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一期一会

柊家柊家

一期一会
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一期一会 一 二 四

三. 源氏物語千年記に

渡辺 女将さんの1日のスケジュールってどんな具合ですか。下鴨にまだ住んでいるのですか? 百会楽話 渡辺淳一 × 西村明美

百会楽話 渡辺淳一 × 西村明美 景色

百会楽話 渡辺淳一 × 西村明美 景色
西村 そうなんです。朝は調理場なんかは早くから仕込みを始めていますが、私は9時を目安に出て来まして、まずお客様のお見送りから始まります。9時から11時の間がチェックアウトが多いですね。電話で京都の観光のことなどいろいろ聞かれますから、お客様のご希望にかなうようにご案内します。そのほかに事務的なこともやらなければならないんです。その合間に準備をして、それから、チェックインの方のお迎えです。
渡辺 コンシェルジェのような仕事もあるわけですね。
西村フロントにいると何でもしないといけません。
渡辺 夜は?
西村 子どもが小さい頃は、母が「はよ帰れ」っていってくれましたけど、今は子どもたちも大きくなって、家に帰ってもいない状態ですから、ついつい仕事をしてしまいますね。また、旅館同士などで会を作っていて、そんなとこに出たり。京都もここ数年でものすごく変わりましたしね。京都に住んでいる私なんか、若い時は全然京都のよさに気づかず、ごく当たり前として暮らしてきたんです。20年ぶりに来られたという方に京都の変わりように「もうこんな京都は」ととても嘆かれたのを聞いて、これではいけないと思いました。
渡辺 世界が大きく変わっているから、西陣とか室町とかが変わるのはしょうがない。ありのままにしておけっていわれても。
西村 京都は常に前を向いて、それで後ろの伝統をきっちりと守るスタンスを持ちながら、長い歴史を歩んできたのに、ここ数年、前を見て進むエネルギーがなくなってきつつある気がします。これではいけない、やっぱり京都が京都らしくあるためには、時代の先をきっちりと見据えていかなければいけないと、思い始めたものですから。
渡辺 柊家のような高級なところは別としても、一般的に若者が京都に行かないのが気になりますね。何か若者が京都を飛び越えて、外国志向になってしまった。日本の歴史ある伝統的なところをしっかり見ておかないと。
西村海外に行くと、逆に日本を知らないことに気づきますよ。うちも留学から日本に帰ってこられて、あまりに日本を知らなかったって、ご家族で泊まられる方がおられます。
渡辺 家族でしっかり京都を見直そうというのはいいんだけど、そこに気がついていない人が多い。若い時に京都巡りをしておくと、日本に対する見方もずいぶん違うと思うんだけど。
西村 今は京都を知ってもらうために、学校のキャンパスを開放して、講義をしたり体験学習をしたり、そういう取り組みはしていらっしゃいます。
渡辺 僕は編集者をよく京都に連れて行くんだけど、京都のことを知らないね。ただ古い街だっていうだけで。
西村 来年『源氏物語』の千年記なので、京都では源氏に取り組んでいます。委員会も立ち上げられたんです。なかなか源氏を全部読んだ人はいなくて……。 百会楽話 渡辺淳一 × 西村明美 オブジェ

百会楽話 渡辺淳一 × 西村明美 ドア説明

百会楽話 渡辺淳一 × 西村明美 オブジェ


西村明美 (にしむら あけみ)
1948年、京都府生まれ。ノートルダム女子大学英語英文学科卒業。「柊家」6代目女将。1988年、京都市観光大使 おこしやす京都委員会委員に就任。「みやこ女将の会」会長、「京都商工会議所女性会理事」「国際京都学協会理事」として地域貢献活動に尽力を続けている。



渡辺淳一 (わたなべ じゅんいち)
北海道生まれ。医学博士。1958年札幌医科大学卒業後、整形外科講師となり、医療のかたわら小説を執筆。1970年『光と影』で直木賞を受賞。1980年に吉川英治文学賞、2003年には菊池寛賞などを受賞。北海道・札幌に渡辺淳一文学館がある。作品には「阿寒に果つ」「無影燈」「白夜」「ひとひらの雪」「失楽園」など多数。現在文壇の第一線で活躍している。

