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一期一会

銀鱗荘(小樽)

百会楽話 [対談18]銀鱗荘
一期一会
銀鱗荘
1 第2話 第3話 第4話 第5話

1. 古きよき時代が見える

百会楽話 渡辺淳一 × 銀鱗荘 オーナー
百会楽話 渡辺淳一 × 銀鱗荘 オーナー
百会楽話 渡辺淳一 × 銀鱗荘 オーナー
百会楽話 渡辺淳一 × 銀鱗荘 オーナー
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百会楽話 渡辺淳一 × 銀鱗荘 オーナー
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百会楽話 渡辺淳一 × 銀鱗荘 オーナー
百会楽話 渡辺淳一 × 銀鱗荘 オーナー
百会楽話 渡辺淳一 × 銀鱗荘 オーナー
木村襄司(きむら じょうじ)
昭和5年神奈川県生まれ。慶應大学文学部卒。出版社(モーターマガジン社、ゴルフダイジェスト社)、東名カントリークラブ(静岡県)、小樽・銀鱗荘(北海道)オーナー。趣味は、ゴルフ、将棋、ブリッジ


渡辺淳一(わたなべ じゅんいち)
北海道生まれ。医学博士。1958年札幌医科大学卒業後、整形外科講師となり、医療のかたわら小説を執筆。1970年『光と影』で直木賞を受賞。1980年に吉川英治文学賞、2003年には菊池寛賞などを受賞。 北海道・札幌に渡辺淳一文学館がある。作品には「阿寒に果つ」「無影燈」「白夜」「ひとひらの雪」「失楽園」など多数。現在文壇の第一線で活躍している。

