「山中漆器」をはじめ、伝統工芸が息づく石川・山中温泉に、創業120年を超える老舗温泉旅館があります。「山中温泉 花紫」は、北陸随一の渓谷美を誇る鶴仙渓を間近に望み、いつ訪れても美しい四季の移ろいを体感できる宿。今回は、2024年10月に誕生したアートスイートの客室を中心に取材を行いました。新たな魅力が加わった「山中温泉 花紫」の見どころをご紹介します。
目 次
“伝統を現代に伝える文化サロン”を目指す宿

宿の創業は1902年(明治35年)。前身の「山田屋」は、当時より珍しい内湯を備えた宿として多くの賓客に愛されてきました。現在の宿名「山中温泉 花紫」には、山中温泉が培ってきた文化や地域の美しさを“山紫水明”という言葉で讃え、新たな文化を育み伝えていくという思いが込められているそう。

宿の暖簾をくぐった途端、洗練された現代アートや工芸品が随所に展示されていることに気づくでしょう。

パブリックギャラリーでは、月毎に気鋭の作家の展示会を開催。旅館というスペースを“地域のショールーム”と位置付けることで、地元の若き才能を発信していきたいという思いが伝わってきます。

大きな窓が広がるロビーラウンジからは、加賀の名所の1つである鶴仙渓を見渡すことができます。
現代の感性を取り入れたモダンなアートスイート

客室は全25室。かねてより改装を加えており、この度2024年10月に「アートJr.スイート『夏の3』 露天風呂付 10才未満不可」と「アートスイート『夏の5』 露天風呂&サウナ 10才未満不可」が新たに誕生しました。

「アートJr.スイート『夏の3』 露天風呂付 10才未満不可」は、90平米の広さがあるお部屋。デイベッドとしても重宝しそうな大きなソファが目を引きます。


窓を開けると奥に温泉の露天風呂が備わります。鶴仙渓を眺めながら、のんびりとプライベートな湯浴みを楽しめることでしょう。

洗い場は露天風呂とドアで行き来ができるようになっており、シックな黒のタイル張りで、広々としています。

洗面スペースはホテルライクなダブルベイシン。こちらもシックな印象です。


奥には広くスペースが取られたウォークインクローゼット。棚の上には、男性用と女性用で柄の異なる浴衣が2枚ずつ用意されています。お出かけ用の籠バッグもありました。

リビングスペースの隣にはシモンズ社製のツインベッドが備わるベッドルームとなっています。大きめのデスクスペースもあるのでワーケーションに重宝しそうですね。

客室内のインテリアには、地元ゆかりの現代アーティストの作品が置かれています。特に目を引くのは、金沢を拠点に活動しているガラス作家の佐々木類氏による植物をかたどったガラスアート。繊細な作品で、思わず見入ってしまいました。

続いて「アートスイート『夏の5』 露天風呂&サウナ 10才未満不可」へ。

こちらは4名まで宿泊できます。小上がりのような副室が用意されていて、より広々とした空間となっているのが特徴。

リビングルームには大きなローテーブルを囲むようにソファが置かれ、窓際にはベッドが備わります。

2面の窓から鶴仙渓を眼下に望む、見晴らしの良い空間。写真を撮っているだけでウキウキしました。

このお部屋には、定員4名のプライベートサウナがあります。両側に座るスペースが確保されていて、かなり広めのサウナでした。サウナストーンに水をかけてロウリュをすることも可能です。

サウナの隣はバスルーム。内風呂と露天風呂が備わり、内風呂は水風呂として利用することもできるそう。

露天風呂の奥にはリクライニングチェアが2つ。外からの心地よい風が吹き、自然と一体になるような感覚が味わえます。サウナ後に横になってリラックスすれば、お部屋でサ活を満喫できることでしょう。

冷蔵庫の飲み物は無料でいただけます。石川ならではの「金沢百万石ペールエール」と「奥能登地サイダー しおサイダー」が用意されていました。
スタイリッシュなダイニングで、伝統と革新を繋ぐ美食を堪能

「山中温泉 花紫」のお食事は、一部部屋食の客室をのぞき「ステイダイニング“にほん”」にていただきます。


和紙作家・堀木エリ子氏のディレクションによる越前和紙の光に照らされた空間は、スタイリッシュさと有機的な柔らかさが共存しています。

窓際の席は、雄大な自然を眺められる特等席。

水引作家・廣瀬由利子氏による「加賀水引」の装飾が施されたスペースは、明るく華やかな印象です。

4名以上から利用できるプライベートダイニング「右近」「左近」では、周りを気にせず過ごすことができます。

この宿独自のお食事プラン「アラカルト懐石」は、季節ごとに異なる約30種類のメニューから、好みの組み合わせを選べる自由度の高いもの。その日の気分や体調によって、食べたいものを決められるのは嬉しいですね。

厳選された季節の食材を軸に、料理長自らが吟味を重ねた「おまかせ懐石」や、11月7日~3月20日までの期間限定でブランドズワイガニ「加能ガニ」を満喫できる「特撰 蟹懐石」のプランもあります。この土地でしか味わえない自然の恵みを楽しみましょう。
露天風呂と内風呂、2つの温泉で山中の湯に癒される

館内には、内風呂が備わる大浴場「春夏秋雪」と渓谷美のパノラマを見渡す露天風呂「ひらひら」があります。まずは大浴場をご紹介しましょう。

広々とした脱衣所には、休憩スペースが用意されていました。

開湯1300年の歴史をもつ山中温泉を、ゆったりと堪能できる広々とした空間。奥にはジャグジーが備わります。泉質はpH8.4の単純温泉(低張性・弱アルカリ性・高温泉)。

続いて最上階に位置する露天風呂「ひらひら」へ。

檜の内風呂と岩の露天風呂があり、こぢんまりとしていますが開放感は抜群。

露天風呂からは、季節や時間ごとに表情が変わる美しい眺めを満喫できます。お部屋の温泉だけでなく、館内の湯巡りもぜひ楽しんでみては。
旅の好奇心を満たす茶房とライブラリー


滞在の合間に立ち寄りたいのが、現代の茶室をイメージした「茶房」。シックな空間で、石川県で栽培された煎茶や茶のカクテル、和のアフタヌーンティーなどがいただけます。

お茶のメニューだけで12種類もあり、どれにしようか迷ってしまうほど。今回は「季節のフレッシュブレンドティー」と「オリジナルブレンドティー(煎)」をいただきました。

「季節のフレッシュブレンドティー」は、チェックイン時のウェルカムドリンクとして提供しているもの。季節によって内容が変わり、今回は秋に訪れたので「菊花」でした。ふんわりと菊の花の香りが鼻孔をくすぐり、ほっこりとした気持ちに。

「オリジナルブレンドティー(煎)」は、石川県打越町の煎茶と、県内のハーブ農園で育てられたスペアミント棒茶とレモンバーベナがブレンドされています。爽やかな風味と清涼感があり、柔らかなハーブティーのような印象を受けました。

「茶房」の奥にはライブラリーがあり、伝統工芸や現代アート、お茶に関する書籍などが並んでいます。

また宿オリジナルグッズなどを取りそろえたショップでは、地元作家さんの器をはじめ「茶房」で供されるお茶など、思わず買って帰りたくなるような品々がずらり。セレクトショップのような雰囲気で、見ているだけでも楽しい気持ちになります。
山中の土地が持つエネルギーに包まれながら、日本文化を礎に現代の感性を伝える「山中温泉 花紫」。洗練された滞在が叶う宿で、知的好奇心を満たす時間を過ごしてみませんか。
山中温泉 花紫
石川県/加賀












