Web Magazine TOP > 百会楽話
一期一会

旅館くらしき旅館くらしき

一期一会
一期一会
一期一会 一 三 四 五

二. 文化財を残す責任


渡辺 普通、倉敷っていうと、白壁の蔵が並ぶ風情のある景色ばかりを思うけど、水島コンビナートがあって、工業都市でもあるんだね。水産業も盛んだし。 百会楽話 旅館くらしき 女将

百会楽話 旅館くらしき 庭園

百会楽話 旅館くらしき 玄関

百会楽話 旅館くらしき 館内の様子
中村 そうです。また、美観地区も、もともと明治末期、日本有数の紡績会社社長の大原孫三郎様が、広い意味のメセナのような考え方をいち早くお考えになられて、美術館等の文化施設を造られ、戦後も街並みを保存することに力を入れられた結果です。商人産業の町が倉敷の前身ということで、それなくしては今の芸術と歴史の街は、なかったとうかがっております。
渡辺このあたりの街並みは、風致地区っていうか、保存地区なんですね。
中村 美観の保存地区でございます。正確には「重要伝統的建造物群保存地区」として外観は許可なしには木1本いじってはいけないといわれます。中も、文化財指定を受けておられるお宅は変えられません。ただ私どもは、先代が砂糖問屋から旅館にさせていただく際に、建築家の浦辺鎮太郎先生による改築をさせていただいていますので、それがなければ、比較的新しい個所は別として、古い個所は指定を受けたかもしれないとお聞きしています。ところで、先生は倉敷は初めてですか?
渡辺 いや、20年ぐらい前にアイビースクウェアができた時に、講演会できています。
中村 倉敷は大きな病院があって、医療関係の方は学会などでよくこられる町だとお聞きしていました。それでお越しになられたことがあるかしらと思っていたのですが。
渡辺 こんな風情のあるお部屋を、こんなに大きくゆったりと使って、これで経営は大丈夫ですかって、余計な心配をしてしまうけど。(笑)
中村 先生の指摘いただいたとおり、宿泊のみですと、しょせん5部屋ですので全室が満室になっても、難しいことがあり、稼働率もかなり重くのしかかっております。今は、地元の方のご宴会に多く使っていただいているお座敷、そしてレストランの営業、テナントでお貸ししている蔵と、多角経営により収益とリスクを分散しております。それも立地に恩恵を被ってできることだとひしひしと感じます。
渡辺利益追求より、こういう文化財を大切に残していくという気概をとても感じるね。
中村 ありがとうございます。
渡辺 もうかればいいという感じとは、ちょっと違うね。
中村 やはり企業ですので、赤字ばかりを出して存続し得ないということは、建物などをお預かりしているものの責任をまっとうできないことなので、維持をしていく体質を早く安定させなさいという指示を受けております。それがなければ、倉敷の地元のお客様もついてきてくださらないと思います。
渡辺 夜は観光客の方は、街をぷらぷら散歩されますか?
中村 はい。今は季節的に少ないですが、ホテルに泊まられているお客様も、お食事の後にそぞろ歩いて、巡ってくださいます。
渡辺 もう少し暖かくなるといいね。
中村 石井幹子先生という照明デザイナーが倉敷に招かれて、街灯に明るめの光を仕込んでくださって、壁を照らして白壁自体を浮かび上がらせるイルミネーションを始めておりまして、そのイルミネーションを見にみなさんきてくださいますね。
渡辺 旅館前の運河に映るのが美しいね。
中村 街並みに沿うように、街が浮かび上がるようにという意図なので、どこでやっているんですかっていうお問い合わせをたくさんいただいて、この状態がそうなんですってお答えすると、きょとんとなさいますけど。(笑)
百会楽話 旅館くらしき 対談の様子

百会楽話 旅館くらしき 夜のライトアップ

百会楽話 旅館くらしき 旅館内の様子


中村律子(なかむら りつこ)
旅館くらしき 女将

1973年生まれ。穴吹興産に就職し11年間勤務する。2006年7月より「旅館くらしき」の女将となる。



渡辺淳一(わたなべ じゅんいち)
北海道生まれ。医学博士。1958年札幌医科大学卒業後、整形外科講師となり、医療のかたわら小説を執筆。1970年『光と影』で直木賞を受賞。1980年に吉川英治文学賞、2003年には菊池寛賞などを受賞。北海道・札幌に渡辺淳一文学館がある。作品には「阿寒に果つ」「無影燈」「白夜」「ひとひらの雪」「失楽園」など多数。現在文壇の第一線で活躍している。

オフィシャルブログ | 渡辺淳一文学館



旅館くらしき」は一休.comからご予約いただけます。

Photographs by 安井敏雄

一期一会


第15回 清水かほる(ベネッセハウス副総支配人) …「よく生きる」ことを考える場所
第14回 勝俣伸(富士屋ホテル社長) …かごで上ったアジアンテイストのホテル
第13回 岩村尚子(岩惣 先代女将)・岩村玉希(岩惣 女将) …光雅と静寂の神の島
第12回 中村律子(旅館くらしき女将) …美しき蔵の町の蔵の宿
第11回 向井聖子(三養荘女将) …財閥の別邸
第10回 北山ひとみ(二期リゾート 代表取締役) …十八世紀フランスのサロンを目指す
第09回 西村明美(柊家女将) …京都は京都らしく
第08回 マルコム・トンプソン(ザ・ペニンシュラ東京 総支配人) …日本に学んだおもてなしの心
第07回 星野佳路(「星野リゾート」社長) …世界のリゾートを向こうに
第06回 齋藤朝子(海石榴大女将) …万葉の湯
第05回 石川修(ホテル ニドム社長) …ニドム カムイに授かりし森
第04回 岡副徳子(金田中若女将) …新橋の花柳界を守る金田中
第03回 浅羽愛子(伊豆・あさば女将) …「あさば」はあくまで「あさば」である
第02回 井上旭(シェ イノ シェフ)  …45年間、支持され続けた料理
第01回 古谷青游(熱海・伊豆山・蓬莱女将) …日本で一番早く春が来るところ


もどる


eTBT
思い出特派員