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一期一会

銀鱗荘(小樽)百会楽話 [対談18]銀鱗荘

一期一会
銀鱗荘
1 第1話 第3話 第4話 第5話

2. 鰊で一攫千金

百会楽話 渡辺淳一 × 銀鱗荘 オーナー
百会楽話 渡辺淳一 × 銀鱗荘 オーナー
百会楽話 渡辺淳一 × 銀鱗荘 オーナー
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百会楽話 渡辺淳一 × 銀鱗荘 オーナー
百会楽話 渡辺淳一 × 銀鱗荘 オーナー
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木村襄司(きむら じょうじ)
昭和5年神奈川県生まれ。慶應大学文学部卒。出版社(モーターマガジン社、ゴルフダイジェスト社)、東名カントリークラブ(静岡県)、小樽・銀鱗荘(北海道)オーナー。趣味は、ゴルフ、将棋、ブリッジ


渡辺淳一(わたなべ じゅんいち)
北海道生まれ。医学博士。1958年札幌医科大学卒業後、整形外科講師となり、医療のかたわら小説を執筆。1970年『光と影』で直木賞を受賞。1980年に吉川英治文学賞、2003年には菊池寛賞などを受賞。 北海道・札幌に渡辺淳一文学館がある。作品には「阿寒に果つ」「無影燈」「白夜」「ひとひらの雪」「失楽園」など多数。現在文壇の第一線で活躍している。

オフィシャルブログ | 渡辺淳一文学館
渡辺 小樽はまた、海産物はもちろん、野菜もおいしいから。
木村 そうですね。ですから、お出しする料理は北海道産の食材を使っています。
渡辺 今北海道は、全体的には地盤沈下して不景気だから、こういう旅館を魅力的に宣伝して、道外の客を呼んでほしいね。僕は札幌出身なんだけど、くるたびに北海道は元気がなくなっている気がする。
木村 新館を建てた時は、地元の建築会社を使うべきだということで、伊藤組にお願いしたんですが、そこの営業課長が、北海道の人が食事で気にするのは、一番最初が値段、その次がボリュームで、3番目に味なんだと、こういうことをいうんです。
渡辺 北海道は素材がいいから、あまり料理が発達しなかったところですよ。
木村 それもあるんですね。
渡辺 新鮮なものがたくさんあって、素材だけで十分だった。下手に料理するとかえってまずくなるから、素材なら素材に徹すればいいんで。
木村 素材を生かして、あまり手を掛けずにおいしく食べさせるというのが料理人の腕です。腕の悪い料理人に限ってこねくり回すんですよ。
渡辺 東京の創作和食なんてまずくて、下手に創作するなっていいたいですね。
木村 そうなんです。
渡辺 素の味がわかっていない。
木村 素材のおいしさを引き出して、料理してほしいですね。
渡辺 北海道は、戦後間もなく北海道開発庁ができたんです。それは北海道の知事に田中敏文っていう人がいましてね。社会党だったんですよ。そのため、国が北海道開発の金を社会党の知事に渡したくなくて、開発庁をつくった。それ以来、北海道・沖縄開発がメインテーマで、ずっと国が膨大な金をつぎ込んできた。おかげで北海道は土建工事だけに頼るようになって。国の予算を分捕るだけになってしまった。それで北海道は国に頼りぐせがついて、オリジナリティを失ってしまった。しかも今、北海道は北のどん詰まりなんです。九州は、東南アジアと密接につながっているでしょう。だからもっと北海道は、シベリアとかサハリン千島とか、積極的につながらなきゃいけないんだけど、そういう発想がない。
木村 もっともこれまでシベリアなんかは貧しかったですけど、これからよくなるんじゃないですか、石油が出だして。
渡辺 それもあるし、中国領の旧満州も素晴らしい。そういうところと密接につながって活性化しないと駄目だなあ、北海道は。
木村 自由な発想が必要ですね。
渡辺 銀鱗荘は、もっと鰊漁の歴史を表に出したらいいんじゃないかと思うんです。昔の鰊漁がどれほど一獲千金だったかということを。あのころの写真なども集めてわかりやすくね。これだけの御殿を作った鰊長者っていうのは、いかに豪勢だったかと。僕の親戚に塩谷の網元がいましてね。その頃のことを一度、小説に書こうかと思って調べたんだけど、すごかった。ソーラン節って、漁師を夜通し眠らせないための歌なんですよ。もう鰊がきたら、青い海が一気に乳白色に変って、夜通し徹夜で、ひたすら捕り続けるんだから。労働者が寝ると捕りそこなう。それで歌を作った。歌わせておけば寝ないから。
木村 銀鱗荘に望楼がありますが、そこにのぼって、鰊が押し寄せてくる様を見ていたんでしょうね。望楼は釘1本使わずに、強風に耐えられるようにくふうされているんですよ。
渡辺 それから、浜に打ち揚げられた鰊を魚工場の前までは、木箱を背にした女性たちが運んだ。それを夜通しやっていて、そこでうっかり休んだ人が、後に鰊の山から死体になって出てきたという話もあったぐらい。ほんの2ヵ月で膨大な利益を得たんだから。
木村 小樽には銭函っていう地名があるくらいですからね。
渡辺 2ヵ月しか働かないから、鰊の網元の長男はろくなものではないという評判でした。あとは酒だけ飲んでいるわけだから。そういう、かつての隆盛を極めた一獲千金の話と歴史が現実にあった。かつて日本に、そういうものがあったという話はいろいろな人をわくわくさせるから、説明づきの写真と一緒にぜひ出してほしい。網元は、滋賀の豪商などもいて、労働者は全部東北なんだけどね。この豊かな鰊漁の話をくわえないと、「銀鱗」という意味がわからない。
木村 豊漁を祈った二間半の大神棚が、正面玄関の右の大広間にあります。これも、銀鱗荘の象徴的なものです。
渡辺 大漁を祈り、たくさん獲れるたびにお供え物が増えたんでしょうね。
木村 魚族供養のため、大漁藍観音像もありますね。私がここを買って一番最初にびっくりしたのは、豪快な絵です。立派な鮭の絵、こういう大きな絵に大胆な構図のものは、どこに行ってもないですね。それほど有名な作家ではないけど、これだけの大きさのものを魚で描くのは迫力があります。部屋の入り口に、それぞれアイヌだの何だのの絵が掛かっていますが、ああいうところもやっぱりいいなと思って残して飾っています。
渡辺 鰊が岸に押し寄せてきた時、浜辺のあちこちに鰊が拡がっていたようで。僕が小学生の頃、食べるものがなくて浜辺に行くと、鰊をスコップでバケツに入れてくれたもの。
木村 夕食に鰊の蒲焼きが名物で出るんですが、普通では骨っぽくてあまり食べないですよね。身欠き鰊でおいしくないし。お出しするのは、おいしいですから召し上がってください。
渡辺 昔の鰊はうまかったなあ。脂がギラギラして、七輪で焼くと火が燃え上がってね。それに比べて今の鰊は、脂がなくて食べられない。

料亭旅館 銀鱗荘は一休.comからご予約いただけます。


Photographs by 和田直樹

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