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一期一会

炭屋旅館(京都)

炭屋旅館(京都)
炭屋旅館 一期一会
一期一会
5 第1話 第2話 第3話 第4話

5. お茶の宿を守り続ける

百会楽話 炭屋旅館 堀部寛子 × 渡辺淳一
百会楽話 炭屋旅館 堀部寛子 × 渡辺淳一
百会楽話 炭屋旅館 堀部寛子 × 渡辺淳一
百会楽話 炭屋旅館 堀部寛子 × 渡辺淳一
百会楽話 炭屋旅館 堀部寛子 × 渡辺淳一
百会楽話 炭屋旅館 堀部寛子 × 渡辺淳一
百会楽話 炭屋旅館 堀部寛子 × 渡辺淳一
百会楽話 炭屋旅館 堀部寛子 × 渡辺淳一
堀部寛子(ほりべ ひろこ)
1951年生まれ。大正生まれの大女将が4年前に脳梗塞で倒れてから、本格的に女将業を引き継ぐ。炭屋旅館4代目を守り2児の母でもある。


渡辺淳一(わたなべ じゅんいち)
北海道生まれ。医学博士。1958年札幌医科大学卒業後、整形外科講師となり、医療のかたわら小説を執筆。1970年『光と影』で直木賞を受賞。1980年に吉川英治文学賞、2003年には菊池寛賞などを受賞。 北海道・札幌に渡辺淳一文学館がある。作品には「阿寒に果つ」「無影燈」「白夜」「ひとひらの雪」「失楽園」など多数。現在文壇の第一線で活躍している。

オフィシャルブログ | 渡辺淳一文学館
渡辺 京都も今、こういう和風旅館が少なくなったなあ。
堀部 少なくなりました。
渡辺 京都で残さないとね。
堀部 ところで、いつ書かはりますの? ものを書くって大変。原稿を迫られたりすればストレスも。
渡辺 そういう請求がくるのはうれしいことだと思わないとね。原稿の依頼もないから、早く書いてくれといわれることもないっていうのでは悲しい。
堀部 やんやいってくれはることをうれしいと思わなきゃ駄目なのね。
渡辺 そうですよ。客から文句をいわれるのはうれしいって思わなくちゃ。
堀部 父が長いこと淡交社の『淡交』という雑誌に書いてはったんです。1ページでなかなか人気があって、ぜひ続けてほしいといわれてね。せやけど私には書けないし、お断りしたんです。せっかくだからふた月に一編やし書いてくださいっていわれて、ボチボチ書いているんですけど。そのふた月が早くて、早くって原稿を迫られるのはつらいです。
渡辺 それはいいことを書こうと思っているからで。
堀部 そうです(笑)。いいこと書こうと思います。
渡辺 つらくてつらくてって正直に書けばいいんですよ。そのほうが読者は面白がる。
堀部 1年に6回、3年目ですから、もうネタ切れなんですよ。
渡辺 季節季節のことがいっぱいあるじゃないですか。
堀部 それを書くんですけどね。1書こうと思ったら、10知らんと書けへんでしょ。それは私がいわんでも、先生はようわかってはるけど。
渡辺 1知って10書くんだよ(笑)。僕は毎週書いているよ。もう十何年間、エッセイを。
堀部 何について書くんです?
渡辺 『週刊現代』から、今は『週刊新潮』に身近なことを。
堀部 週刊誌、ああ、しんど。
渡辺 だから立派なことを書かないほうがいいんです。自分が失敗したことを書いたほうがいい。炭屋の女将もこんなばかなことをしているんだって。こんなことで心配をしたりするんだっていうことが、読者の共感を呼ぶわけ。難しい偉そうなことを書かずに。
堀部 失敗談ならいっぱいあります。
渡辺 あるでしょ。それをどんどん書かれたらいいですよ。
堀部 母もしていたんですが、一つひとつお部屋を回るんです、夕食の時間にご挨拶に。お客様によっては、女将さんがあいさつにきてくれるなんて、何とご丁寧なと思わはって喜んでくれるお客さんもあるし、せっかく二人きりでしゃべっているのに、早く帰ってみたいなお客さんもいろいろなんですけどね。まあ私にしたら、一つ屋根の下で一晩過ごすわけだから、どんなお客さんかなってお顔を拝見しがてら、きてくれはったし、お礼も込めてうかがって。まあものの5分ぐらいですけど、お話して下るんです。特徴のあるお部屋は覚えているんですが、新館は同じようなお部屋が並んでいるので、くるくる回っているとわからなくなるんです。
渡辺 わからなくなって2度行くんですか。
堀部 そうなんです(笑)。しもたと思った時はもう開けた後で、引っ込みがつかない時があって。
渡辺 それ書いたらいい。どうやってごまかしたんですか。
堀部 「いかがでした? このかぶら」って。
渡辺 いい話だ。それ書きなさいよ。
堀部 「さっきバスのお話が出ていましたけど、バスの時刻を調べてきました」とか、「マッサージ何時におっしゃいましたか」とか、できる限りの知恵を働かせて。
渡辺 そんなことがすぐに思いつくとは。大したものだね、やっぱり。
堀部 それは仕方がない。その場に及んだら何かいわなと思って。開けたら閉められへん。
渡辺 旅館の女将って、時々間違って2度くることがあるんだって、それ面白い。しかし、ここは静かだね。
堀部 そうでっしゃろ。まちの真ん中の割には静かでしょう。
渡辺 ほんと静か。炭屋の今後は、今までの経営方針を守っていくということですね。何か新しくやりたいことなどありますか。
堀部 それは初心者でも触れてほしいと前にお話したお茶の話ですね。もともと先代も先々代もお茶で生きてきはりましたので、お茶は特徴ある宿としていかしていきたいと思いますけれども。ハイクラスのお茶もいいけれど、気楽なお茶を大勢の人に楽しんでもらえたらもっといい。肩ひじ張らずに炭屋になじんでもらえるんじゃないかなと思って。お茶ってすごくいいと思うし。畳離れした日本人を取り戻すのにはいいきっかけかなと思うんです。
渡辺 炭屋っていうと、やっぱりお茶のことを何も知らないで行ってはいけないのかなって、若い人たちは思っているかも。
堀部 そうでしょ。そこなんですよ。すごく敷居が高いように思われているので、それを何とかしないといけない。
渡辺 いいところでマイナスになっているんだな。でも、特徴があることは、素晴らしいことですよ。
堀部 そうですね。先代、先々代から受け継いできたお茶の宿を守り、もてなしに生かしていきたいと思っています。



