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一期一会

三養荘百会楽話 [対談11]三養荘

一期一会
三養荘
一期一会 一 二 三

四. くつろぎは女性の感覚で

[百会楽話]渡辺淳一 × 向井聖子 庭園より
[百会楽話]渡辺淳一 × 向井聖子 庭園の様子
[百会楽話]渡辺淳一 × 向井聖子 庭園の様子
百会楽話 渡辺淳一 × 向井聖子 宴会場
百会楽話 渡辺淳一 × 向井聖子 虫の音を聞きながら
百会楽話 渡辺淳一 × 向井聖子 大正ロマンを感じる部屋
百会楽話 渡辺淳一 × 向井聖子 虫の音を聞きながら
百会楽話 渡辺淳一 × 向井聖子 三養荘
百会楽話 渡辺淳一 × 向井聖子 三養荘
向井聖子(むかい しょうこ)
三養荘 女将

蒲郡プリンスホテル勤務を経て、伊豆長岡の「三養荘」の女将となる


渡辺淳一(わたなべ じゅんいち)
北海道生まれ。医学博士。1958年札幌医科大学卒業後、整形外科講師となり、医療のかたわら小説を執筆。1970年『光と影』で直木賞を受賞。1980年に吉川英治文学賞、2003年には菊池寛賞などを受賞。北海道・札幌に渡辺淳一文学館がある。作品には「阿寒に果つ」「無影燈」「白夜」「ひとひらの雪」「失楽園」など多数。現在文壇の第一線で活躍している。

