| 齋藤 | 先生も全然お変わりないですね。 | ![]() |
| 渡辺 | 僕はジコチュウで。人のことはあまり考えないものだから。 | |
| 齋藤 | 私もそうかもしれません。 | |
| 渡辺 | 似ている。 | |
| 齋藤 | 鈍感力に優れているんです、私は。 | |
| 渡辺 | やっぱり。 | |
| 齋藤 | 人に悪口をいわれていても、ちょっと褒められているかなって。 | |
| 渡辺 | そうでしょ。僕も同じ。鈍感力は人を若返らせるのに効果的。下手に考え込んだり、暗くなっていたら、どんどん老けてしまう。 |
| 齋藤 | それと、嫌なことはすぐに忘れてしまうんです。 | ![]() |
| 渡辺 | 忘れて寝ちゃうんだよね。今日はあのこと考えないといけないと思って横になると、気がついたら眠ってる。 | |
| 齋藤 | 何か苦労知らずな顔をしているんですって。まあ楽をしているっていえば楽をしているかもしれませんけど、大変なんですよ、先生。ただ、いろんなことが苦にならない。どっちかというと、これどうやったらクリアできるかって楽しんでいますね。 | |
| 渡辺 | 前向きの、いい性格だなあ。 | |
| 齋藤 | みんな社員に苦労を押しつけてと、そういうことでしょうかね。(笑) | |
| 渡辺 | わかっていて押しつけるところがいいよね。でも、昨夜遅く来て泊まったけど、社員の方がとても感じがいい。大浴場までの行き方がわからなくて、帰り方がまたわからなくなったら、ちゃんと部屋まで連れてきてくれて。 |
| 渡辺 | 年配の方が特にいい。 | ![]() |
| 齋藤 | ありがとうございます。 | |
| 渡辺 | 女将さんの住まいは東京なんでしょ。東京に帰るの? | |
| 齋藤 | 帰りますね。明日戻ります。そういう生活ですから、あまりみんな口を出さない。 | |
| 渡辺 | 出せないよね。 | |
| 齋藤 | 実は私、女将さんじゃなくて、女将は別にいるんで。ですから大女将になります。 | |
| 渡辺 | オーナーということですか。 | |
| 齋藤 | 大女将って毎日いらないものでしょ。 |
| 渡辺 | 社員は、任された私たちがしっかりしなけりゃ、と思って。 | ![]() |
| 齋藤 | そうそうそうそう。そうです。 | |
| 渡辺 | 上手な人の使い方だね。 | |
| 齋藤 | でも、全然働かないわけじゃありませんのよ。 | |
| 渡辺 | わかっています(笑)。料亭だけにしなかった、ってところがわかる。 | |
| 齋藤 | そういう旅館を作りたかったということです。昔はお客様がおいしいものを食べに旅館にいらしたのに、今は何だと。団体旅館は、全部料理が並んでいて、これは本当の旅館じゃないというところから始まったんですね。これはうちの主人が旅館の息子ですから、昔の姿を知っていて、私は生まれていないので知りませんが。そういう旅館にしようということになりました。うちが初めてとは申し上げないけれども、最初のほうで、お料理もグレードを高くしています。 | |
| 渡辺 | あれっ(庭のほうを見て)、あれはネコでしょ。タヌキじゃないよね。 | |
| 齋藤 | タヌキは出ませんがイノシシは出ます。竹林がありますでしょ、イノシシがあそこにタケノコを取りに来ます。キジも出ます。ノウサギも。一番多いのはサル。サルは可愛くてね、子どもなんか抱いたりおんぶしたりして、庭を飛び歩いていると、お客様が喜ばれますね。 |
| 渡辺 | ここは、山と海の幸と、両方があるよね。 | ![]() ![]() |
| 齋藤 | 先生、改めてゆっくりいらしてください。 | |
| 渡辺 | ひっそりと来ます。(笑) | |
| 齋藤 | ひっそりでもにぎやかでも。どちらかというと、ゆっくりなさりたい方が合いますね。 | |
| 渡辺 | 東京から近いけど、ここまで入ればもう……。 | |
| 齋藤 | もう誰にも知られないわっていう。 | |
