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一期一会

旅館くらしき旅館くらしき

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一. 畠山家の遺産


渡辺 いつから女将さんをなさっているんですか。 百会楽話 旅館くらしき 玄関

百会楽話 旅館くらしき 女将

百会楽話 旅館くらしき 館内の様子
中村 約1年半過ぎましたが、新米も新米の女将でございます。甘えちゃいけないと思いながらも、何かにつけて先代にお尋ねする日々です。
渡辺どこのご出身?
中村 私は四国の高松です。近くといえば近くなんですが。
渡辺 今、入ってチラッと見ただけだけど、聞きしに勝る旅館だね。外観から内部の隅々まで美術館みたいで。
中村 特にこのお部屋は、改装時もほとんど手をかけていないお部屋でして、「東の間」という部屋名もそのまま使わせていただいております。
渡辺 聞くところによると、砂糖の商いをやられていた方が持っていたお屋敷だとか。
中村 はい、米蔵を改造して、1階を「東の間」、2階を「巽の間」として使っております。約250年前の蔵といわれています。
渡辺重厚な蔵の感じがよく生かされている。今は5部屋だけだから、今日の取材スタッフが泊まると、ほとんど占領してしまう。
中村 部屋数が少ないんです。
渡辺 以前はもっと部屋があったんでしょう?
中村 改装前は今、お座敷で使わせていただいているお部屋と客室と境がなかったので、17部屋ございました。2部屋を1部屋にさせていただくなどで客室を大きくし、お風呂とお手洗いがありませんと外国のお客様をはじめ難しくなっておりまして、そのしつらえをして、お座敷のみのお部屋は宴会だけのご利用にさせていただいて、完全に動線も分けました。
渡辺 普通は、大きい部屋を小さくして、たくさんのお客を収容できるようにするけど、豪華な改装ですね。
百会楽話 旅館くらしき 倉敷の街並み

百会楽話 旅館くらしき 館内の様子

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百会楽話 旅館くらしき 料理イメージ


中村律子(なかむら りつこ)
旅館くらしき 女将

1973年生まれ。穴吹興産に就職し11年間勤務する。2006年7月より「旅館くらしき」の女将となる。



渡辺淳一(わたなべ じゅんいち)
北海道生まれ。医学博士。1958年札幌医科大学卒業後、整形外科講師となり、医療のかたわら小説を執筆。1970年『光と影』で直木賞を受賞。1980年に吉川英治文学賞、2003年には菊池寛賞などを受賞。北海道・札幌に渡辺淳一文学館がある。作品には「阿寒に果つ」「無影燈」「白夜」「ひとひらの雪」「失楽園」など多数。現在文壇の第一線で活躍している。

オフィシャルブログ | 渡辺淳一文学館

中村 ご高齢の方や外国のお客様も増え、ベッドのあるお部屋のご要望が多くなりました。
渡辺 やはりベッドとバスルームがないとね。
中村 そうはいっても、旅館ですから畳の部屋もないとおかしいですし。昔は6畳という狭い部屋でも、川が見えると喜んでくださった、とお聞きしております。
渡辺 ここの今のオーナーは、何をされている方ですか。
中村 四国の高松に本社がございます穴吹興産です。穴吹工務店という名前が割と全国的に知られておりますが、兄弟で別々の会社をやっておりまして、弟のグループに属しております。
渡辺 じゃあ、そこから、あなたが女将さんとして任せられている。
中村 そうです。“旅館くらしき”を先代の畠山家から、お譲りいただいて改装しました。
渡辺 風情もまったく崩さないように?
中村 老朽の度合いなどもございましたが、できるかぎり。
渡辺 棟方志功さんや司馬遼太郎さんがお好みだった「巽の間」は、柱も梁も昔のまま生かしてありますね。
中村 「巽の間」は屋根裏なんです。
渡辺 贅沢な屋根裏だね。小さな調度品もみな凝っている。
中村 先代が家具・装飾品がお好きで、こだわってご自身も机などを作られたり、建具を作られたりされたそうです。
渡辺 このテーブルもここだけ見ると傷があるけど、年代を感じるね。細かい装飾が施されていて。
中村 そのまま使わせていただいております。新しくそろえたものはほとんどありません。素晴らしいですね。
渡辺 うわさに聞いたことがある人もいるとは思うけど、“旅館くらしき”を東京の人がもっと知ったら、憧れてくるだろうな。1階の入ったところの奥のレストランも、なかなか風情があって。
中村 ありがとうございます。実はもともとは庭の見える小さなお部屋と下足番が待機する昔ならではの配置でした。せっかくお庭が見えるので、あのようにしました。
渡辺 外からの人でも入れるんでしょう。宿泊しなくても。
中村 大丈夫でございます。気軽に立ち寄って、庭を眺めていただいて、次はお泊まりにきてくださると嬉しいですね。
渡辺 ではいただきます、卵酒ですか? いや違うな。
中村 白酒に炭酸を加えました。
渡辺 おいしい。(笑)
中村 倉敷はひな祭りを早めに始めます。2月中旬ぐらいから、そこかしこでお披露目が始まります。明日でもお時間がございましたら、ごらんいただけます。春はお雛様ですが、秋には屏風をお披露目します。昔あったものの復活を町のみなさんがなさっています。倉敷にきてから、本当にいろいろ勉強になることが多くございます。決して、観光に恵まれた立地ということにあぐらをかかずに、いろいろなことをなさっているのに頭が下がる思いです。私どもは、もうおんぶにだっこで、お役に立てていないのですが。不思議な魅力ある町だと感じます。


旅館くらしき」は一休.comからご予約いただけます。

Photographs by 安井敏雄

一期一会


第18回 木村襄司(小樽・銀鱗荘オーナー) …一大道楽で鰊御殿が旅館に
第17回 三國浩紀(アラマンダ支配人) …遠大で壮大な挑戦
第16回 比嘉建己(ジ・アッタテラス支配人) …ヨーロッパのシックなリゾートが沖縄に
第15回 清水かほる(ベネッセハウス副総支配人) …「よく生きる」ことを考える場所
第14回 勝俣伸(富士屋ホテル社長) …かごで上ったアジアンテイストのホテル
第13回 岩村尚子(岩惣 先代女将)・岩村玉希(岩惣 女将) …光雅と静寂の神の島
第12回 中村律子(旅館くらしき女将) …美しき蔵の町の蔵の宿
第11回 向井聖子(三養荘女将) …財閥の別邸
第10回 北山ひとみ(二期リゾート 代表取締役) …十八世紀フランスのサロンを目指す
第09回 西村明美(柊家女将) …京都は京都らしく
第08回 マルコム・トンプソン(ザ・ペニンシュラ東京 総支配人) …日本に学んだおもてなしの心
第07回 星野佳路(「星野リゾート」社長) …世界のリゾートを向こうに
第06回 齋藤朝子(海石榴大女将) …万葉の湯
第05回 石川修(ホテル ニドム社長) …ニドム カムイに授かりし森
第04回 岡副徳子(金田中若女将) …新橋の花柳界を守る金田中
第03回 浅羽愛子(伊豆・あさば女将) …「あさば」はあくまで「あさば」である
第02回 井上旭(シェ イノ シェフ)  …45年間、支持され続けた料理
第01回 古谷青游(熱海・伊豆山・蓬莱女将) …日本で一番早く春が来るところ


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