オフィシャルブログ | 渡辺淳一文学館
渡辺 女将さんは、東京にも出られるんですか。
向井 はい。お客様のところにごあいさつにうかがったり。すっかり地方にこもっていますので、まったくわからないんです。
渡辺東京が?
向井 慣れないですね。1ヵ月に1回は行きたいなって思います。世界が違いますから、刺激を受けます。そういう感覚って必要だと思います。
渡辺 帰りの新幹線の最後は何時ですか。
向井 10時何分があります。こっちに11時ギリギリぐらい。
渡辺 やっぱりここは立地条件がいい。東京の客をいかに呼ぶかが、今の地方の最大課題だから。東京から遠距離ほど人がこなくて悪いんです。北海道や九州は非常にやりにくい。日本の経済力が東京に集中しているんだから、この人たちをいかに呼ぶかということで。その点、伊豆長岡は恵まれている。
向井 すべて東京が発信源ですよね。東京の方々に満足していただくように勉強のためにも、東京で遊びたいなって思うんですけれども、場所がわからなくて。
渡辺じゃあ、今度連れていってあげる。いろいろなところに行って見ないとね。確かに女性一人では行きにくいかも。
向井 ぜひ、お願いします。エスコートしてくれる人がいないものですから、いつも独りぼっちなんです。
渡辺 初めての店じゃ入りにくいしね。
向井 やっぱり行ってみないとわかりません。東京はたくさんいいところがあるとうかがっているんですけど。
渡辺 銀座は歩けるでしょ。
向井 そうですか、自信ないんですよ。それとよそへ泊まってみたいと思いますね。
渡辺 それも大切な勉強だからね。支配人によっては、女性の意見が一番怖いっていっている。部屋はもちろん、食器とか料理とか細かく気づくからね。プリンス系で面白いといったら、やはり品川プリンスだね。あのエンタテイメントの面白さは、いわゆる一般的なホテルじゃない。あのeXホールとか、水族館、そして映画館を持っていて。あれは女性が一人で泊ると、いかに退屈で淋しいか。そこから考えついたのだと思うけど。とにかくホテルの中にエンタテイメントの空間をつくるという発想は、おじさん発想ではできないな。
向井 女性的な感覚ですか。
渡辺 そう。だから品川プリンスはいつも混んでる。値段も手ごろだし、夕食バイキングも内容が豊富でおいしい。
向井 あそこは流行っていますね。1日遊べますから。
渡辺 地方からきた人も、不安なく遊べる。女の一人旅って寂しいと思うんだけど、退屈しそうにないね。
向井 そうなると、女性の影響って大きいんですね。
渡辺 大きい。女性が「三養荘はすてきだから行きましょうよ」といったら、男性も行ってみようかとなる。
向井 たしかに、女性が嫌っていたらきていただけないですね。
渡辺 車も女性に売るでしょう。妻のニーズに合わせるほうが買ってもらえるらしいし。
向井 映画も女性に受けると男性を誘って連れて行くとか。やっぱり最終的には女性の力って大きいんでしょうか。
渡辺 大きいですよ。男のビジネスマンは、出張でも会議をやって、暇があると仲間と飲んで寝るだけ。そんな男に合わせないで、もっとホテルも多様化していかないとね。女性は結構いいホテルを予約して、快適な時間を過ごそうとするけど、男はできるだけ旅費を浮かせて飲み代に充てようとする。品川プリンスはいつも混んで、なかなか部屋が取れないらしいね。あの映画館の椅子がまたいいんだよ。
向井 カップル用の椅子ですよね。
渡辺 快適だと長く滞在してもいいかな、と思うもので。旅館でも、最近は別荘代わりに使ってくださいと、ロングステイを勧めているところが多くなってきて。
向井 うちもある程度、滞在なさるとお好きなお部屋が決まるようです。指定でお越しいただくようになってきます。どこに何があって、どうなってとおわかりなので、落ち着くといってくださるんです。そうすると、「お帰りなさいませ」っていう感覚でお迎えできて何より嬉しいですね。毎月きてくださるご夫妻がいらっしゃるんですけど、「ああ、ホッとする」っていってくださると、嬉しいです。
渡辺 この辺は温泉がいろいろあるでしょう。
向井 伊豆でも泉質が違うみたいで。ここはそんなにきつくないんです。半島の南の温泉に行かれると塩っけがありますね。
渡辺 女性は温泉が好きだね。
向井 そうですね。先生がホッとされるところはどこですか?
渡辺 どこでもホッとしちゃうんだよ。(笑)
向井 今日、先生にお泊まりいただくお部屋が「松風」です。本館は岩崎さまの本宅がそのまま残っているんです。本館特別室は「みゆき」と申しまして、こちらのみ源泉掛け流しの温泉がございます。
渡辺 離れには、料理を運ぶの。
向井 番頭さんが運びます。
渡辺 廊下が長いから大変だね。
向井 新館特別室は「初音」と申しまして、お庭はプライベートガーデンで、ご自分だけの空間になります。すべてお部屋のタイプが立地条件によって違ってきますので、それぞれに異ります。
渡辺 それぞれの部屋のよさがあるんだね。
向井 この「松風」が三養荘の原点だと思っております。お庭全体を見ていただけます。「みゆき」は高台から見下ろして、山あいをご覧になっていただけるので、この眺めもいいですね。「松風」はこのままお庭にスリッパを履いて、直接広縁からお出になれます。夜に離れへの道を歩きますと、幽玄の世界を感じるんです。明かりが灯っているのはいいですね、ぬくもりがあって。
渡辺 庭をライトアップしたらいいよね。
向井 桜の時期は、ライトアップします。
渡辺 それにしても、お庭の手入れは大変だね。
向井 2月の寒い時に、まだ芝が茶色いんですけど、外回りの者が、寒い風の吹く中、芝の上に座ってピンセットとか小さい道具を持って、草を取っていたんです。「こんな寒い日にいいのに」っていいましたら、茶色いところに生える緑が目につくし、まだ根が浅いので楽に取れるって。すぐに違う場所に生えますから、ずっと追いかけっこなんです。
渡辺 この庭、どこかで座って見る場所はありますか。
向井 お池には椅子がありますし、滝の上にあずまやを作りまして、そこへ上がっていただくと全景が眺められます。三養荘の甍を上から見るのもいいものです。
渡辺 とにかく贅沢な庭だ。
向井 四季おりおりの庭の風景を楽しんでいただきたいですね。



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Photographs by 安井敏雄

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