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一期一会

文化財の宿 新井旅館(伊豆・修善寺)

文化財の宿 新井旅館(伊豆・修善寺)
新井旅館 一期一会
一期一会
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1. 今あるのはみなさまのおかげ

百会楽話 新井旅館 × 渡辺淳一
百会楽話 新井旅館 × 渡辺淳一
百会楽話 新井旅館 × 渡辺淳一
百会楽話 新井旅館 × 渡辺淳一
百会楽話 新井旅館 × 渡辺淳一
百会楽話 新井旅館 × 渡辺淳一
百会楽話 新井旅館 × 渡辺淳一
百会楽話 新井旅館 × 渡辺淳一
相原郁子(あいはらいくこ)
1995年新井旅館代表取締役に就任、所蔵作品などを中心に特設ギャラリーにて現代の作家らの作品展などを行い、文化芸術に力を入れる。 旅館建物が国の登録文化財になったことをきっかけにNPO法人靫彦・沐芳会(ゆきひこ・もくほうかい)を立ち上げ、理事長として文化財を核とした、文化・芸術の向上や日本の伝統文化の継承に向けて活動中。

森桂子(もりけいこ)
東京YMCA国際ホテル専門学校卒業後、ヨコハマグランド・インターコンチネンタルに就職、結婚をきっかけに実家である新井旅館に戻る。 経理、若女将を経て1997年に女将に就任。新井旅館を後生に残すことを使命と感じ、お客様のおもてなしに努める。


渡辺淳一(わたなべ じゅんいち)
北海道生まれ。医学博士。1958年札幌医科大学卒業後、整形外科講師となり、医療のかたわら小説を執筆。 1970年『光と影』で直木賞を受賞。1980年に吉川英治文学賞、2003年には菊池寛賞などを受賞。北海道・札幌に渡辺淳一文学館がある。 作品には「阿寒に果つ」「無影燈」「白夜」「ひとひらの雪」「失楽園」など多数。現在文壇の第一線で活躍している。

