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一期一会
蓬莱「一期一会」

蓬莱蓬莱

一期一会

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古谷青游 (ふるたに せいゆう)
江戸時代末に暖簾を掲げた老舗旅館 蓬莱の女将。



渡辺淳一 (わたなべじゅんいち)
北海道生まれ。医学博士。1958年札幌医科大学卒業後、整形外科講師となり、医療のかたわら小説を執筆。1970年『光と影』で直木賞を受賞。1980年に吉川英治文学賞、2003年には菊池寛賞などを受賞。現在文壇の第一線で活躍している。

オフィシャルブログ | 渡辺淳一文学館

洋館を移築したレストラン


渡辺女将はわがまま娘のように、やると言ったらやる。蓬莱の下にあるホテル、ヴィラ・デル・ソルもそうでしょう。
古谷先生、あれ買ったから今苦労しているの。
渡辺徳川時代のものを大金掛けて、そのまま持ってくるんだから、もうそんじょそこらの我侭じゃないよね。ヴィラ・デル・ソルに惚れ込んで作った経緯をしゃべってごらんよ。まず、どこで初めて見たの?
古谷大磯です。
渡辺大磯で見て、すぐほしくなっちゃったわけ?
古谷知り合いが、大磯で家を壊す人がいて、骨とう品があるから見に行かないかっていうので、好きですから、行ったんです。家の持ち主の方が私たちのためにケーキを焼いてくださって、おいしかったんですよ。2時間位おしゃべりしていて、この古色蒼然として汚い建物に1人で住んでいるので、壊すって。「それは可哀想、じゃあ、私に譲ってくださいますか」って言ちゃたの。建物が私を取り込んだんじゃないかと思っているんです。
渡辺建物のほうから、女将に甘えてきたんだ。
古谷相手様は驚いたのと喜んだのと、壊す手間が省けるし、またこの建物が生きるということで、喜ばれて。そんなに大変なものだって思っていないじゃないですか。持ってくればそれでいいと思っていたんですから。
渡辺そうしたら、どうだったの?
古谷建築の先生にお見せしたら、「こんな汚い建物、奥様買って何になるの」とか言われて。
渡辺なるほど。
古谷でもね、何度か見に行って建築の先生も、じゃあ仕方がないから壊しましょう。夏休みに学生を1ヵ月連れていって、建物を測って図面にして。それから壊したので丸一年かかりました。
渡辺いったん壊して、こちらで組み立てたんだ。
古谷ええ。壊して何にするか分からなくて、1年しまっておいた。下の海に近い所に私たちの住まいがあって、いくつも部屋があったので、ホテルとレストランか、レストランとプールでもしようかってことになりました。立ち上がるまでに6年かかりました。昭和54年か5年に出会って61年竣工、大変でした。もうそのころはバブルが弾けてまったく普通の世の中に戻ってましたから。
渡辺とんでもないお嬢様が、変なお遊びを始めたみたいに思われた。
古谷そうですよ。あほみたい。今もあれで苦労しています。
渡辺莫大なお金がかかっても、思い込んだらやっちゃうところがすごい。
古谷元々は紀州の殿様のものでしたから、紀州の長保寺っていうお寺さんへこうやって使わせていただきますって、ご報告に行ったんです。設計の先生と工事屋さんと。すごくいいお寺さんで、お経を上げていただきました。殿様のお墓だからものすごく大きくてこわいんです。そこへ夕暮れ時に、お参りに行かせてもらって、それから始めたんです。
渡辺今のようにつなげてホテルと、レストラン、バーみたいなものをやろうっていうのは、その時に考えたの?
古谷はい。まだそのころ、徳川様のおひい様という方が東京にいらして、80歳ぐらいでしたけど、いろんなご縁で、少し図面とか写真が集まりまして、それで復元できたんです。
渡辺大変なことだから、かえって頑張れるんだ。
古谷そう。だから、90歳まで生きようと思って。
渡辺それまで、ぜひ現役の女将さんとして生きればいいじゃない。
古谷90まで現役で仕事をしたいですね。
渡辺いや、できると思う。ぜひ、やってほしいね。




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徳川時代の洋館を移築して作られた“ヴィラ・デル・ソル”
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  Photographs by Naoki Wada




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