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一期一会

旅館くらしき旅館くらしき

一期一会
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一期一会 一 二 三 五

四. 倉敷らしさの演出


渡辺 それにしても、この名前が堂々としているというかすっきりしているね、“旅館くらしき”って。 百会楽話 旅館くらしき 表札

百会楽話 旅館くらしき 館内の様子1

百会楽話 旅館くらしき 館内の様子2

百会楽話 旅館くらしき 館内の様子3

百会楽話 旅館くらしき 対談風景
中村 そのまんまですから、ひねりようがないですね。
渡辺名前を聞いただけで、倉敷で一番の旅館ってわかるよ。
中村 こちらの字は芹沢_介先生から先代がいただいて、大事にしておられたものです。今でいうロゴというんでしょうか。芹沢先生は非常に倉敷になじみのある方で、大原美術館が別館を設けて展示しておられるので、ぜひそちらもご覧いただければと思います。別館の蔵の一群は先生がデザインされたようです。ご自身のところだけベンガラで真っ赤に塗られた壁で展示館を建てておられると聞いております。
渡辺 でも、女将さんをやっていると、気持ちの休まる暇がないでしょ。
中村 はい。朝出勤前にニュースを見て、火事の話があったりしますでしょ。一番の原因は放火だそうで。
渡辺 心配だね、こんないい建物だから。
中村 我が身よりもそちらがそわそわします。私、主人が広島におりまして、ほったらかしなんです。もうこちらに両足がすっぽりです。尋ねられたら倉敷では未婚です。
渡辺 いいじゃない、遠距離恋愛で。
中村 都会で二人とも仕事をしていると、どちらかが転勤の場合に、一緒にいたいから一緒にいますという方も少ないと思いますが、地方では一緒にいることがあたりまえですが、やり始めたら没頭してしまうんで、旅館中心になってしまって。
渡辺 それはそうだよね。
中村 大変迷惑をかけております。(笑)
渡辺 他の旅館に行かれることはありますか。
中村 今は少なくなったのですが、オープン前は、行かせていただきました。つい、これもこれもこれもと欲張って、メモを取っていくうちに、お客様がどう思うかを体験しに行ったつもりが、ただの点検屋になってしまって、これっていかんなと思うんですが、ついついやめられないですね。でも、俵屋さんにおうかがいした時は、それを忘れさせてくださったほど、季節のしつらえがとてもすてきだったので、その時ばかりはその雰囲気に圧倒されました。また先日、厨房の者が京都の柊家さんにお料理の勉強に泊まりに行かせていただいて、感動して帰ってきました。可能なかぎり他にもいきたいなとは思っています。
渡辺 まあ有名な旅館もいいけど、ここは倉敷なんだから、倉敷らしいのがいいよ。このあたりの山のものや海のものを出せば、みんな満足するはず。ここは倉敷ですから、といっていればいいんですよ。
中村 料理人も、経営が変わって高松からまいりました。今は流通が本当に便利ですから、おいしいものを全国、世界から取り寄せることができるのを知っている料理人に地産地消、地元のおいしいものをどうお客様にお届けするのかを理解してもらうのは難しかったんですが、今はわかってもらっています。
渡辺 東京にいれば何でも手に入るんだから、逆にいえば、倉敷に行ったら倉敷らしいというものが嬉しいし、くつろぐんでね。どこに行っても京懐石だと特徴がなくなってしまう。
中村 もう素朴な町ですから、倉敷は。
渡辺 この辺は、海の幸も山の幸も豊かそうだね。
中村 もう少ししたら筍がよかったんですが、今日は間に合わなくて。最後の方に出てまいりますが、ママカリというのが岡山では名物です。小魚が中心の瀬戸内の魚介です。
渡辺 あれうまいよね、ママカリって。倉敷と高松で、言葉は違いますか。
中村 違います。倉敷は岡山弁で、まだマスターができていないのですが。
渡辺 その特徴って何ですか。
中村 讃岐弁ですと、関西弁に近い形ですが、岡山の場合は広島寄りのイントネーションです。同じように○○じゃけんっていうんですけど、高松はやけんという、こちらの方は多分じゃけんと。無理してまねようとすると、私は学校が広島だったので、広島弁まで飛んでいってしまって、もうどうしようもない状態です、今は。
渡辺 高松に生まれて、広島の大学を出て、倉敷にきたと。
中村 そうです。親元を離れていたのが、日本では学生の時の広島だけで、高松しか知らなくて、そこが天下だと思って暮らし、田舎者だとも思わずにおりました。(笑)
渡辺 『一期一会』でこの前に掲載した“三養荘”の女将さんと立場が似ているね。
中村 そうですね。ちょうど加賀屋さんにおじゃましている時は、1年前に若女将が嫁がれてこられた時で、やっぱり一から始めなければならないことは同じでがんばっておられました。
渡辺 娘とかお嫁さんがいいかっていうと、そうでもないと思うよ。それなりの我侭もあるし、煩わしさもあるだろうから。
中村 女将として取り組む内容は変わらないですね。そう思い、叱咤激励しながら、自分でやっているものの、やはり教わる方がいないのが難しいです。
渡辺 ここはあなたがきた時に、古い女中さんはいらしたんですか。
中村 はい、前から勤めている方が。
渡辺 だんだん話を聞いていると、朝のテレビ小説の主人公になりそうだ。(笑)

百会楽話 旅館くらしき お食事


中村律子(なかむら りつこ)
旅館くらしき 女将

1973年生まれ。穴吹興産に就職し11年間勤務する。2006年7月より「旅館くらしき」の女将となる。



渡辺淳一(わたなべ じゅんいち)
北海道生まれ。医学博士。1958年札幌医科大学卒業後、整形外科講師となり、医療のかたわら小説を執筆。1970年『光と影』で直木賞を受賞。1980年に吉川英治文学賞、2003年には菊池寛賞などを受賞。北海道・札幌に渡辺淳一文学館がある。作品には「阿寒に果つ」「無影燈」「白夜」「ひとひらの雪」「失楽園」など多数。現在文壇の第一線で活躍している。

オフィシャルブログ | 渡辺淳一文学館



旅館くらしき」は一休.comからご予約いただけます。

Photographs by 安井敏雄

一期一会


第15回 清水かほる(ベネッセハウス副総支配人) …「よく生きる」ことを考える場所
第14回 勝俣伸(富士屋ホテル社長) …かごで上ったアジアンテイストのホテル
第13回 岩村尚子(岩惣 先代女将)・岩村玉希(岩惣 女将) …光雅と静寂の神の島
第12回 中村律子(旅館くらしき女将) …美しき蔵の町の蔵の宿
第11回 向井聖子(三養荘女将) …財閥の別邸
第10回 北山ひとみ(二期リゾート 代表取締役) …十八世紀フランスのサロンを目指す
第09回 西村明美(柊家女将) …京都は京都らしく
第08回 マルコム・トンプソン(ザ・ペニンシュラ東京 総支配人) …日本に学んだおもてなしの心
第07回 星野佳路(「星野リゾート」社長) …世界のリゾートを向こうに
第06回 齋藤朝子(海石榴大女将) …万葉の湯
第05回 石川修(ホテル ニドム社長) …ニドム カムイに授かりし森
第04回 岡副徳子(金田中若女将) …新橋の花柳界を守る金田中
第03回 浅羽愛子(伊豆・あさば女将) …「あさば」はあくまで「あさば」である
第02回 井上旭(シェ イノ シェフ)  …45年間、支持され続けた料理
第01回 古谷青游(熱海・伊豆山・蓬莱女将) …日本で一番早く春が来るところ


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