| 渡辺 | 女将さんの1日のスケジュールってどんな具合ですか。下鴨にまだ住んでいるのですか? |
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| 西村 | そうなんです。朝は調理場なんかは早くから仕込みを始めていますが、私は9時を目安に出て来まして、まずお客様のお見送りから始まります。9時から11時の間がチェックアウトが多いですね。電話で京都の観光のことなどいろいろ聞かれますから、お客様のご希望にかなうようにご案内します。そのほかに事務的なこともやらなければならないんです。その合間に準備をして、それから、チェックインの方のお迎えです。 | |
| 渡辺 | コンシェルジェのような仕事もあるわけですね。 | |
| 西村 | フロントにいると何でもしないといけません。 | |
| 渡辺 | 夜は? | |
| 西村 | 子どもが小さい頃は、母が「はよ帰れ」っていってくれましたけど、今は子どもたちも大きくなって、家に帰ってもいない状態ですから、ついつい仕事をしてしまいますね。また、旅館同士などで会を作っていて、そんなとこに出たり。京都もここ数年でものすごく変わりましたしね。京都に住んでいる私なんか、若い時は全然京都のよさに気づかず、ごく当たり前として暮らしてきたんです。20年ぶりに来られたという方に京都の変わりように「もうこんな京都は」ととても嘆かれたのを聞いて、これではいけないと思いました。 | |
| 渡辺 | 世界が大きく変わっているから、西陣とか室町とかが変わるのはしょうがない。ありのままにしておけっていわれても。 | |
| 西村 | 京都は常に前を向いて、それで後ろの伝統をきっちりと守るスタンスを持ちながら、長い歴史を歩んできたのに、ここ数年、前を見て進むエネルギーがなくなってきつつある気がします。これではいけない、やっぱり京都が京都らしくあるためには、時代の先をきっちりと見据えていかなければいけないと、思い始めたものですから。 | |
| 渡辺 | 柊家のような高級なところは別としても、一般的に若者が京都に行かないのが気になりますね。何か若者が京都を飛び越えて、外国志向になってしまった。日本の歴史ある伝統的なところをしっかり見ておかないと。 | |
| 西村 | 海外に行くと、逆に日本を知らないことに気づきますよ。うちも留学から日本に帰ってこられて、あまりに日本を知らなかったって、ご家族で泊まられる方がおられます。 | |
| 渡辺 | 家族でしっかり京都を見直そうというのはいいんだけど、そこに気がついていない人が多い。若い時に京都巡りをしておくと、日本に対する見方もずいぶん違うと思うんだけど。 | |
| 西村 | 今は京都を知ってもらうために、学校のキャンパスを開放して、講義をしたり体験学習をしたり、そういう取り組みはしていらっしゃいます。 | |
| 渡辺 | 僕は編集者をよく京都に連れて行くんだけど、京都のことを知らないね。ただ古い街だっていうだけで。 |
| 西村 | 来年『源氏物語』の千年記なので、京都では源氏に取り組んでいます。委員会も立ち上げられたんです。なかなか源氏を全部読んだ人はいなくて……。 |
![]() ![]() ![]() 西村明美 (にしむら あけみ)
1948年、京都府生まれ。ノートルダム女子大学英語英文学科卒業。「柊家」6代目女将。1988年、京都市観光大使 おこしやす京都委員会委員に就任。「みやこ女将の会」会長、「京都商工会議所女性会理事」「国際京都学協会理事」として地域貢献活動に尽力を続けている。 |
| 渡辺 | そんなに面白くないでしょ。いきなり読まされても。 | |
| 西村 | でも大学の先生に、漫画、『あさきゆめみし』ですか、上手に描いてあるっていわれて、わかりやすいところから入っていって、少しずつ深めていってもよいのでは……と。 | |
| 渡辺 | 『源氏物語』は、現代文に訳すだけでは面白くない。それはすでにたくさんされているし、それだけではオリジナリティがないから。 | |
| 西村 | 若い方に興味を持ってほしいですね。きっかけは何でもいいと思うんですけど。 | |
| 渡辺 | まず入らないとね。 | |
| 西村 | そうなんです。一歩踏み出すことによって、だんだんと奥へも行けるわけですし。 | |
| 渡辺 | 源氏ができて来年1000年。それで女将さんは、そういう社会的なこともやっているんですね。 | |
| 西村 | 京都というものに気づかされてから、いかに京都を知らなかったのかと。今の若い人と同じだって思いまして。 | |
| 渡辺 | それはいいことだ。 | |
| 西村 | 水と空気と一緒ですよ。本当に当たり前だけど、失ってはいけないものが、何かすごく見失われがちなので、それに気づかせていただきながら、目下自分の不勉強を悔いています。 | |
| 渡辺 | ぜひ、やってください。話は違うけど、女将さん、一つ提案したいんですが。和風の旅館に泊まっていて思うんだけど、布団が小さい。ダブルの布団作ったらどうですか? | |
| 西村 | 新館のほうは、ちょっと大きくしています。 | |
| 渡辺 | そうでしたか。 | |
| 西村 | 何回か寝心地をテストして新しく作ってもらったのがあります。 | |
| 渡辺 | 大きいベッドはいっぱいあるんだけど、和風旅館は布団そのものが小さいし、シングルというか、同じ大きさのものしかない。広い和風の部屋に、あの狭い布団で寝ると、太平洋に1人で浮いているみたいで、寂しくて眠れない。(笑) | |
| 西村 | そう思っても、実は難しいところで。古いこの年代の……。 | |
| 渡辺 | 押し入れに入らない? | |
| 西村 | 押し入れを作り替えないといけないんです。で、新館で作ったお布団も、せっかくだからと思って本館でも使おうと思ったんですが押入れに入らないんです。時代の求められるものとバランスを取りながらというのは、伝統を引きずるところでうまくいかないところもあるんですよ。 | |
| 渡辺 | 僕は、一人でホテルに泊まる時は、ダブルしか取らない。和風にもせめてセミダブルの布団ってあったらいいんだけど。 | |
| 西村 | 大きな身体の外国の方に気の毒なんです。継ぎ足しのお布団で、一応特大のサイズは作っているんですけどね。 | |
| 渡辺 | 二つ敷くと、必ず間が空いてしまう。部屋が広いんだから、もったいない。 | |
| 西村 | 時代で求められる心地よさというのはだんだん変わっていきますね。 |













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