







堀部寛子(ほりべ ひろこ)
1951年生まれ。大正生まれの大女将が4年前に脳梗塞で倒れてから、本格的に女将業を引き継ぐ。炭屋旅館4代目を守り2児の母でもある。
1951年生まれ。大正生まれの大女将が4年前に脳梗塞で倒れてから、本格的に女将業を引き継ぐ。炭屋旅館4代目を守り2児の母でもある。
| 渡辺 | 京都も今、こういう和風旅館が少なくなったなあ。 |
| 堀部 | 少なくなりました。 |
| 渡辺 | 京都で残さないとね。 |
| 堀部 | ところで、いつ書かはりますの? ものを書くって大変。原稿を迫られたりすればストレスも。 |
| 渡辺 | そういう請求がくるのはうれしいことだと思わないとね。原稿の依頼もないから、早く書いてくれといわれることもないっていうのでは悲しい。 |
| 堀部 | やんやいってくれはることをうれしいと思わなきゃ駄目なのね。 |
| 渡辺 | そうですよ。客から文句をいわれるのはうれしいって思わなくちゃ。 |
| 堀部 | 父が長いこと淡交社の『淡交』という雑誌に書いてはったんです。1ページでなかなか人気があって、ぜひ続けてほしいといわれてね。せやけど私には書けないし、お断りしたんです。せっかくだからふた月に一編やし書いてくださいっていわれて、ボチボチ書いているんですけど。そのふた月が早くて、早くって原稿を迫られるのはつらいです。 |
| 渡辺 | それはいいことを書こうと思っているからで。 |
| 堀部 | そうです(笑)。いいこと書こうと思います。 |
| 渡辺 | つらくてつらくてって正直に書けばいいんですよ。そのほうが読者は面白がる。 |
| 堀部 | 1年に6回、3年目ですから、もうネタ切れなんですよ。 |
| 渡辺 | 季節季節のことがいっぱいあるじゃないですか。 |
| 堀部 | それを書くんですけどね。1書こうと思ったら、10知らんと書けへんでしょ。それは私がいわんでも、先生はようわかってはるけど。 |
| 渡辺 | 1知って10書くんだよ(笑)。僕は毎週書いているよ。もう十何年間、エッセイを。 |
| 堀部 | 何について書くんです? |
| 渡辺 | 『週刊現代』から、今は『週刊新潮』に身近なことを。 |
| 堀部 | 週刊誌、ああ、しんど。 |
| 渡辺 | だから立派なことを書かないほうがいいんです。自分が失敗したことを書いたほうがいい。炭屋の女将もこんなばかなことをしているんだって。こんなことで心配をしたりするんだっていうことが、読者の共感を呼ぶわけ。難しい偉そうなことを書かずに。 |
| 堀部 | 失敗談ならいっぱいあります。 |
| 渡辺 | あるでしょ。それをどんどん書かれたらいいですよ。 |
| 堀部 | 母もしていたんですが、一つひとつお部屋を回るんです、夕食の時間にご挨拶に。お客様によっては、女将さんがあいさつにきてくれるなんて、何とご丁寧なと思わはって喜んでくれるお客さんもあるし、せっかく二人きりでしゃべっているのに、早く帰ってみたいなお客さんもいろいろなんですけどね。まあ私にしたら、一つ屋根の下で一晩過ごすわけだから、どんなお客さんかなってお顔を拝見しがてら、きてくれはったし、お礼も込めてうかがって。まあものの5分ぐらいですけど、お話して下るんです。特徴のあるお部屋は覚えているんですが、新館は同じようなお部屋が並んでいるので、くるくる回っているとわからなくなるんです。 |
| 渡辺 | わからなくなって2度行くんですか。 |
| 堀部 | そうなんです(笑)。しもたと思った時はもう開けた後で、引っ込みがつかない時があって。 |
| 渡辺 | それ書いたらいい。どうやってごまかしたんですか。 |
| 堀部 | 「いかがでした? このかぶら」って。 |
| 渡辺 | いい話だ。それ書きなさいよ。 |
| 堀部 | 「さっきバスのお話が出ていましたけど、バスの時刻を調べてきました」とか、「マッサージ何時におっしゃいましたか」とか、できる限りの知恵を働かせて。 |
| 渡辺 | そんなことがすぐに思いつくとは。大したものだね、やっぱり。 |
| 堀部 | それは仕方がない。その場に及んだら何かいわなと思って。開けたら閉められへん。 |
| 渡辺 | 旅館の女将って、時々間違って2度くることがあるんだって、それ面白い。しかし、ここは静かだね。 |
| 堀部 | そうでっしゃろ。まちの真ん中の割には静かでしょう。 |
| 渡辺 | ほんと静か。炭屋の今後は、今までの経営方針を守っていくということですね。何か新しくやりたいことなどありますか。 |
| 堀部 | それは初心者でも触れてほしいと前にお話したお茶の話ですね。もともと先代も先々代もお茶で生きてきはりましたので、お茶は特徴ある宿としていかしていきたいと思いますけれども。ハイクラスのお茶もいいけれど、気楽なお茶を大勢の人に楽しんでもらえたらもっといい。肩ひじ張らずに炭屋になじんでもらえるんじゃないかなと思って。お茶ってすごくいいと思うし。畳離れした日本人を取り戻すのにはいいきっかけかなと思うんです。 |
| 渡辺 | 炭屋っていうと、やっぱりお茶のことを何も知らないで行ってはいけないのかなって、若い人たちは思っているかも。 |
| 堀部 | そうでしょ。そこなんですよ。すごく敷居が高いように思われているので、それを何とかしないといけない。 |
| 渡辺 | いいところでマイナスになっているんだな。でも、特徴があることは、素晴らしいことですよ。 |
| 堀部 | そうですね。先代、先々代から受け継いできたお茶の宿を守り、もてなしに生かしていきたいと思っています。 |
炭屋旅館は一休.comからご予約いただけます。







