広大な敷地に遮るもののない空。そこに点在する古民家は、訪れたこともない場所なのにどこか懐かしさを感じさせてくれる不思議な魅力があります。最近では、リノベーションを行いカフェやレストラン、ホテルとして活用する取り組みや、ライフスタイルの多様化により地方への移住やスローライフが注目されていることから、以前に比べて古民家を身近に感じる方も多いのではないでしょうか。そんな古民家での暮らしや地域の文化をまずは体験してみたいという方や、夏休みの旅行にもおすすめの、古民家一棟貸しの宿をご紹介いたします。
目 次
絶景に息をのむ秘境の古民家で食を通じて地元を体感する
桃源郷祖谷の山里(徳島県/祖谷)

日本最後の秘境と言われ、平成17年には国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された祖谷 落合集落。徳島県東祖谷のほぼ中央、祖谷川と落合川の合流点から山の斜面に沿って、高低差約390mにも及ぶ急傾斜地に集落を形成しています。江戸中期から昭和初期に建てられた民家や、ひとつひとつ積み上げた石垣、畑が織りなす光景は、懐かしい山村の原風景を見せてくれます。

「桃源郷祖谷の山里」は、失われゆく日本の山里の美しさや伝統を、今にあった形で持続可能なものとして残していこうと、築300年を越える古民家を利用したプロジェクト。東洋文化研究者アレックス・カー氏のプロデュースのもと、建物は古の趣を残しながら、水回り・空調設備・リネンなどは最新のものを完備しています。現代人にとっておいしいところだけを快適に楽しむことができる、古いものと新しいものを融合したスタイルです。

山の最上部に建つ茅葺の古民家は、手つかずの自然に囲まれ、日常の喧騒を忘れさえてくれます。情緒あふれる空間で、ただ自然の風景を眺めることも醍醐味ですが、せっかく祖谷を訪れたのなら地元の生活も体験したいところ。食事の用意はなく自炊が基本となりますが、追加料金で地場産の食材を使った夕食をいただくことも可能です。ケータリングをはじめ、地元のお母さん達が宿に来てくれて一緒に郷土料理を作ったり、落合集落内の一般のご家庭にお邪魔して住民の皆さんと一緒に夕食を作って食べたりするメニューも。一般家庭にお邪魔して夕食をいただくなんて、なかなかできることではありません。

祖谷を代表する農産物であるそばの手打ち体験や、集落を散策するガイドツアーもあるので、もっと祖谷を知りたい方は参加してみるのも良いですね。昔ながらの古民家、自然に囲まれた環境と幻想的な風景。本当に桃源郷に来たかのような感覚を味わえる、特別な時間がここには流れています。村の暮らしに踏み込んでみることで、より濃密な滞在ができるはず。
有形文化財の古民家で職人の想いと伝統建築に触れる
美山FUTON&Breakfast(京都府/美山町)

京都府のほぼ中央に位置し、古き良き日本の原風景が色濃く残る山里、美山町。日本一美しい村とも言われるこの地の中央には、鮎が生息する清流で有名な由良川水系の美山川が流れ、川沿いに立ち並ぶ古い茅葺きの住居が自然景観と見事に調和しています。この景色を一目見たら、田舎のおばあちゃんの家に遊びに来たようなノスタルジックな感覚に浸れることでしょう。

日本でも数少ない茅葺職人が、茅葺きの魅力を自身の感性で体感してもらいたいという想いでプロデュースした「美山FUTON&Breakfast」は、茅葺き民家一棟貸しの宿。築150年、囲炉裏のある古民家が2つと、モダンな洋風のヴィラが1つの全3棟です。一棟貸しの宿には珍しく、最寄り駅の園部駅から事前予約制で無料送迎を利用できるのは、運転に慣れていない方には嬉しいサービスですね。

中でも築150年の本館は国の登録有形文化財に登録されており、文化財での暮らしを貸切で体験できるのが魅力です。1階には大きな囲炉裏があり、実際に調理をすることも可能。2階に上がると、茅葺きの天井裏に梁や柱をダイナミックに感じられる隠れ家のような空間が広がります。
夜にはスポットライトに照らされた美しい木組みが浮かび上がり、思わず見とれてしまうほど。日本文化や古来の建築様式を間近に堪能する贅沢は、この宿ならではの貴重な経験となることでしょう。

朝食は、宿が用意した美山のものにこだわった食材を自由に調理していただく自炊スタイルですが、本館の宿泊者限定で、オーナー自らが調理する美山の名産物を使用した洋朝食をいただけます。お腹がいっぱいになったら、地元の案内人が同行してくれるサイクリングツアーに出掛けてみませんか?(予約制・有料)里山ののどかな風景を眺めながら、ガイドブックには載っていない美山の魅力を体感できます。途中で出会う地元の方との触れ合いも、旅の素敵な思い出になりますね。
限界集落を再生した古民家の宿で里山の一員になる
丹波篠山 古民家の宿 集落丸山(兵庫県/丹波篠山)

「限界集落」という言葉をご存知でしょうか?過疎化・高齢化により働き盛りの人口が減少し高齢者が人口の半分以上となり、社会単位としての存続が危ぶまれている集落のことで、日本国内に現在10,000以上もあると言われています。

集落丸山もその1つ。かつては篠山城下町の水源を守る水守の集落として栄えましたが、平成20年には全12戸のうち7戸が空き家となる危機的状況となりました。その空き家の中から、築150年の古民家3戸をリノベーションして誕生したのが「丹波篠山 古民家の宿 集落丸山」。村を守り存続していくために、普段は農業をしている村人達が皆で協力して宿を運営しています。

里山を背景に、民家のすぐ横に白壁を配した土蔵と古い石垣。集落に今も残っている「日本の暮らし」を体験できる場所にしたいという村人達の想いから、まるで日本の原風景とも言える光景の中に立つ古民家は、水回りを除き、玄関の広い土間、太い梁、薪ストーブ、五右衛門風呂は昔の農家そのもの。新しさと懐かしさが融合した過ごしやすい空間です。

朝食は、ミシュラン1つ星を5年連続で獲得している集落内の蕎麦屋「ろあん松田」監修の元、集落の住民が手作りし出来立てを部屋まで届けてくれます。夕食は付いていませんが、「ろあん松田」、里山フレンチが自慢の「ひわの蔵」と連携したオーベルジュスタイルで、地元の旬の食材を使った豪華な夕食をいただくことも可能。古民家で自炊を楽しむのも良いですが、シェフと会話をしながら地元の味覚をお腹いっぱい味わうことも醍醐味の一つと言えるでしょう。
“変わりゆく中で、変わらないもの”がちゃんとある、集落丸山。近代の都会生活では感じられないものを探しに訪れてみませんか?

初めて訪れたのに懐かしいと感じさせてくれる古民家は、家や村を守る人たちの想いに支えられ、大切に営まれています。このような地元の人たちの想いがあるからこそ、訪れた人が郷愁や、また来たいという感覚を味わえるのかも知れません。都心に生まれ育ち田舎がないという方も、田舎暮らしの魅力を肌で感じられることでしょう。
古き良き日本の文化や生活を、古民家滞在や地元の人たちとの交流を通じて体験する。そんな夏休みを今年は過ごしてみませんか?