オフィシャルブログ | 渡辺淳一文学館

渡辺 そんなに面白くないでしょ。いきなり読まされても。
西村 でも大学の先生に、漫画、『あさきゆめみし』ですか、上手に描いてあるっていわれて、わかりやすいところから入っていって、少しずつ深めていってもよいのでは……と。
渡辺 『源氏物語』は、現代文に訳すだけでは面白くない。それはすでにたくさんされているし、それだけではオリジナリティがないから。
西村 若い方に興味を持ってほしいですね。きっかけは何でもいいと思うんですけど。
渡辺 まず入らないとね。
西村 そうなんです。一歩踏み出すことによって、だんだんと奥へも行けるわけですし。
渡辺 源氏ができて来年1000年。それで女将さんは、そういう社会的なこともやっているんですね。
西村 京都というものに気づかされてから、いかに京都を知らなかったのかと。今の若い人と同じだって思いまして。
渡辺 それはいいことだ。
西村 水と空気と一緒ですよ。本当に当たり前だけど、失ってはいけないものが、何かすごく見失われがちなので、それに気づかせていただきながら、目下自分の不勉強を悔いています。
渡辺 ぜひ、やってください。話は違うけど、女将さん、一つ提案したいんですが。和風の旅館に泊まっていて思うんだけど、布団が小さい。ダブルの布団作ったらどうですか?
西村 新館のほうは、ちょっと大きくしています。
渡辺 そうでしたか。
西村 何回か寝心地をテストして新しく作ってもらったのがあります。
渡辺 大きいベッドはいっぱいあるんだけど、和風旅館は布団そのものが小さいし、シングルというか、同じ大きさのものしかない。広い和風の部屋に、あの狭い布団で寝ると、太平洋に1人で浮いているみたいで、寂しくて眠れない。(笑)
西村 そう思っても、実は難しいところで。古いこの年代の……。
渡辺 押し入れに入らない?
西村 押し入れを作り替えないといけないんです。で、新館で作ったお布団も、せっかくだからと思って本館でも使おうと思ったんですが押入れに入らないんです。時代の求められるものとバランスを取りながらというのは、伝統を引きずるところでうまくいかないところもあるんですよ。
渡辺 僕は、一人でホテルに泊まる時は、ダブルしか取らない。和風にもせめてセミダブルの布団ってあったらいいんだけど。
西村 大きな身体の外国の方に気の毒なんです。継ぎ足しのお布団で、一応特大のサイズは作っているんですけどね。
渡辺 二つ敷くと、必ず間が空いてしまう。部屋が広いんだから、もったいない。
西村 時代で求められる心地よさというのはだんだん変わっていきますね。


柊家旅館」は一休.comからご予約いただけます。

Photographs by Toshio Yasui

一期一会 一 二 四



第18回 木村襄司(小樽・銀鱗荘オーナー) …一大道楽で鰊御殿が旅館に
第17回 三國浩紀(アラマンダ支配人) …遠大で壮大な挑戦
第16回 比嘉建己(ジ・アッタテラス支配人) …ヨーロッパのシックなリゾートが沖縄に
第15回 清水かほる(ベネッセハウス副総支配人) …「よく生きる」ことを考える場所
第14回 勝俣伸(富士屋ホテル社長) …かごで上ったアジアンテイストのホテル
第13回 岩村尚子(岩惣 先代女将)・岩村玉希(岩惣 女将) …光雅と静寂の神の島
第12回 中村律子(旅館くらしき女将) …美しき蔵の町の蔵の宿
第11回 向井聖子(三養荘女将) …財閥の別邸
第10回 北山ひとみ(二期リゾート 代表取締役) …十八世紀フランスのサロンを目指す
第09回 西村明美(柊家女将) …京都は京都らしく
第08回 マルコム・トンプソン(ザ・ペニンシュラ東京 総支配人) …日本に学んだおもてなしの心
第07回 星野佳路(「星野リゾート」社長) …世界のリゾートを向こうに
第06回 齋藤朝子(海石榴大女将) …万葉の湯
第05回 石川修(ホテル ニドム社長) …ニドム カムイに授かりし森
第04回 岡副徳子(金田中若女将) …新橋の花柳界を守る金田中
第03回 浅羽愛子(伊豆・あさば女将) …「あさば」はあくまで「あさば」である
第02回 井上旭(シェ イノ シェフ)  …45年間、支持され続けた料理
第01回 古谷青游(熱海・伊豆山・蓬莱女将) …日本で一番早く春が来るところ


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