



古谷青游 (ふるたに せいゆう)
江戸時代末に暖簾を掲げた老舗旅館 蓬莱の女将。
江戸時代末に暖簾を掲げた老舗旅館 蓬莱の女将。
洋館を移築したレストラン |
| 渡辺 | 女将はわがまま娘のように、やると言ったらやる。蓬莱の下にあるホテル、ヴィラ・デル・ソルもそうでしょう。 |
| 古谷 | 先生、あれ買ったから今苦労しているの。 |
| 渡辺 | 徳川時代のものを大金掛けて、そのまま持ってくるんだから、もうそんじょそこらの我侭じゃないよね。ヴィラ・デル・ソルに惚れ込んで作った経緯をしゃべってごらんよ。まず、どこで初めて見たの? |
| 古谷 | 大磯です。 |
| 渡辺 | 大磯で見て、すぐほしくなっちゃったわけ? |
| 古谷 | 知り合いが、大磯で家を壊す人がいて、骨とう品があるから見に行かないかっていうので、好きですから、行ったんです。家の持ち主の方が私たちのためにケーキを焼いてくださって、おいしかったんですよ。2時間位おしゃべりしていて、この古色蒼然として汚い建物に1人で住んでいるので、壊すって。「それは可哀想、じゃあ、私に譲ってくださいますか」って言ちゃたの。建物が私を取り込んだんじゃないかと思っているんです。 |
| 渡辺 | 建物のほうから、女将に甘えてきたんだ。 |
| 古谷 | 相手様は驚いたのと喜んだのと、壊す手間が省けるし、またこの建物が生きるということで、喜ばれて。そんなに大変なものだって思っていないじゃないですか。持ってくればそれでいいと思っていたんですから。 |
| 渡辺 | そうしたら、どうだったの? |
| 古谷 | 建築の先生にお見せしたら、「こんな汚い建物、奥様買って何になるの」とか言われて。 |
| 渡辺 | なるほど。 |
| 古谷 | でもね、何度か見に行って建築の先生も、じゃあ仕方がないから壊しましょう。夏休みに学生を1ヵ月連れていって、建物を測って図面にして。それから壊したので丸一年かかりました。 |
| 渡辺 | いったん壊して、こちらで組み立てたんだ。 |
| 古谷 | ええ。壊して何にするか分からなくて、1年しまっておいた。下の海に近い所に私たちの住まいがあって、いくつも部屋があったので、ホテルとレストランか、レストランとプールでもしようかってことになりました。立ち上がるまでに6年かかりました。昭和54年か5年に出会って61年竣工、大変でした。もうそのころはバブルが弾けてまったく普通の世の中に戻ってましたから。 |
| 渡辺 | とんでもないお嬢様が、変なお遊びを始めたみたいに思われた。 |
| 古谷 | そうですよ。あほみたい。今もあれで苦労しています。 |
| 渡辺 | 莫大なお金がかかっても、思い込んだらやっちゃうところがすごい。 |
| 古谷 | 元々は紀州の殿様のものでしたから、紀州の長保寺っていうお寺さんへこうやって使わせていただきますって、ご報告に行ったんです。設計の先生と工事屋さんと。すごくいいお寺さんで、お経を上げていただきました。殿様のお墓だからものすごく大きくてこわいんです。そこへ夕暮れ時に、お参りに行かせてもらって、それから始めたんです。 |
| 渡辺 | 今のようにつなげてホテルと、レストラン、バーみたいなものをやろうっていうのは、その時に考えたの? |
| 古谷 | はい。まだそのころ、徳川様のおひい様という方が東京にいらして、80歳ぐらいでしたけど、いろんなご縁で、少し図面とか写真が集まりまして、それで復元できたんです。 |
| 渡辺 | 大変なことだから、かえって頑張れるんだ。 |
| 古谷 | そう。だから、90歳まで生きようと思って。 |
| 渡辺 | それまで、ぜひ現役の女将さんとして生きればいいじゃない。 |
| 古谷 | 90まで現役で仕事をしたいですね。 |
| 渡辺 | いや、できると思う。ぜひ、やってほしいね。 |






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