







向井聖子(むかい しょうこ)
三養荘 女将
蒲郡プリンスホテル勤務を経て、伊豆長岡の「三養荘」の女将となる
三養荘 女将
蒲郡プリンスホテル勤務を経て、伊豆長岡の「三養荘」の女将となる
| 渡辺 | ここは新幹線で三島から30分ぐらいで、東京からはほどよい距離だね。 |
| 向井 | 東京の方は、伊豆は遠いというイメージをお持ちですけれど、意外と時間はかからないんです。 |
| 渡辺 | どのようなお客さんが多いですか。 |
| 向井 | 関東圏の方が7割ぐらい。あとは大阪・京都・愛知の方。そしてこの静岡の方。 |
| 渡辺 | 熟年のご夫婦が多いのかな。 |
| 向井 | 50代、60代、70代の方です。最近チラホラとお若い方にお越しいただいています。 |
| 渡辺 | 若い人がくるの? |
| 向井 | はい。 |
| 渡辺 | 新婚旅行で? |
| 向井 | そういう方もあります。お車だと沼津のインターで下りていただいて、30分ぐらいですから。 |
| 渡辺 | 僕は三島の駿河平に別荘があるので、このあたりは馴染みがあるんだけど。 |
| 向井 | そうですか。たまにはこちらのほうにいらっしゃるんですね。 |
| 渡辺 | それがめったに行かない。スルガ銀行の岡野さんにすすめられてね。 |
| 向井 | クレマチスの丘ですか? |
| 渡辺 | そうそう。 |
| 向井 | いいところにいらっしゃって。もったいないですね。あちらは今、大変な人気のようでございます。 |
| 渡辺 | あそこ、富士山がよく見えるので気に入ったんだけど。 |
| 向井 | 伊豆長岡は何がいいって、富士山が見えるのが嬉しいですよ。 |
| 渡辺 | そうでしょう。 |
| 向井 | また駿河平は一段と大きく見えます。 |
| 渡辺 | 目の前に迫ってくる。 |
| 向井 | いいですね。 |
| 渡辺 | やっぱり、この辺から静岡までは、日本で一番、過ごしやすい温暖な場所かもね。なにせ徳川家康が晩年選んだ場所だから。全国の大名から情報を集めて、この辺がいいって定めてやってきた。家康が好んだ場所はこのラインだから。 |
| 向井 | そうですね。駿府城。生まれが松平郷です、愛知の岡崎の。 |
| 渡辺 | 三河まで行くと、ちょっと風が冷たくてね。ここは真冬もそんなに寒くないでしょ。 |
| 向井 | 寒くないですね。一昨年のお正月明けに一度雪が降ったんです。お庭が一面真っ白になって、その時はついつい私もカメラを持って写真をたくさん撮りました。でも、暖かいところですので、午後には雪がなくなってしまいました。奇麗でしたね。まず雪を見ることがないものですから。 |
| 渡辺 | 三養荘からも富士山が見えるの。 |
| 向井 | 残念ながら、富士山は見えません。間にお山が一つありますので。 |
| 渡辺 | 花もいろいろありそうだね。 |
| 向井 | この前に枝垂桜の大きいのがあります。 |
| 渡辺 | こんな住みやすいところにいて、給料もらえるんだから、羨しい。 |
| 向井 | ありがたいですね。これ、うちの人たちが写真を撮ったんです。紅葉が終わって、葉が落ちて、何となくお花のないわびさびの世界ですけど、もうすぐ寒桜が咲きます。寒い時に、小さい可愛い桜の花が咲くと、何かけなげで、一輪咲いたといっては数えに行きます。 |
| 渡辺 | もちろん梅も。 |
| 向井 | はい。奥に紅梅・白梅がありまして、かなり老木ですけれども、枝ぶりがよろしくて。 |
| 渡辺 | 梅は花より枝ぶりだね。 |
| 向井 | 咲きそろうと、何かこう尾形光琳の世界のようです。枝垂梅もございます。あの枝垂れも可愛いですよ。 |
| 渡辺 | 以前「梅は本妻、桜は愛人」って書いたら、女性から叱られた。 |
| 向井 | あ、でも何となくわかるような気がします。 |
| 渡辺 | 梅は花も枝ぶりも地味で、変に浮いていない。桜は華やかだから、生け花のお花にも使われない。わたしが、わたしがって、主張しすぎるから。桜を床の間に飾ったら大変だよね。派手すぎて奥床しさがなくなる。 |
| 向井 | そうですね。 |
| 渡辺 | 両方から文句いわれた。(笑) |
| 向井 | それぞれにどのように文句いわれたんですか? |
| 渡辺 | 妻のほうからは、梅のように地味なものじゃないって。愛人のほうからは、そんな浮かれたものじゃないって。 |
| 向井 | でも、逆だと世間の価値観に合わないですよね。 |
| 渡辺 | そうでしょう。 |
| 向井 | 女性として、納得しちゃいけないのかもしれないですけど。(笑) |
| 渡辺 | こういうところには、あきらかにご夫婦とわかるカップルと、ちょっと違うっていうカップルもくるでしょ。 |
| 向井 | はい。そういう時には、お部屋にはあまりごあいさつに行かないようにしております。 |
| 渡辺 | 一目見てわかりますか。 |
| 向井 | 完ぺきではありませんが、なんとなく雰囲気で。 |
| 渡辺 | 奥様が、乗り込んでくるというトラブルはないですか。 |
| 向井 | 今のところはないですね。 |
| 渡辺 | のり込んでくるのは、必ず奥さん。逆に妻が他の男ときていても、夫は絶対に乗り込んでこない。 |
| 向井 | それはなぜでしょうか。 |
| 渡辺 | やっぱり偉そうなことをいっても、男は気が弱い。のり込むのが怖いの。 |
| 向井 | 現実を見てしまうのが――。 |
| 渡辺 | いっそ知らないでいたい、と逃げ腰だから。 |
| 向井 | でも、それを知ったら許せないのが男性ですよね。 |
| 渡辺 | 男のほうがええかっこしいだから。 |
| 向井 | やっぱり最終的には女性が強いんでしょうか。 |
| 渡辺 | それは、いまさらいうまでもないことでね。 |



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