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一期一会

ニドム一期一会

一 三 四

一. 不毛の地のはずなのに

石川 わざわざおいでいただいて。 百会楽話 渡辺淳一 × ニドム社長
渡辺僕はここ、一度通って、ここまで入ったこともあるのですが、今回泊まるのは初めてなんです。今回つぶさに見せていただいて、石川さんは何ていうか、大変なロマンチストだということがわかりました。こういうところに、これだけの空間。豊かな森の中に点在するコテージ、湖、石の教会と木の教会。これらが自然とうまく調和している。
石川 私、職業を3回変えているんです。9人兄弟の7番目で、うらなりなものだから、中学も行かせてもらえなくて、小学校を卒業したら奉公に行けってたたき出されましてね。母親の実家が旭川で味噌・しょう油製造をやっていましたので。終戦間もなくからそこで十年間暮らしました。
渡辺 奉公は旭川で? 百会楽話 渡辺淳一 × ニドム社長
石川旭川です。実は生まれは深川なんです。深川で地主をやっていたわけです。ところが終戦後、片山内閣の時に農地開放で土地をみんな取り上げられてしまって、すってんてんになっちゃったから。それで、奉公に行けって私が14歳か15歳の時。それから札幌に出てきて。
渡辺札幌に出てきたのは何歳ですか。
石川23歳です。札幌で食料品の卸屋を15年ぐらいやりました。漬物屋だとか、味噌・しょう油とか、そういうものの製造販売もやった。ところが時代が変わって、もうからなくなったから、食料品を納めていた王子不動産の偉い人が、苫小牧なら将来があるから、ここに来て不動産屋をやれ、うちと提携するからやれというんです。店をたたんで、37歳の時に苫小牧に来たんです。それで、これを始めたのが22、23年前からですから、50歳の時です。
渡辺 苫小牧に来てから不動産業をやられた。
石川 王子不動産と提携してね。それでもうけさせてもらって、この土地を買ったんです。
渡辺 この土地、どのぐらいあるんですか。 百会楽話 渡辺淳一 × ニドム社長
石川 350haですから、130万坪ぐらいですね。
渡辺これは、前は誰の土地だったんですか。
石川 この土地は苫小牧の何代も続いた名士が持っていたんです。ところがいろいろ時代の変革で、会社がうまくいかなくなったから、銀行を通じて買う人がいないかって探していたんです。当時はバブルの前で、あまり景気がよくなかったんですよ。誰も買う人がいなかったので、私に白羽の矢が立った。地主さんと王子不動産と、拓殖銀行から「おまえじゃないと買えないよ」っておだてられまして、「そうか」っていうので買ったんです。
渡辺 僕は40年近く前に札幌に住んでいたけど、この辺の土地は不毛で、何もない土地だと思い込んでいたんですよ。
石川 実際にそうだったんです。
渡辺 だから、自衛隊の練習場ぐらいにしかならないんだと思っていて。今日回ってみると、すごいですね、樹木が。 百会楽話 渡辺淳一 × ニドム社長

百会楽話 渡辺淳一 × ニドム社長
石川 最初はこんなに深い感じに見えないんですね。で、道路からニドムのゲートをくぐって中に入ってくると、この樹木だとかね、森とか見えてくる。
渡辺 この森は新しく石川さんが作られて。
石川 いや、そうじゃないです。自然林。昔この辺に、大木たくさんあったんですよ。ところがここに王子製紙があるでしょ。大きな木をみんな紙にしちゃったんですね。
渡辺 王子製紙はこの辺の木を切っていたんですか。
石川 北海道中の木を。最初は支笏湖近辺でしたが。
渡辺 支笏湖近辺は大木がありますね。
石川 この辺りの木を持っていって、新聞紙にしました。イタヤだとか、モミジだとかは自然のもの。それから落葉松だとか、ストローマツとかは戦後、植林したんですね。その混合林です。

渡辺 僕らの感じではね、国道36号線沿は森はあるけど、お米はもちろん、野菜とかそういうものも作っていないじゃないですか。だから不毛だと思い込んでいた。ところがこんな豊かな森があるなんて知らなかった。
石川修(いしかわ おさむ)
1933年北海道、深川生まれ。不動産業を経て、リゾート開発に携わる。1984年、ホテル ニドムを開業し現在に至る



渡辺淳一 (わたなべ じゅんいち)
北海道生まれ。医学博士。1958年札幌医科大学卒業後、整形外科講師となり、医療のかたわら小説を執筆。1970年『光と影』で直木賞を受賞。1980年に吉川英治文学賞、2003年には菊池寛賞などを受賞。現在文壇の第一線で活躍している。

オフィシャルブログ | 渡辺淳一文学館

石川 この苫小牧近辺から釧路まで勇払原野は、野菜だとかお米は取れないんです。こういう湿地は湿気が多いんです。だから札幌とここと気候がちょっと違うんで、よそにないムードっていうんですか、日本にない雰囲気がここにある。ここをやるようになって発見しました。

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Photographs by Naoki Wada



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