FOLLOW一休コンシェルジュをフォロー

FOLLOW一休コンシェルジュをフォロー

訪れる人の心を柔らかくほぐす京の宿
インタビュー

訪れる人の心を柔らかくほぐす京の宿 柊家旅館(京都府/京都)

京都の中心部で、歴史を感じさせる佇まいが印象的な「柊家旅館」。文政元年(1818)創業の、昔ながらの京都の風情が残る老舗の宿として有名です。今回は、六代目女将の西村明美さんに、訪れる人の心を柔らかくほぐすおもてなしの極意についてお聞きしました。

京都三大旅館と名高い「柊家旅館」開業のきっかけ

-いたるところに柊家の屋号の「柊」モチーフが使われていますね。名前の由来をお聞かせください。

もともとの由来は、下鴨神社内の摂社・比良木社を信仰していたことから名前をいただいています。比良木社の横にはなぜか柊の木が自生していて、初代は屋号を「柊屋(ひらぎや)」と致しました。我が家に帰ってきたように寛いでいただきたいというお客様への想いで明治時代に屋を家に変え「柊家(ひらぎや)」とし、現在は読み方も“ひらぎや”から“ひいらぎや”に致しました。柊の葉はずっと私共の印の木なので、柊の柄を室内の色々な所にあしらっています。

「柊家旅館」開業のきっかけについて教えてください。

元若州向笠の脇坂候の臣下でその後庄屋をしていた初代が、当時の都、京都に憧れを持って出てきたのが、文政元年(1818)。初代は京都の海産物を商いながら、長い距離や時間をかけていらした方や知り合いの方に、宿を提供していました。
中京区の辺りは画壇や刀師などが街中にいらっしゃったので、2代目は絵心や刀の鍔の技術を習うなど、趣味に没頭していたそうです。宿を本業にしたのはその当時からになります。

温故知新の心で一人一人に寄り添う「柊家旅館」の魅力

-海外のお客様も非常に増えている中、一人一人に合わせたおもてなしで気を付けてらっしゃることはありますか?

もともと京都は早くから国際観光都市といわれてきました。
大正、その当時から海外の方への対応は比較的早くからしていましたが、比率と人数が昔と全く違います。
インターネットでは、限られた部屋の情報しか説明が難しいのが現実です。ホームページでのご予約の段階から、メールで家族構成を伺ったり、観光手配や依頼にお応えしています。今は半数以上、55%~60%近くが海外の方。時には99%の日もあるんですよ。

我が家に帰ったように寛いでいただきたいというのが私たちの理念ですので、海外の方が多くなっても、来ていただく全ての方に、安らぎを感じて過ごしていただきたいと思っています。
一方で外国の方の比率が高いと日本のお客様が違和感を覚えられるので、全体の雰囲気も守っていかなくてはいけないとも考えています。

観光は、地域を大切にするというのが基本ではないでしょうか。観光客に合わせた結果、地域の風情が無くなると方向性が違ってきてしまいます。
大きな視点で考えていかなくてはならないと思います。

-柊家さんは由緒ある雰囲気を残しながら、モダンな新しい物を取り入れてらっしゃる印象を受けましたが、バランスにも気を付けてらっしゃるのですか?

京都自体、古いものも大事にしますけど、常に未来や次の社会という公的な思いで動いてきた町衆の力が大きい所でもあります。
私共は明治維新の50年前の創業ですので、維新に至るまでに国を動かされた皆さんの「より良い国を作る」という情熱に想いを馳せることがあります。
今の時代、個が大事になりすぎてせっかく地域で大切にしてきたものが、失われていくことが気がかりです。
この新館ができる時に、神主さんから「老木から新芽が芽吹く時に、新芽からは力を、老木からは知恵を」という言葉をいただきました。自然と共にある京の暮らしというのは、常に昔のものを大事にしながら、より良い次の世代へという考え方。
うちもそうですが、昔から何代か続いてらっしゃるお店は、常に革新の伝統や、温故知新という理念を大切にしていらっしゃいます。

-美食の宿としても魅力がありますが、四季折々のお料理をお出しする中で気を付けている点は何でしょうか。

京都には本当に各地域の食材が集まってきます。それにひと手間かけることによって、より深い味わいになる、食材の使い方の文化が凝縮され、洗練されていったのが京都の食文化です。
二十四節気に加え、季節の行事が多い京都ならではの献立など、日本の食文化が時代と共に作り上げてきたものを大事にしています。
京都には和食のいいお店が沢山あるので、敢えてうちで食事をしてもらうというハードルは高いと感じています。

-ここの料理のファンで、食べに来たいからお泊まりに来る方も多いですよね。

お馴染みの方はそう言ってくださいますね。連泊のお客様に懐石を提供する時は、食器を変えて、献立も食材も変えて提供します。
うちで何泊かは食事をし、その他は周りの料理屋さんを決めているという方もいらっしゃいます。

また、お正月は何代も続けて過ごされる方がいらっしゃいます。
1年で一番大切なお正月の献立は、おせちもきちっと決めて大事にしています。

-200年の歴史があるので、調度品のような器も出てくるんでしょうね。器は料理長が選ばれるのですか?それとも女将が見られるのでしょうか?

