





西村明美 (にしむら あけみ)
1948年、京都府生まれ。ノートルダム女子大学英語英文学科卒業。「柊家」6代目女将。1988年、京都市観光大使 おこしやす京都委員会委員に就任。「みやこ女将の会」会長、「京都商工会議所女性会理事」「国際京都学協会理事」として地域貢献活動に尽力を続けている。
1948年、京都府生まれ。ノートルダム女子大学英語英文学科卒業。「柊家」6代目女将。1988年、京都市観光大使 おこしやす京都委員会委員に就任。「みやこ女将の会」会長、「京都商工会議所女性会理事」「国際京都学協会理事」として地域貢献活動に尽力を続けている。
| 渡辺 | 京都の老舗は、熱海とか湯河原とかの古い旅館と全然違う、崩せないところがいっぱいあると思うね。 |
| 西村 | やっぱり京都というのに期待されて来られる方がほとんどですから。私がひやひやするのは、京都の方が遠来のお客様とご一緒に泊まられたりとか、ご案内されたり、お客様として来られた時に見られるところが違います。京都の人の目に触れる時が一番厳しい。新館ができ上がった時も怖かったですね。 |
| 渡辺 | 新館を作る時、一番気をつけられたことは何ですか? |
| 西村 | 主人が最初に話を出してから完成まで5年ぐらいかかりました。古いところを手直ししてもらいながら、新館の構造に持っていったんです。近くの神主さんにいわれた言葉ですが、「老木から新芽が芽吹くように、お互いに生かし生かし合うもの。老木から知恵をいただきながら、新しく育んでいく」と。これが新館のコンセプトです。新館からエネルギーをもらうような形にしようと思いました。古いものを、決して切り離さないで、一つの館の中で、風の流れのような空間づくりに一番気をつけました。やっぱり自然界と一緒で、いろいろなものをお互いに生かし合いながら、時代と時間をつなげていく。今、対談している部屋は明治年間に作りましたので、天井も高いんです。江戸末期のほうはもっと低いですね。 |
| 渡辺 | たしかに、ここは高い。 |
| 西村 | この時代はステンドグラスがいろいろなところで使われています。家族風呂だったり、部屋のお風呂にも入っているところがあります。明治年間はかなりモダンになっているんです。昔の写真では、家族風呂もアールデコのタイルが使ってあって、ホーローに金属のおけのスタンドがあったりします。京都の街中でも、玄関近くに洋館の応接間があるように。 |
| 渡辺 | 一斉に、西洋にかぶれしてしまった。 |
| 西村 | そうなんですね。そういう時代があって、ドーンと前へ行きすぎぐらいに行っていたのが、次はちょっと後ろに引きすぎになっている。中間のスタンスを持ちながら進むのは難しいですね。 |
| 渡辺 | そういう意味では、柊家の中で江戸そして明治という時代を感じられる。 |
| 西村 | 全時代を泊まり歩かれるお客様もいらっしゃいます。でも、最初に泊まった部屋が一番くつろげるという方も多いです。係もできるだけ同じ人にするようにしていますし、お部屋が変わると、その係がずっと一緒についていって。なじみの宿にくつろぐというか、変わらないものがあることによって落ち着いていただいて、なおかつ何かちょっと新鮮なものを、その中で感じていただくと欲張りなんです。初めての方でも、帰ってきた感覚といいますか、くつろいでいただける場所でありたいんです。 |
| 渡辺 | 部屋を変えて、時代を楽しむ方法もあるんだね。 |
| 西村 | 日本の旅館のような宿泊施設は、海外の文化にはありませんね。昭和初期の本に旅館は人の恩情によって成り立つと書いてあります。人の心について書いてあるというか、人に礼をいわれて祝儀をもらうという女中の項目が。 |
| 渡辺 | そこに本があるの? 見せてもらえる。 |
| 西村 | これもボロボロになっていて、古い本のにおいがしますが、昭和3年発行ですから。 |
| 渡辺 | 『旅館女中読本』ね。ああ、本当だ。いろいろなお客様、商用のため、見物のため。金3円なり。昭和3年とは古い本だ。「敷布、また枕カバーはよく調べ、襟あかのつかぬものを用いよ」と。 |
| 西村 | 親切も度を過ぎるといけないっていう例が書いてあるのが面白くって。たとえば、おぐしをすいて差し上げますという時、「いや、結構です、って客がいっているのに、無理やりそれをすると、実は、中にはげがあって、それが気になっている人もいる」とか。 |
| 渡辺 | 「便所には新聞紙を入れるな。管につかえて困ることあり」。細かい行事作法から書いてある。 |
| 西村 | 十徳の中に書いてありますね。 |
| 渡辺 | 縁なくして、高貴の人を知る。 |
| 西村 | で、最後に礼を。 |
| 渡辺 | 礼をいわれてご祝儀をもらう。祝儀の多寡で待遇を変えるな。 |
| 西村 | 祖母の時代は、宿泊代はそんなに高くなくて、ご祝儀のほうが収入っていう時があったようです。 |
| 渡辺 | 面白いものだね、これ。こんなの大事に残している旅館はないね。 |
| 西村 | これも面白いですよ。 |
| 渡辺 | お茶、茶道の英語の教科書だ。 |
| 西村 | 国際観光旅館連盟で、海外のお客様の宿泊施設として出したんですね。古いお献立もあります。 |
| 渡辺 | よく保存していたね。 |
| 西村 | でも、その前のもっと古いのは残っていないんです。 |
| 渡辺 | 柊家ホテルって書いてある。これ貴重なものだね。こんなに歴史がある老舗旅館だから、次の世代にも、いつまでも伝えていってほしいね。 |
| 西村 | そうしていきたいです。 |
「柊家旅館」は一休.comからご予約いただけます。



![百会楽話 [対談9]柊家](hd.gif)


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