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一期一会

ニドム百会楽話 [対談5]ニドム
ニドム

一 三 四

二. 考えた末のニドム

渡辺 だまされて買ったなんていうけど、やっぱり相当な見る目と計画性がないと買えないんじゃないですか。 百会楽話 渡辺淳一 × ニドム社長
百会楽話 渡辺淳一 × ニドム社長
石川 それこそ計画は一つもなかったんです。ただ、将来、必ず日本は経済成長をしていくから、立地条件のいいところだし、高く売れると、単純に考えて買ったんです。持っていたら、2年もたたないうちに、バブル景気が見え始めてね、この土地をたくさんの人が買いに来た。日東興業さんってゴルフ場の大手とか、プリンスホテルの堤義明さんのところだとか、北海道の立地条件のいいところは、観光ゴルフ場になるということで、いい土地を見つけてこいっていわれて。鹿島建設だとか、大成建設だとか、いろいろな方がここに来たんです。
渡辺 あの頃は、そうでしょうね。
石川それで値段が買った時の3倍とか4倍になって、何十億かもうかるから売ろうかなと思ったの。そうしたら、うちの札幌の公認会計事務所が短期譲渡だと70%ぐらい、税金を取られるというんです。30億円もうけたら、20億税金を払わなければいけなかったんです。公認会計士事務所に行って、何とか節税できないか。要するにごまかしができないかとお願いに行ったら、会計士の先生から怒られましてね。前にもね、節税をして税務署からお目玉食ったことがあったんですよ。だから、そんなことをしたら大変だから、私は引き受けないと、そういわれて。それならと売るのをやめたんです。
渡辺 そんなに土地があがったんですか。
石川 そしたら今度は、大成建設だとか、鹿島建設が「社長、あなたがリゾート開発をやれ」と。「うちにゴルフ場経営のノウハウがあるから」。そういっておだてられて、50歳過ぎて、年取ってからで大変ですから、本当はやりたくなかった。いろいろな関係者からやれといわれてですね、思い切って始めたんです。
渡辺 じゃあ、このニドムの計画で具体的に手をつけたのは、今から20年前ですか。
石川 23年前ですね。オープンして20年ですから。
渡辺 その時に、すでに今のような青写真を描いていたんですか。
石川 いや、描いていないです。やると腹をくくって、やるなら、日本にない世界に通じるいいリゾートを作りたいということで、企画からコンセプトデザインまで半年ぐらい考えました。 百会楽話 渡辺淳一 × ニドム社長
渡辺 全部自分で考えられたんですか。
石川デザインとかは、大成建設にやらせたんです。設計会社もいろいろ入れましたよ。だけどその前に半年間、私、ヨーロッパからアメリカまで、ほっついて歩いたんです。イメージを作るのに。日本のリゾートをまねしたってしょうがないからって、世界中を放浪の旅をしたようなものです。
渡辺 一番どこがよかったですか?
石川 ここ苫小牧の雰囲気は北欧に近いでしょ。やっぱりドイツだとか、オランダだとか、コペンハーゲンね。あの辺の気候風土とか風景に近いから、北欧的なスタイルで、コースから建物からデザインしようと決めて。ここにコテージを作るんだ。ここにゴルフ場を作るんだと私のほうでレイアウトして、まあそういうことで始まったんです。
渡辺 ニドムっていう言葉をいつごろ聞いたかなあ? 結構古くから、十数年前から聞いたような気がしますけど。アイヌ語を上手に使っているじゃないですか。
石川 これは私の発想です。
渡辺 ニドムって「豊かな森」という意味のアイヌ語ですね。 百会楽話 渡辺淳一 × ニドム社長
百会楽話 渡辺淳一 × ニドム社長
石川 そうです。広告宣伝は電通を使ったんです。大成建設とかいろいろな設計会社も入って。ネーミングをどうしたらいいかと侃々諤々やったんですけど、電通ってサラリーマンの集団でしょ。一つもいいアイディアが出てこないんですよ。
渡辺 昔は遊び人の集団だったけど、今は官僚化して、マージンとってるだけだから。
石川 どこにでもあるような名前しか出てこない。大手ってそんなもので、大成建設もそうです。
渡辺 なるほどね。じゃあ、ニドムは全部石川さんの発想で?
石川 ええ。それと北海道大学の辻井先生、湿地帯とかの専門家。知っているでしょ。
渡辺 知っています、農学部の先生ね。植物園の園長をされていた。
石川 辻井先生も参画してもらったんです。「おれ、名前はアイヌ語でつけたいんだ」っていったら、辻井先生が北大から資料を持ってきてくれたんです。
渡辺 あの先生もロマンチックな先生で。
石川 そうです。ニドムをやる時に、辻井先生だとか北海道の知識を持っている方にお世話になって、コンセプトを作ったんです。
渡辺 ネーミングがエキゾチックだ。何か日本でないような。実際ここは日本ではない雰囲気で。こういうリゾートはほかにないですよ。
石川 ありがとうございます。まだホテルも未完成なんです。50室ぐらいの低層のホテルを作って、コテージと両方でお客様を迎え入れようと思っています。いわゆるクラシックモダンですけど。だからそういう雰囲気に合うかなと思って。目いっぱいクラシックではまずいから。モダンクラシックにしてね。
渡辺 北海道にぴったりだね。もともと北海道はクラシックモダンだから。
石川 まあわかりやすくいうと、オーソドックスなクラシックにして、部分的なものとか内装をちょっとモダンにしようかと。
渡辺 やっぱりロマンチストだなあ。 百会楽話 渡辺淳一 × ニドム社長

石川修(いしかわ おさむ)
1933年北海道、深川生まれ。不動産業を経て、リゾート開発に携わる。1984年、ホテル ニドムを開業し現在に至る



渡辺淳一 (わたなべ じゅんいち)
北海道生まれ。医学博士。1958年札幌医科大学卒業後、整形外科講師となり、医療のかたわら小説を執筆。1970年『光と影』で直木賞を受賞。1980年に吉川英治文学賞、2003年には菊池寛賞などを受賞。現在文壇の第一線で活躍している。

オフィシャルブログ | 渡辺淳一文学館

石川 そしてフランスあたりと提携して、エステと温泉を併設しようと。それと、北海道は北ですから、北欧のイメージだから、ロシアっぽいチャペルを作りたい。結婚式も年間600件あります。それでだいたい私の念願はかなうんです。
渡辺 でも、日本人はロシアにはあまり馴染みがない。
石川 ロシア正教っていうのは、要するにローマとイスラムの混ざり合ったものですね。
渡辺 いわゆるキリスト社会とはまったく違う。
石川 ウィーンなんかも、先生、ロシアの建築からいろいろな建築があるんです。それが交わっている。それがウィーンの魅力なんです。
渡辺 なるほどね。確かにホテルもあるといい。僕が今日泊まるコテージは、前に湖があって。
石川 トムトム湖といいます。ピカピカ光るという意味です。景色をきれいに湖面に映し出してくれます。
渡辺 湖に周りの緑が映って、森が二重に重なり合ってる。コテージも風情があって。ほかのホテルにもコテージがあるけど、それから見ると、もっと奥に入った、っていう感じがして。ただ高齢者の場合、コテージはメゾネット形式でしょ。上にリビングやダイニングがあって、下に寝室とバスルームがある。階段を上がったり降りたりするのが大変かなって思うけど。これだけ広い敷地の森だからね、ホテルもあると喜ばれると思う。
石川 3階建てぐらいのホテルを作ろうと思って。
渡辺 それはいいなあ。
石川 来年の秋ぐらいに着工できると思います。



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Photographs by Naoki Wada



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