| 渡辺 |
それにしても、この名前が堂々としているというかすっきりしているね、“旅館くらしき”って。 |








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| 中村 |
そのまんまですから、ひねりようがないですね。 |
| 渡辺 | 名前を聞いただけで、倉敷で一番の旅館ってわかるよ。 |
| 中村 |
こちらの字は芹沢_介先生から先代がいただいて、大事にしておられたものです。今でいうロゴというんでしょうか。芹沢先生は非常に倉敷になじみのある方で、大原美術館が別館を設けて展示しておられるので、ぜひそちらもご覧いただければと思います。別館の蔵の一群は先生がデザインされたようです。ご自身のところだけベンガラで真っ赤に塗られた壁で展示館を建てておられると聞いております。 |
| 渡辺 |
でも、女将さんをやっていると、気持ちの休まる暇がないでしょ。 |
| 中村 |
はい。朝出勤前にニュースを見て、火事の話があったりしますでしょ。一番の原因は放火だそうで。 |
| 渡辺 |
心配だね、こんないい建物だから。 |
| 中村 |
我が身よりもそちらがそわそわします。私、主人が広島におりまして、ほったらかしなんです。もうこちらに両足がすっぽりです。尋ねられたら倉敷では未婚です。 |
| 渡辺 |
いいじゃない、遠距離恋愛で。 |
| 中村 |
都会で二人とも仕事をしていると、どちらかが転勤の場合に、一緒にいたいから一緒にいますという方も少ないと思いますが、地方では一緒にいることがあたりまえですが、やり始めたら没頭してしまうんで、旅館中心になってしまって。 |
| 渡辺 |
それはそうだよね。 |
| 中村 |
大変迷惑をかけております。(笑) |
| 渡辺 |
他の旅館に行かれることはありますか。 |
| 中村 |
今は少なくなったのですが、オープン前は、行かせていただきました。つい、これもこれもこれもと欲張って、メモを取っていくうちに、お客様がどう思うかを体験しに行ったつもりが、ただの点検屋になってしまって、これっていかんなと思うんですが、ついついやめられないですね。でも、俵屋さんにおうかがいした時は、それを忘れさせてくださったほど、季節のしつらえがとてもすてきだったので、その時ばかりはその雰囲気に圧倒されました。また先日、厨房の者が京都の柊家さんにお料理の勉強に泊まりに行かせていただいて、感動して帰ってきました。可能なかぎり他にもいきたいなとは思っています。 |
| 渡辺 |
まあ有名な旅館もいいけど、ここは倉敷なんだから、倉敷らしいのがいいよ。このあたりの山のものや海のものを出せば、みんな満足するはず。ここは倉敷ですから、といっていればいいんですよ。 |
| 中村 |
料理人も、経営が変わって高松からまいりました。今は流通が本当に便利ですから、おいしいものを全国、世界から取り寄せることができるのを知っている料理人に地産地消、地元のおいしいものをどうお客様にお届けするのかを理解してもらうのは難しかったんですが、今はわかってもらっています。 |
| 渡辺 |
東京にいれば何でも手に入るんだから、逆にいえば、倉敷に行ったら倉敷らしいというものが嬉しいし、くつろぐんでね。どこに行っても京懐石だと特徴がなくなってしまう。 |
| 中村 |
もう素朴な町ですから、倉敷は。 |
| 渡辺 |
この辺は、海の幸も山の幸も豊かそうだね。 |