繋がっているのだと思います。なので、ワインが好きな人にマニアックなワインを出す時は、出し甲斐がありますね。表情や反応を見ていると、「美味しいな」と感じたスイッチが入るのが分かりますからね!
-お料理だけでなく、ペアリングまでもお客様に合わせていらっしゃるのですね!

(宣法オーナー)
同じ日本人でも出身地によって味覚が全然違って、特に東北と西日本の違いは大きいです。例えば、京都の「からい」と、東北の「しょっぱい」という言葉を比べると、塩分濃度では東北地方の方が、はるかに高いです。なので、赤ワインなら濃いめのボルドーやニューワールドのような、ガツンとしたタンニンを感じられるようなもの、西日本の方は薄口が好まれるので、ピノ・ノワールや香りを楽しむようなもの、と、お客様にヒアリングして出すものを決めています。
でも最近は、お酒が弱い方や、あまりお酒を飲まない方が多いです。
お酒を飲む方には、料理とワインが合わさって複雑みがある味わいを生み出す…… といった味付けが喜ばれますが、お酒をあまり飲まない方には、シンプルな味付けの料理の方が美味しいと感じていただけます。そういった料理の味付けも、ヒアリングした内容をシェフに伝えることで、すぐに反映するようにしています。
-チェックインからディナーまでの限られた時間で味付けに反映できるのは、息が合ったお二人だからこそですね!そういったところにも、「もうひとつのお家」のような心地良さをお客様が感じられるのだと思います。
4.「オーベルジュテラ」を満喫するためのおすすめの過ごし方
-滞在を満喫するための、おすすめの過ごし方を教えてください。


(宣法オーナー)
自然しか無いことが一番の魅力です。春夏秋冬の変化も大きいので、他のエリアでは感じられないものを五感・六感を使って体感していただくのが、醍醐味だと思います。大自然の中で心と体をリフレッシュして、お料理とお酒を楽しんで、お風呂に入って、お部屋で寛いで、ここでしかできない時間を過ごしていただきたいです。


人よりも鹿の方が多いような地域なので、森の中をお散歩していると、人とすれ違うことはほぼありません。都会では難しいと思いますが、ここでは、マスクを少し外して、思い切り深呼吸をしてほしいですね。特にこれからの季節は、ますます人も車も減るので、機械的な音も聞こえなくて、何か聞こえるとすれば、鹿や鳥の鳴き声、風や葉っぱの音くらいですからね。
そして次の日には、「オーベルジュテラ」を拠点に地域と繋がって、蓼科の魅力を感じてもらいたいと思っています。
5.これからの「オーベルジュテラ」が目指すところ
-2022年1月には3周年を迎えられますが、今後挑戦してみたいことがありましたら教えてください。

未就学のお子様連れ限定でお部屋食のプランをやっていて、最近では、休日は子連れプランから予約が埋まるくらい人気になっています。
「子供がいると気軽に外に食べに行けないし、行ったとしても子供が泣かないうちに早く食べて帰ろう」という感じになってしまいます。私たちも同じことを経験したので、できる限りお部屋食のプランを続けて、少しでも多くのお子様連れのお客様に、オーベルジュでの料理とゆっくりとした時間を楽しんでもらいたいなと思っています。
(宣法オーナー)
1泊は子供のため、もう1泊は大人も喜ぶ滞在ができるような連泊の提案ができたら、地域がもっと盛り上がるだろうなと考えています。例えば、近くにある「白樺リゾート 池の平ホテル」は、キャラクタールームがあったり、併設のテーマパークの乗り物はどれも10キロ以下のスピードだったりと、お子様連れに特化しています。僕だけでなく、そこの社長さんやエリア全体として、そういった話をしています。お客様を共有し合って動線づくりができれば、地域全体で幅広い戦略ができますし、お客様も楽しみが増えると思うので、そういったことをみんなでやっていきたいです。

(沙弥果シェフ)
“ここに来れば、この土地ならではの食材や、それを使った料理に出会えて、新しい情報も得られる”というのを目指して、地域ぐるみで盛り上げていきたいですね。「オーベルジュテラ」だけではなく、蓼科で、八ヶ岳で、と広げていきたいですし、その拠点になれたらと思います。
【プロフィール】
寺澤沙弥果(オーベルジュテラ シェフ)
1982年神奈川県相模原生まれ
大学では建築・デザインを学んでいたが、料理の魅力に取りつかれ大学卒業後に専門学校へ進学。都内のカフェ、レストランに勤務の後、調理&食材を学ぶため北海道十勝の「オーベルジュ・コムニ」にてスーシェフを務める。結婚帰京後は様々な料理を経験した後、高知県の山荘でシェフを引き継ぎ、地元の素晴らしい食材や地域の方々の温かさに触れて地方移住に興味を持つ。「オーベルジュテラ」の前身である「オーベルジュ ドゥ シェ・マリー」のオーナーが病に倒れたことをきっかけに、八ヶ岳エリア蓼科での引継ぎ開業を決意。地域の生産者や事業者に助けられ、2019年1月「オーベルジュテラ」としてリニューアルオープン。優しい素材を感じる料理が、多くのリピーターに定評がある。
寺澤宣法(オーベルジュテラ オーナー)
1983年東京都生まれ
幼少時代より、大型トラックに乗る父親に連れられて全国を廻るうちに旅行好き&車好きに。車関係の仕事に携わってきたが、趣味のドライブで訪れた「オーベルジュ ドゥ シェ・マリー」をきっかけに、フレンチとワインの魅力に目覚める。前オーナーの石井氏を通じて飲食業界の人脈が広がり、そのご縁で、妻の沙弥果と出会う。30代目前にサービス業へ転身し、北海道十勝の「オーベルジュ・コムニ」、系列のレストランの立ち上げ、イベントのプランニング等を経験。長男誕生後は子供との時間を過ごしたく再び運送業に従事していたが、高知県にて山荘の立ち上げを経て夫婦でのオーベルジュの経営を目指す。「オーベルジュ ドゥ シェ・マリー」のオーナーが病に倒れたことをきっかけに、物件を購入し、2019年1月「オーベルジュテラ」としてリニューアルオープン。最近の癒しは、リピーター様とご一緒する一杯(いっぱい?)の食後のBARタイム。選ばれ続ける観光地と施設を目指して尽力致します。
【編集後記】
今回インタビューをさせていただいて感じたのは、何よりもお二人の仲の良さ。お互いを信頼し、尊敬し合っているご夫婦だからこそ息の合った連携が取れていて、それが接客や料理などに表れ、お客様の居心地の良さに繋がるのだと思いました。
1日最大3組とは言え、ご夫婦お二人だけで全てを行うことのご苦労は測り知れませんが、伺うエピソードはどれもポジティブで、まさにお話にあった通り「最強の二人」。これからも一休.comユーザーや、多くのお客様を魅了し、蓼科・八ヶ岳エリアの拠点として欠かすことのできない大きな存在となっていかれることでしょう。
オーベルジュテラ
長野県/蓼科中央高原