オフィシャルブログ | 渡辺淳一文学館
渡辺 ここは歴史のある旅館で、日本画や小説など、数多くの作品が新井旅館で生まれていますね。さっきお茶をいただいたところにも横山大観の作品がありました。お母さんで何代目になるんですか。
先代女将(以下先代)
  私で6代目です。実は主人の兄が5代目ですが、旅館とは別の事業を始め、そちらに専念することになりました。主人は体を壊しまして、慣れない私が6代目を名乗ってやってきました。今はもうお客様のほうは、ほとんど娘に任せて、私は営業とか対外的な会合に出ましたり、皆様とのお付き合いをするというように分業しております。
渡辺 新井旅館そのものの、創業は何年ですか?
先代 明治5年ですので、今年で136年になります。
渡辺 数年前の台風のときに桂川の氾濫で水没し、大変な被害だったそうで。ボランティアが集まって復旧したのは、そういう歴史があるからですね。
女将 台風では確かに床上浸水の被害を受けましたが、復旧作業をしながら改めていろいろな意味で、新井旅館のすばらしさに気づかされました。
渡辺 災い転じて……、いいこともあったと。
先代 かなりの量の水や土砂が入り込んでしまいましたので、心配して東京の建築家の方にみていただきましたが、柱などに狂いがなかったことにとても驚いていらっしゃいました。壁や障子が抜けやすくなっていたり、土台の造りもお寺や神社と同じようにできていて、コンクリートのように頑丈にできていない分、しなやかでかえって耐久性に優れているそうです。
女将 ボランティアの方もたくさんきてくださいました。日頃、お付き合いのある大学の先生がお声をかけてくださり、野球部などの学生さんがきてくださったり、出入りしている業者さんや、TVをみて東京や神奈川の方からも、本当にたくさんの方にお手伝いいただきました。お陰様で2週間ほどで一部を除いて営業を再開することができました。建物のつくりにも、新井旅館が多くの方に愛されているということにも感激しました。
渡辺 いい話だね。みんなの想いがつまっている。ところで、以前からこの場所にあったのですか。
先代 こちらから天城の方に3kmくらい行きましたところに新井という土地があります。新鮮な井戸ということですが、そこで地主をしていました。廻船問屋などをしていましたが、今の温泉場に移りまして、旅館というよりは湯治場として営業を始めました。そして、明治5年に本格的に旅館を始めたようです。
渡辺 それから6代になる。
先代 初代、それから次と、3代目の昭和20年までみな70歳超という年配で、3代目が自身も画家をしていた関係で、建物のことですとか、文化的なことに熱心でした。横山大観さんや安田靫彦さんの作品があるのもそのおかげです。他にも画家の川端龍子さんや、歌舞伎では初代、中村吉右衛門さん、俳人では高浜虚子さん、文人では芥川龍之介さん、泉鏡花さん、幸田露伴さん、川端康成さんなどがお泊りになられて作品も書かれています。3代目とは、特に安田靫彦さんと中村吉右衛門さんと義兄弟の契りを交わす程親しくお付き合いさせていただいたようです。高浜虚子さんとは妻同士が女学校時代の親友だったこともあり、やはり家族ぐるみで親しくしておりました。そして4代目、5代目が割合とすぐに替わっているんです。
渡辺 この規模になったのはいつですか。
先代 私がまいりました時から、ほとんど変わっていないと思います。私がまいりました昭和43年頃には、約45室あり、250人という大勢の方にお泊まりいただいていましたが、昨今は旅行の形態が変わりましたので、団体や大きなグループはございません。建物とか敷地はまったく変わっておりませんが、個人のお客様、それから小グループ用に部屋を変えまして、現在やっております。
渡辺 お嫁さんではなくお嬢さんでしょ。
先代 はい、娘でございます。
渡辺 お母さんとお嬢さんというのは、珍しいね。
先代 そうですね。子供は3人おります。長男はグラフィックデザインの仕事をするようになり、今は東京でやっております。一般的には大体男の子が後を継ぐようですが、娘は小さい頃から「桂子さんが後を継ぐのよね」といわれていたようで、割合と気構えができていました。それでスムーズに。
渡辺 そうですか。でも、お嫁さんよりはお嬢さんのほうが、話しやすくて文句もいいやすいし、いいじゃないですか。
先代 文句をいわれることのほうが多いです(笑)。私は普通のサラリーマンの家庭から嫁ぎましたから、旅館のことは素人でわかりませんでした。娘は多少の心構えがあったせいでしょうか、ものの見方がしっかりしておりまして、怒られることのほうが本当に多いんです。
渡辺 結婚されているんでしょ。
先代 結婚して戻ってきたような。
渡辺 ご主人も一緒に?
先代 はい。
渡辺 それはいいね。
先代 婿は営業と旅館全般のことを見ております。
渡辺 じゃあ、安心ですね。
先代 もう託しましたので、後はどうなるかは娘たちにかかっております。
渡辺 かなり小さい頃から、ここを継ぐのだ、という意識はあったんですか。
女将 継ぐといわれていたので、そうなのかなっていう感じです。でも、嫌じゃなかったんですね。
渡辺 お嫁さんよりお嬢さんが継ぐ方が、すべての点でやりやすいでしょう。
先代 いろいろ事情をお話しするようですが、私がまいりました時に、主人はもう両親がおりませんで、2人兄弟で、主人は営業ですとか、対外的なことをしておりました。兄が慶應大学の工学部を出たものですから、電気や水道といった実際のハード部分を受け持ち、その辺ではうまく兄弟でやっておりました。
渡辺 失礼ですが、今おいくつですか。
先代 63でございます。
渡辺 まだ若いね。ここを継がれる前に、いくらかこちらにいらっしゃったんですか。それともいきなり継いだんですか?
先代 兄も主人もおりました。でも、主人は交通事故に遭いまして、体が不自由になってしまったものですから、私が出るようになったんです。
渡辺 ここ、全部で何坪あるんですか。
先代 3,000坪です。建物はその半分ぐらいで、あとは庭になります。
渡辺 敷地面積が1,000坪以上とは、すごいね。
先代 昔ながらの建物で、高さがない分、横に広くなっていまして、次々と棟を足しています。
渡辺 やっぱりお客さんは、東京の方が多いですか?
先代 そうですね。東京・神奈川のお客様が多いですね。





Photographs by 安井敏雄

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