オフィシャルブログ | 渡辺淳一文学館
渡辺 いやあ、銀鱗荘まできたかいがありましたよ。外観は重厚な瓦葺の建物で、また眺望が素晴らしい。
木村 ありがとうございます。家紋入りの若狭瓦葺の屋根です。
渡辺 それにしても、ここをまたどうして。
木村 昭和60年、こちらに住んでいる知人が「小樽に大変景色のいい鰊御殿の売り物が出ているけど買いませんか?」っていうわけですよ。 岬の先端で、景色は素晴らしいけど、建物はボロだって。景色がいいなら買ったらいいじゃないかって、安かったから一度も見ずに買っちゃったんです。 で、きたらまあボロボロでびっくりしちゃいましてね。温泉もなければ何もないんですよ。建物もここ本館と蔵の二つだけで、部屋にトイレもないし、とてもまともな旅館としては使えない状態でした。 北海道の旅館だったら温泉がなくちゃしょうがないというので、翌年に温泉を掘り、露天風呂を作りました。明日の朝、ごらんになってください。
渡辺 今、見てきましたよ。小樽の港から日本海が見渡せて。
木村 一つ何十トンという石を北海道中から集めて組み込んで露天風呂を作りました。とにかく最初は、こんな施設にお客さんがみえるかな? と思ったぐらいにひどかったですね。
渡辺 銀鱗荘って、その頃から呼ばれていたんですか。
木村 銀鱗荘という名前は、昭和14年に前の持ち主、当時の北海道開発庁長官の石黒英彦さんが命名されたんです。 もともと明治6年に鰊の大網元、越後出身の猪股安之丞が余市に邸宅として建てた建物を、昭和13年から14年にかけて現在の場所に移築して、 その年から割烹旅館・銀鱗荘として細々と営業していたと聞いています。
渡辺 じゃあ、相当の投資をされたんですね。
木村 買値の何十倍も。もともと素人でこういうことをやったことがないですから、気持ちのいいことをしないと気に入りません。 自分が納得いくように、何から何まで見て、いちいちこれにしよう、あれにしようと全部やったんですよ。非日常的な世界を作ろうということで。 ですから、まあお客さんがいらして、本当によかったと思ってお帰りいただければ、それでいいんです。
渡辺 じゃあ、新館もできて、今の形になったのはいつですか。
木村 最終的には去年。本館の玄関からずっと全部やり替えました。すべてムク材を使い、中庭もきれいにしました。ちょうどその頃、 耐震強度の問題が世間で騒がれていた時期で、調べさせましたら、補強したほうがいいと。玄関から広間を挟んでグリルまでは、恐らく明治時代からのものですが、 ほかは昭和14年に移築した時に建てられたものだと思います。建物はお神楽で通し柱がなかったんですよ。これじゃあ困るというので、全部はがして、吉野の檜の八寸角の通し柱を7本買って、 全部通し柱を入れ直しました。それが一番最後の手直しです。
渡辺 大変な作業ですね。なかでもグリルには、古い梁がいっぱいあるじゃないですか。
木村 実は、あそこは鰊の網、魚網をしまっておく倉庫だったんです。そこを改装して、下をフレンチのレストラン、上をバースペースにしました。
渡辺 小樽に古くからある海陽亭も海際で広いお座敷があって、素敵だけど、こちらはさらに温泉もあって。
木村 非常に温泉の質がよくて、泉質はナトリウム硫酸塩泉で、特に腰痛の方には効能大なんだそうです。札幌在住の温泉博士、松田忠徳さんにも高評価をいただきました。
渡辺 眺望が南国風で柔らかい。やっぱり屈斜路とか阿寒とかではこの眺望は見られないよ。景色のよさは、ちょっとないぐらい素晴らしい、さすがにこればかりは、きてみないとわからないね。
木村 特に景色は、皆さんから気に入っていただいてます。
渡辺 もう少し東京のほうに宣伝しなくては。
木村 そうですね。
渡辺 今度、エッセイにでも書いておきますよ。
木村 ぜひ、お願いします。とにかく私は客商売が下手なんです。旅館業はやったことがないので、料金の設定もわかりません。 まあこのぐらいだろうってやったんですが、通年同じ料金にしているんです。普通は、お盆やお正月、ゴールデンウィークとかは高くして、それでシーズンのいくらか外れた時は安くしている。 日本中ほとんどそうみたいですが。
渡辺 とくに北海道はね。
木村 どうも私は、それが納得いかないんですよ。同じ部屋で同じ料理をお出しする以上は、やっぱり同じ料金をいただくべきなんじゃないかと。
渡辺 でもそれは考えようでね。
木村 そういうところが商売人じゃないんですね。気分的に嫌なんです。混むからお安くするっていうならまだいいですけど。 たしかにゴールデンウィークやお盆は、真っ先に部屋が埋まります。だからといって値段を上げるのは、失礼な気がして。
渡辺 じゃあ、お客さんの少ない冬は下げるとか。
木村 そうですね! でも、1月のお正月過ぎから4月の半ばまでは、クローズしているんです。
渡辺 僕はね、北海道の冬の日本海って荒々しくて、雪の断崖絶壁のある景色もそれはそれで、すてきだと思う。
木村 ものすごく寒さが厳しいんですよ。前に一度、建物を直す関係で4月半ばにきたことがあるんですが、もう寒くて寒くて、ストーブを焚いたって何をしたって、とてもじゃないけど居られないんです。 ですから毎年4月中旬にオープンし、1月10日頃、お正月過ぎに閉めているんです。
渡辺 ゴルフ場と同じですね。
木村 北海道のゴルフ場はだいたいそうですね。雪が積もれば、雪解けの春先までクローズします。
渡辺 ゴルフ場は文化の日ぐらいから、ゴールデンウィークの手前までクローズですよね。しかし、壮大な道楽ですね。
木村 道楽でも、美術館を建てて何百億の美術品を買うのに比べれば、規模がぜんぜん違います。別荘を持ったと思えば。
渡辺 やはり、オーナーじゃないとできませんね。
木村 まあそういうことでいいんじゃないかと思っていますけど(笑)。静岡県で親しくしているあるゴルフ場オーナーは、毎年自分がオーナーの日本平のホテルで、 一万発もパッパカパッパカ花火を上げるんです。大変な持ち出しですよ。景気が悪くなったからって、いまさらやめられないって、今でも毎年続けてます。 だけど少しは、そういうことをする人もいないと、日本は何かギスギスお金もうけばかりでね。それで採算が悪くなるとすぐにやめたり、売ったりする。 少しは採算を度外視して、気持ちのいいことをやるのもいいんじゃないかなと思っています。
渡辺 銀鱗荘っていう名前は知っていたけど、実際には泊まれないんじゃないかなって思っていたんです、今まで。
木村 お話したように、昔はひどかったんです。ですから、できることはホスピタリティしかないっていうことで、支配人がこれを徹底的によくするようにしました。 いまだにお客さんから素晴らしいという評判をいただいています。施設をある程度整えるまで、それ以外に生きる道がなかったですから。
渡辺 仲居さんや従業員のみなさんも、とても感じがいい。サービスがよくて、立地条件もよくて、建物のいろいろなところに、古きよき時代の遺産が残されていて、みな納得すると思いますね。

料亭旅館 銀鱗荘は一休.comからご予約いただけます。


Photographs by 和田直樹

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