人間の体には 昔、植物だった頃の記憶が 眠っているのかもしれない 天高く幾重にも枝を広げた 巨木だったこと 道端にひっそりと咲く 雑草の花だったこと 空中の水分を吸収して生きる サボテンだったこと 久しぶりに樹木に囲まれていると 体に刻まれた感覚が次々とよみがえり 私は気づいた 荒野にただひとり何百年も生きた孤独が 今の淋しさにつながっているのだと
許 素香 詩・写真