正月料理等、特別な時の器は蔵から出して来て使います。日常は季節の献立と合わせて調理長と相談しながら選んでいます。昔の食器は殆んどが注文品で、傷んだら修理を頼んだり同じものを買い足したり出来たのですが、今はどんどん作り手が少なくなり補充が難しくなり、一度に多くの数をそろえておく必要があります。

-少し前と現代とで、お客様が求めてくることですとか、何か変ってきたと感じられる部分はありますか?

母が女将であった時はお馴染みさんが多く、家族づきあいのようにさせていただいていました。昔は客室係が、当たり前のように1から10まで、お客様のお世話をしていました。

母や私が店を留守にした時は、八重(編集部注:田口八重さん。28歳で柊家の仲居となり、約60年勤めた。)がいてくれて。八重は自分の目が行き届く間にと、お馴染みさんに私を紹介しながら、自分がいつもしていることを教えてくれました。

『旅館ではまずはお気持ちを察して、言われる前にしてさしあげるのがお客様にとって心地よいこと』。そう、いつも八重が話しておりました。

例えば暑い日なんかに汗をぬぐうのに、タオルをそっとさし出したり、冷たいお茶をお出ししたり。

ただ、海外の方はホテルしかご存知ない方がほとんど。客室係がお部屋の中に入ること自体初めての体験という方も多いです。
自然にお部屋の中でお世話をさせていただく事に、気づかいをさせないことを大事にしています。

-お客様の要望に沿うということは、おもてなしする側が察してさしあげるということですね。

「言われてするのは当たり前、言われる前にしてこそ真のおもてなし」。
思いがけない親切な対応にお客様が喜ばれ、ずっと心に残っていらして、また来ていただく方もいらっしゃいます。
昔から何度もお越しいただくお客様もいらっしゃいますし、新婚旅行の後に、今度は子供たちを連れていらっしゃる方、又新婚以来40年、50年の結婚記念旅行等、結構長い時間を経てまたお越しいただくお客様もいらっしゃいます。
昔の良い思い出を温めてお越しいただいたお客様には、少しでも前回より喜んでいただけるようにという気持ちでおります。
母もできるだけ「お客様にご挨拶する」ことを心がけていました。
お客様によってはそれを望まれない方もいらっしゃるので、悩むところではあります。

旅館というのは、人のぬくもりで心に残る思い出を作る場所ですので、それは自分のところでのご宿泊だけではなくて、ご紹介することも含めておもてなしだと考えています。京都は手配先も多いので、必然的にそういうことに時間がかかってしまうのですけど、それだからこそ信頼して来ていただける。
京都は歴史の舞台になっている所が多く、歴史マニアの方も沢山いらっしゃいますので。

京都という街の魅力、京都の宿の魅力

-京都は周りに沢山の歴史の舞台がありますよね。

玄関にかけられた「来者如歸(らいしゃにょき)」という額は、重野成斎さんの書になります。幕末、西郷さんと同じ時代に同じように島流しにもなった方。本当は切腹を命じられるところ才を惜しまれて、島流しになり、そこで漢文学を読み込まれ後の明治政府でも活躍された方です。
時代の政変があって、今がある京都。その想いを無にしてはいけないな、と。

-京都が持っている文化の力は、改めて守っていきたい魅力ですね。

文化や色々なことの継承を大切にしたいですね。それは、歴史を知りご年配の方を大切にするということですよね。物が豊かになっても、残るのは目に見えない心。思いを込めて作られた物だから、使っていて心地が良かったりするんですよね。今は急速に移り変わる世界だからこそ、何とか先人の大切にしてきた想いなどを大事にしたいと感じます。

女将の言葉から一貫して感じたのは、京都に対する地域愛でした。古都を築いた先人たちが大切にしてきた「温故知新」を、インターネットに慣れ親しんだ現代人にいかに身近に感じてもらうか。古都に思いを馳せる女将の笑顔は、いつまでも継承してほしい京の魅力として輝いていました。

***********************************
西村明美
柊家旅館 六代目女将
1948年京都生まれ。
現在、京都市の「京都観光おもてなし大使」を務め、地域貢献活動に尽力している。
京都の魅力をより多くの方に伝えることを目指し、有志で発足した「みやこ女将の会」では、2001年から2012年まで会長としても活躍。
現在、国際京都学協会理事、京都商工会議所女性会監事。

柊家旅館

柊家旅館

京都府/京都

この記事が気に入ったらシェア!

あわせて読みたい

「憧れの旅館」の人気記事