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桃井かおり 心に残る出会い
桃井かおり 逃げなければ面白くなる
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[1] ロスがフィットしてきた

桃井かおり 映画「ジャンゴ」1 ロサンジェルスいう町とは、本当にタイミングのいい出会いだった。それまで似合わなかった色が、急に自分に似合うようになったみたいに、ある日、突然、ロスがフィットしてくるようになったという感じ。
もともと、ロスみたいな田舎は、ぜったい住みたくなかったわけ。ロンドンには住みたくて、アパート借りたりしたことがあるし、フランスのマレ地区にアパートを持ったこともあったけれど、ロスだけはありえないと思っていた。

30代前半の頃、ロスにちょっと行ったことがあるんだけど、やっぱり合わなくて、ニューヨークに逃げたりしていたの。それなのに映画『SAYURI』のオーディションを受けて、ロスに行ったら、契約が悪かったせいで6ヵ月帰ってこられなかったのね。
付き人もマネージャーもいないので、仕事場へ行くのも私一人。メイクの人と仲よくなり、仕事場ではみんなに構ってもらってなんとかやれたんだけど、日常生活が大変で。それがすごく悔しくて、アフレコでロスに行くたびにアパートを探していたの。
この際だから、英語をどうにかしたい。英語さえどうにかすれば、生活ができるようになるし、出会いが増えていくじゃない。好きな色が増えていくような感じで。そう思って、とにかく居続けたら、いつの間にか住めるようになったのよ。今年で3年目。

桃井かおり 映画「ジャンゴ」2 ちょうど今、公開中の三池崇史監督の『スキヤキ・ウエスタン・ジャンゴ』も、全部英語で芝居をするのが面白いなと思ったの。「えっ? この歳になって初めてアクション?」という感じだけどね。クエンティン・タランティーノさんと共演できるのも楽しみだったし。
タランティーノって、ちょっと“クレイジー”って感じがするじゃない。でも実際はすごく真面目で、自分を監督に捧げる健気な俳優だったのね。三池崇史監督を尊敬していて、少女がロックスターを見るみたいな目で見ているの、ちょっと感動しちゃったんだけど。

出演者は英語ができない人がほとんどなので、専門のダイアローグ・コーチが来て、英語の特訓をしてくれるわけ。それなのに、なんか言い訳をして、逃げる人が多いのよ。
庄内で合宿したとき、私は毎日4時間ぐらいレッスンを受けていたの。そんな機会を与えてもらえるなんて、すごく得だなと思って。だけど、他の人は受けようとしないのよね。先生が、「誰もレッスンを受けないのに、あなただけ受けるのはなぜ?」って不思議がっていた。
ダイアローグ・コーチが、このままだとアフレコをほかの人で入れるとかしないとダメだと言ったので、ご飯をみんなで食べたときに伝えたのね。「それが一番恥ずかしいことだから、ちゃんとやらないとヤバイみたいよ」って。そうしたら、ある役者が「あれから眠れなかったんですよ」と言うから、寝てる場合じゃないよ、と思った。切羽詰まってやってください、という感じですよね。

桃井かおり 映画「ジャンゴ」3 私、生まれて初めて、小姑みたいなことを言ったのよ。「もし向こうの映画に出たときに、英語が聞き取れなかったら、日本人はなめられる」って。今、渡辺謙さんや真田広之くんが、日本人を掲げてものすごく頑張ってるじゃない。英語もちゃんとしゃべれるようになって。『ジャンゴ』の出演者はみんな30前後だから。その世代の役者たちが後に続いて外に出ていってくれないと、私も一緒に仕事ができないし、みんな頑張ってよと思ったの。
三池監督も言ってたけど、タランティーノさんが日本の映画にポンと出ることがありえるんだから。そういう時代でしょう? 私たちも、英語で台詞を言うことを一度経験すれば、また次にやるのはそう大変なことじゃない。三池監督は、あの映画に出ているすべての役者に、チャンスを与えたんだと思うの。あの映画を世界に持っていってもらえて、いろいろな人が見たら、「あの役者を使ってみたい」という監督が出てくるかもしれないでしょう? 仕事の場を、日本に限定する必要はないよね。


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桃井かおり
桃井かおり ― ももい かおり ―
桃井かおり イラスト1952年、東京生まれ。12歳で英国ロイヤル・バレエ・アカデミーに留学。女子美術大学付属高校卒業後、文学座研究所を経て71年、映画デビュー。77年『幸福の黄色いハンカチ』で日本アカデミー賞、ブルーリボン賞助演女優賞受賞。79年には『もう頬づえはつかない』『神様のくれた赤ん坊』で日本アカデミー賞、ブルーリボン賞主演女優賞受賞。女優のほか、エッセイストとしても活躍。2005年ロブ・マーシャル監督の映画『SAYURI』でハリウッドデビュー。その後、ロシア映画『太陽』にも出演している。06年『無花果の顔』では初監督を務め、原作・脚本を書き、出演している。第57回ベルリン国際映画祭 最優秀アジア映画賞、第21回スイス・フリブール国際映画祭長編コンペティション部門特別賞、トルコ フライング・ブルーム国際女性映画祭 国際批評家連盟賞を受賞している。三池崇史監督の映画『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』公開中
桃井かおり オフィシャルサイト

映画写真提供:© 2007 Sukiyaki Western Django film partners
プロフィールイラスト:咲さん






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