| 渡辺 | 今、奥の部屋まで入ってみたけど、この広さでは管理が大変ですね。 | ![]() ![]() ![]() |
| 向井 | 敷地が4万2,000坪ございます。約3,000坪がお庭です。 | |
| 渡辺 | 植木の職人さんの姿も見えて、手入れが大変ですね。 | |
| 向井 | やはり木は生きておりますのでね、手をかけないと、それなりに答えが出てきます。 | |
| 渡辺 | 三菱の岩崎弥太郎さんがここに、いつごろ作ったんですか。 | |
| 向井 | こちらが昭和4年の建物です。ご長男の久彌さんのご別邸として建てられておりまして。手前どもが旅館を始めたのが、昭和22年からです。ちょうど60年でございます。 | |
| 渡辺 | プリンスホテルは元宮家とか、旧財閥が持っていたいろいろなところを買い取ったからね。ここもその一つで。 | |
| 向井 | お庭はどこもゆったりとしています。 | |
| 渡辺 | ここの三養荘っていう由来ね、さっき資料を読んでわかったんだけど。 | |
| 向井 | 読んでいただけましたか。蘇東坡三養訓というのがありまして、岩崎様が家訓にしていらしたんですね。安分以養神、寛胃以養気、省費以養財というものですが、そこから三養荘と呼んでいらした。あまり高望みをしないで、今、自分の置かれた身分にしっかり腰を落ち着けて精神を安定させ、胃を楽にして気力・根気をしっかり身につけ、無駄遣いをやめて、物質的に安定させて幸せに生きるための三つの教えであるという内容でございます。 | |
| 渡辺 | この広い庭を見ると、壮大な無駄のようにも見えるけどね。(笑) | |
| 向井 | 先生のおっしゃるとおりでございます。(笑) |
| 渡辺 | たしかに、三養荘は昔から有名だけど。 |
![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 向井聖子(むかい しょうこ)
三養荘 女将 蒲郡プリンスホテル勤務を経て、伊豆長岡の「三養荘」の女将となる |
| 向井 | みなさんには、まだまだ知っていただけてないような感じがいたします。 | |
| 渡辺 | いやいや、知ってる人は知ってるよ。ただ広くて立派で高そう。と思っているけど。行ってみたいとはいっている。プリンスは和風の感じでは、赤坂プリンスの横にある「清水」。 | |
| 向井 | 「弁慶橋清水」ですね。あちらも同じグループです。先生、こちら伊豆長岡へは……。 | |
| 渡辺 | 伊豆長岡はあまりこないんだけど。この奥の修善寺にある「あさば」は何度か行ってるんだけど。 | |
| 向井 | あちらも有名ですので。 | |
| 渡辺 | でもこの広さにはとても勝てない。ここの女将さんになって何年ですか。 | |
| 向井 | 私は短くて、5年目でございます。 | |
| 渡辺 | ここに5年というと、どちらかから? | |
| 向井 | それまで愛知県の蒲郡プリンスホテルにおりました。 | |
| 渡辺 | ああ、あそこはいいホテルだ。小さいけど、ロマンチックでおしゃれで。 | |
| 向井 | いや、嬉しいですね。 | |
| 渡辺 | あれは名古屋かどこかの繊維関係のお金持ちが持っていた? | |
| 向井 | はい。名古屋の織物商・滝信四郎氏が、常磐館という旅館を作られたのが始まりでホテルは昭和9年に蒲郡ホテルとして建てられたものです。 | |
| 渡辺 | あそこにいたの? | |
| 向井 | はい。ご存知で嬉しいです。 | |
| 渡辺 | 女の子連れていくには一番のホテルじゃないかな(笑)。ロマンチックで、喜ぶと思う。 | |
| 向井 | 蒲郡は三河湾に面しておりまして、蟹の爪みたいで、大変海が穏やかです。 | |
| 渡辺 | あそこから、引き抜かれたの? | |
| 向井 | いいえ。蒲郡プリンスホテルの庭園内にあります和食処におりまして、転勤でこちらへ参りました。このお仕事はまだまだ駆け出しです。 | |
| 渡辺 | 旅館だから、女将さんは必要だ。 | |
| 向井 | お嫁にきた女将ではありませんから、若い時からこういう世界にいませんので、お客様の立場で考えてやっています。 | |
| 渡辺 | それはそれでいいんじゃない。女将さんとしては初々しい感じがする。あなた、あの人に似ている。あの、名取裕子さんに似てるじゃない。 | |
| 向井 | いやあ、嬉しい。ありがとうございます。 | |
| 渡辺 | とにかく、ここは環境も最高で。 | |
| 向井 | 伊豆長岡は大変気候が温暖なので、過ごしやすいですね。 | |
| 渡辺 | 住みやすいよね。とにかく敷地が広いけど、部屋数はどれぐらいあるんですか。 | |
| 向井 | 40棟。1棟が大体、本間、次の間、もしくは三の間がありまして、離れ形式になっています。本館は、お庭に面していまして岩崎様の当時の別邸であり、大浴場が近いので、お風呂は作っていないのですが、新館にはお風呂がついているんです。 | |
| 渡辺 | たしかに、この部屋も広いというか広すぎて。ここに布団を引いて寝るとそれこそ、太平洋の上に小舟で浮いているような感じで。 | |
| 向井 | 寂しくなっちゃう。(笑) | |
| 渡辺 | そう、一人じゃもったいない。(笑) | |
| 向井 | 明日、朝、お庭をご覧になってください。本間、次の間、その奥に書院作りの可愛いお部屋があります。ここからのお庭の眺めは最高です。ちょうど窓枠が額縁の役目をしてくれまして、座りますと絵のようにお庭をご覧になっていただけます。 | |
| 渡辺 | なるほど。庭が陰になって、粋を凝らしているのがよくわかる。 | |
| 向井 | 建物がお好きな方には、手に入らないようないい材料を使っているといっていただきます。ガラスは手づくりなので、ゆがみがあります。今はもう作っていないので、お掃除する時は気をつけて拭くんですよ。 | |
| 渡辺 | こういうガラスは風が吹くとガタガタなるでしょう? | |
| 向井 | そうなんです。風が強い時は、お客様に申し訳ないと思うんですけれど、お客様が「小さい時にこういう建物で暮らしたのを思い出せていいですよ」なんていってくださるんです。鍵がねじで、今はこのようなものがないですものね。 | |
| 渡辺 | このガラス1枚割ると大変だ。同じものはもう手に入らないの? | |
| 向井 | ありませんね。車で20分ぐらいのところに、沼津の御用邸がありますけれども、あちらも手づくりのガラスで、今では日本にはないので、オランダかどこか外国にお願いして作っていただいているそうです。 |



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