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一期一会
シェ イノ「一期一会」

シェ イノシェ イノ

百会楽話 ヨーロッパ漂泊
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一期一会
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一期一会

井上旭 (いのうえ のぼる)
1945年、鳥取県生まれ。21歳で単身ヨーロッパに渡り、“トロワグロ兄弟”と出会い「トロワグロ」、パリの「マキシム」で修行する。帰国後「レカン」の総料理長を務め、1984年「シェ・イノ」をオープン。2004年に現在の場所に移る。フランス料理の命ともいえるソースにかけては、日本一という声が高い



渡辺淳一 (わたなべじゅんいち)
北海道生まれ。医学博士。1958年札幌医科大学卒業後、整形外科講師となり、医療のかたわら小説を執筆。1970年『光と影』で直木賞を受賞。1980年に吉川英治文学賞、2003年には菊池寛賞などを受賞。現在文壇の第一線で活躍している。

オフィシャルブログ | 渡辺淳一文学館

渡辺先輩がいたのと同じスイスの店にまず飛び込んだの?紹介状か何か持っていったわけ?
井上ええ。1年契約で行きました。
渡辺チューリッヒはドイツ語でしょう。言葉はどうしたの?
井上ええ、その前に英語を1年習っていたんですけど、ドイツ語圏でしたから、何も通じなくて大変だった。ほんと3ヵ月ぐらい目いっぱいドイツ語勉強ました。
渡辺それでチューリッヒの店で働けたの。
井上ええ、スイス人だけどフランスに行ったことのあるシェフだったので、相当理解があったんです。料理はどこに行っても徒弟制度で、フランスは特にそうですから。まあ、僕にちょっとやらせたら、技術的にはすぐに追いついたからだと思いますが。
渡辺料理はやっぱり徒弟制度か。ヨーロッパに行っても負けないっていう自信あったの?
井上いや、ここで自信を持ちました。あとは語学だと思って。やっぱり語学ができないと仕事にならないですから。何でも命令形ですからね。
渡辺泊まっているところはどこだったの?
井上寮がありました。食べることと泊まるところは、向こうのレストランが用意してくれましたから。
渡辺そこから、その後フランスに動くわけでしょ。
井上それが、1年契約の終わり近くなって、せっかく覚えたドイツ語をもうちょっと完成させようと思って、ドイツのビースバーデンっていうところに行ったんですね。フランクフルトから30kmぐらいの町に半年いました。ここはカジノなんですよ、ビースバーデンって。バーデンっていうのは保養地、バーデンバーデンもありますけど。仕事はそんなに勉強にならなかったけど、ドイツ語はうまくなりました。
渡辺そこは世界各国からいろいろな人が来ているの?
井上そうです。
渡辺これで、やっとフランスか。
井上いえ、僕は夢を持ってフランスに行こうと思っていましたから、フランス語がしゃべれないと夢を保てないでしょ。それでフランス語修行のためにベルギーに行ったんですよ。ベルギーはドイツ語も通じるし、フランス語もできる。アトランタホテルに入ったんですけど、そこのホテルは帝国ホテルの村上ムッシュも行っているし、僕の先輩の品川のパシフィックホテルのシェフも、ディズニーランドの総料理長も行っているんです。彼ら3選手は優秀なんですよ。僕も負けられないわけ。
でも、シェフは、「何でおまえがドイツ語ができるんだ?」と、わざとドイツ語を話してくれないのよ。で、いつも暇なんです、残り物で。
オペラがある時は、僕はオペラ座のレストランに派遣される。員数外ですから。たまたま、お客さんが150人ぐらい来たんですね。普通は20、30人で、ステーキを焼いたり、たいした料理じゃないですが、僕1人で150人分の料理を作った。その時に、たまたまホテルの総支配人が来ていたの。
 それまでね、先生、僕が朝「ボンジュール、シェフ」って言うじゃないですか。でも鼻にも掛けないんですよ。まあ、それはしょうがないと思って、半年ぐらい言い続けていました。それが、次の朝にシェフが向こうから、手を握って、「ムッシュ!」って、ムッシュを付けてくれた。とんでもない話ですよ。感動しました。
渡辺150人の料理をうまくやったから?
井上はい。僕と、洗い場のおばさんともう1人。総支配人が、皿運びして。その人数だと材料がなくなるから、ホテルに電話して「持ってこい!」って。それでも、また明日から冷たくされるんだろうと思ったんですけれど(笑)。でもあの時の感動は大きかった。始めのスイスにいた時から、ずっと意地悪をされてていましたから。





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“シェ・イノ”のランチ・ディナーは「一休.com」から予約できます
井上シェフはヨーロッパに料理修行に行く。どこでも評価された

   Photographs by Toshio Yasui




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