| 渡辺 | 追っ手が来ないっていう感じ。 | |
| 齋藤 | そのとおりです。ですから、うちには隠し玄関もあって、どうしても人に会いたくない方はそこからお入りいただきます。 | |
| 渡辺 | すごい。本当にまったく音がしない、ここは。 | |
| 齋藤 | 4月ぐらいからしーんとしているところにカジカの声がいいですね、これが涼やかで。 | |
| 渡辺 | 蝉が鳴き出したらすごいでしょ。 | |
| 齋藤 | すごいですね、蝉時雨は。結構早めに鳴き出しますね。 | |
| 渡辺 | 春夏秋冬明確で。 | |
| 齋藤 | 日本ってそういう国ですよね。本当に四季がはっきりしていて、それが楽しいですよね。 |
| 渡辺 | お子さんいらっしゃるんでしょ。 | |
| 齋藤 | おります。 | |
| 渡辺 | で、あなたの跡を継ぐ方は? | |
| 齋藤 | 長男が入社しております。 | |
| 渡辺 | その人のお嫁さんは? | |
| 齋藤 | それがね、まだ独身で困ったものです。 | |
| 渡辺 | 最近、結婚に意義を認めない男女が増えているから。 | |
| 齋藤 | だんだんそうなってきますね。 | |
| 渡辺 | 昔は世間が圧迫したから、みな渋々でも結婚した。 | |
| 齋藤 | 私たちの時代は、23、24歳までに結婚しないと、もう遅いって。ちょっと焦るっていうか、そういうのがありましたけど。今の子はほとんど焦りませんね。 | |
| 渡辺 | しないのが多数派になっちゃった。 | |
| 齋藤 | 結婚すると何が得なんだろうなんていってるんですから。 | |
| 渡辺 | ペイしないって。 | |
| 齋藤 | でもそれ以上のものがあるじゃないですか。あると思いませんか? | |
| 渡辺 | もちろんあるけど、それはうまくいった場合で。 | |
| 齋藤 | だから本当に好きにならないと結婚しないって、そういうことですね。 |
| 渡辺 | お嬢さんはいらっしゃるんですか? | |
| 齋藤 | おります。 | |
| 渡辺 | そのお嬢さんはここをやらないの。 | |
| 齋藤 | やっておりましたが、兄が留学から帰ってきたので、きょうだい一緒はちょっとまずいでしょって自分から身を引いて、今はまた学生に戻りました。本当はやってくれればいいと思っていますが、わかりませんね。 | |
| 渡辺 | 強制しても仕方ないしね。 | |
| 齋藤 | 書くことが好きで。女性誌の編集をしていました。 | |
| 渡辺 | そういうことをやりだすと、なかなかな難しいかも。 | |
| 齋藤 | でも、今は結婚している編集者の方って、結構いらっしゃるんでしょ。 | |
| 渡辺 | それと同じぐらい離婚しているのもいるし。女性が経済力を持つと、かなり別れるもんだね。 | |
| 齋藤 | 妥協できないところが出てくるんでしょうかね。 |
| 渡辺 | 先日、『鈍感力』の中国語訳ができて、サイン会と講演に中国の上海に行ってきました。ある大学で講演したら学生が、中国では「全部きちんと見るものじゃない。一つは目をつぶりなさい」という言葉があるって。「それは鈍感力と同じようなものですよね」ってきかれて。「とても通じてる」っていったんです。何でもすべてしっかり見るなと。ところどころは目をつぶるのも大切だっていうわけだけど。 |
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| 齋藤 | そうですよね。日本も同じですね。 | |
| 渡辺 | 「見ざる聞かざる言わざる」とかね。そういう知恵って、人を使っていてもそうでしょ。 | |
| 齋藤 | やっぱりいいところを見てね。そこを伸ばす。 | |
| 渡辺 | そうでないと、細かくキリキリやっても悪くなるばかりで。 | |
| 齋藤 | そうですね。自分に力がないと、人に言えないですから。そういうおおらかなところがないとね。 |