炭屋旅館は一休.comからご予約いただけます。


Photographs by 安井敏雄

5



第25回 浅田裕久(浅田屋社長)・浅田郁子(浅田屋女将) …百万石の余裕
第24回 堀部寛子(炭屋旅館女将) …和敬清寂の宿
第23回 鳥居正彦・宮崎英男(志摩観光ホテル ベイスイート) …志摩観光ホテルは進化し続けます
第22回 相原郁子(新井旅館 先代女将)・森桂子(新井旅館 女将) …温故知新の宿
第21回 笹川孝仁(大分・界 ASO支配人) …不思議なすばらしい空間
第20回 井上槇子(日光・金谷ホテル執行役員・統括本部長) …江戸の華麗、明治のモダン
第19回 森 一紀 / 辻 利幸 / 樋口逸郎(奈良ホテル) …歴史の重み 老舗の力
第18回 木村襄司(小樽・銀鱗荘オーナー) …一大道楽で鰊御殿が旅館に
第17回 三國浩紀(アラマンダ支配人) …遠大で壮大な挑戦
第16回 比嘉建己(ジ・アッタテラス支配人) …ヨーロッパのシックなリゾートが沖縄に
第15回 清水かほる(ベネッセハウス副総支配人) …「よく生きる」ことを考える場所
第14回 勝俣伸(富士屋ホテル社長) …かごで上ったアジアンテイストのホテル
第13回 岩村尚子(岩惣 先代女将)・岩村玉希(岩惣 女将) …光雅と静寂の神の島
第12回 中村律子(旅館くらしき女将) …美しき蔵の町の蔵の宿
第11回 向井聖子(三養荘女将) …財閥の別邸
第10回 北山ひとみ(二期リゾート 代表取締役) …十八世紀フランスのサロンを目指す
第09回 西村明美(柊家女将) …京都は京都らしく
第08回 マルコム・トンプソン(ザ・ペニンシュラ東京 総支配人) …日本に学んだおもてなしの心
第07回 星野佳路(「星野リゾート」社長) …世界のリゾートを向こうに
第06回 齋藤朝子(海石榴大女将) …万葉の湯
第05回 石川修(ホテル ニドム社長) …ニドム カムイに授かりし森
第04回 岡副徳子(金田中若女将) …新橋の花柳界を守る金田中
第03回 浅羽愛子(伊豆・あさば女将) …「あさば」はあくまで「あさば」である
第02回 井上旭(シェ イノ シェフ)  …45年間、支持され続けた料理
第01回 古谷青游(熱海・伊豆山・蓬莱女将) …日本で一番早く春が来るところ


 
 

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