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一期一会

三養荘百会楽話 [対談11]三養荘

一期一会
三養荘
一期一会 一 三 四

二. 四季の花 光琳の世界

百会楽話 渡辺淳一 × 向井聖子 外観
百会楽話 渡辺淳一 × 向井聖子 三養荘
百会楽話 渡辺淳一 × 向井聖子 紅葉
百会楽話 渡辺淳一 × 向井聖子 三養荘
百会楽話 渡辺淳一 × 向井聖子 庭園
百会楽話 渡辺淳一 × 向井聖子 ロビー
百会楽話 渡辺淳一 × 向井聖子
百会楽話 渡辺淳一 × 向井聖子 お部屋
向井聖子(むかい しょうこ)
三養荘 女将

蒲郡プリンスホテル勤務を経て、伊豆長岡の「三養荘」の女将となる


渡辺淳一(わたなべ じゅんいち)
北海道生まれ。医学博士。1958年札幌医科大学卒業後、整形外科講師となり、医療のかたわら小説を執筆。1970年『光と影』で直木賞を受賞。1980年に吉川英治文学賞、2003年には菊池寛賞などを受賞。北海道・札幌に渡辺淳一文学館がある。作品には「阿寒に果つ」「無影燈」「白夜」「ひとひらの雪」「失楽園」など多数。現在文壇の第一線で活躍している。

オフィシャルブログ | 渡辺淳一文学館
渡辺 ここは新幹線で三島から30分ぐらいで、東京からはほどよい距離だね。
向井 東京の方は、伊豆は遠いというイメージをお持ちですけれど、意外と時間はかからないんです。
渡辺どのようなお客さんが多いですか。
向井 関東圏の方が7割ぐらい。あとは大阪・京都・愛知の方。そしてこの静岡の方。
渡辺 熟年のご夫婦が多いのかな。
向井 50代、60代、70代の方です。最近チラホラとお若い方にお越しいただいています。
渡辺 若い人がくるの?
向井 はい。
渡辺新婚旅行で?
向井 そういう方もあります。お車だと沼津のインターで下りていただいて、30分ぐらいですから。
渡辺 僕は三島の駿河平に別荘があるので、このあたりは馴染みがあるんだけど。
向井 そうですか。たまにはこちらのほうにいらっしゃるんですね。
渡辺 それがめったに行かない。スルガ銀行の岡野さんにすすめられてね。
向井 クレマチスの丘ですか?
渡辺 そうそう。
向井 いいところにいらっしゃって。もったいないですね。あちらは今、大変な人気のようでございます。
渡辺 あそこ、富士山がよく見えるので気に入ったんだけど。
向井 伊豆長岡は何がいいって、富士山が見えるのが嬉しいですよ。
渡辺 そうでしょう。
向井 また駿河平は一段と大きく見えます。
渡辺 目の前に迫ってくる。
向井 いいですね。
渡辺 やっぱり、この辺から静岡までは、日本で一番、過ごしやすい温暖な場所かもね。なにせ徳川家康が晩年選んだ場所だから。全国の大名から情報を集めて、この辺がいいって定めてやってきた。家康が好んだ場所はこのラインだから。
向井 そうですね。駿府城。生まれが松平郷です、愛知の岡崎の。
渡辺 三河まで行くと、ちょっと風が冷たくてね。ここは真冬もそんなに寒くないでしょ。
向井 寒くないですね。一昨年のお正月明けに一度雪が降ったんです。お庭が一面真っ白になって、その時はついつい私もカメラを持って写真をたくさん撮りました。でも、暖かいところですので、午後には雪がなくなってしまいました。奇麗でしたね。まず雪を見ることがないものですから。
渡辺 三養荘からも富士山が見えるの。
向井 残念ながら、富士山は見えません。間にお山が一つありますので。
渡辺 花もいろいろありそうだね。
向井 この前に枝垂桜の大きいのがあります。
渡辺 こんな住みやすいところにいて、給料もらえるんだから、羨しい。
向井 ありがたいですね。これ、うちの人たちが写真を撮ったんです。紅葉が終わって、葉が落ちて、何となくお花のないわびさびの世界ですけど、もうすぐ寒桜が咲きます。寒い時に、小さい可愛い桜の花が咲くと、何かけなげで、一輪咲いたといっては数えに行きます。
渡辺 もちろん梅も。
向井 はい。奥に紅梅・白梅がありまして、かなり老木ですけれども、枝ぶりがよろしくて。
渡辺 梅は花より枝ぶりだね。
向井 咲きそろうと、何かこう尾形光琳の世界のようです。枝垂梅もございます。あの枝垂れも可愛いですよ。
渡辺 以前「梅は本妻、桜は愛人」って書いたら、女性から叱られた。
向井 あ、でも何となくわかるような気がします。
渡辺 梅は花も枝ぶりも地味で、変に浮いていない。桜は華やかだから、生け花のお花にも使われない。わたしが、わたしがって、主張しすぎるから。桜を床の間に飾ったら大変だよね。派手すぎて奥床しさがなくなる。
向井 そうですね。
渡辺 両方から文句いわれた。(笑)
向井 それぞれにどのように文句いわれたんですか?
渡辺 妻のほうからは、梅のように地味なものじゃないって。愛人のほうからは、そんな浮かれたものじゃないって。
向井 でも、逆だと世間の価値観に合わないですよね。
渡辺 そうでしょう。
向井 女性として、納得しちゃいけないのかもしれないですけど。(笑)
渡辺 こういうところには、あきらかにご夫婦とわかるカップルと、ちょっと違うっていうカップルもくるでしょ。
向井 はい。そういう時には、お部屋にはあまりごあいさつに行かないようにしております。
渡辺 一目見てわかりますか。
向井 完ぺきではありませんが、なんとなく雰囲気で。
渡辺 奥様が、乗り込んでくるというトラブルはないですか。
向井 今のところはないですね。
渡辺 のり込んでくるのは、必ず奥さん。逆に妻が他の男ときていても、夫は絶対に乗り込んでこない。
向井 それはなぜでしょうか。
渡辺 やっぱり偉そうなことをいっても、男は気が弱い。のり込むのが怖いの。
向井 現実を見てしまうのが――。
渡辺 いっそ知らないでいたい、と逃げ腰だから。
向井 でも、それを知ったら許せないのが男性ですよね。
渡辺 男のほうがええかっこしいだから。
向井 やっぱり最終的には女性が強いんでしょうか。
渡辺 それは、いまさらいうまでもないことでね。



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Photographs by 安井敏雄

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