

転機になったのは、『age、35』という映画との出会いです。私が演じたのは24歳の女性で、中井貴一さん演じる主人公と不倫関係になり、一人で子どもを産んで育てるという設定です。当時私は18歳。“不倫”と聞いてもピンとこないし、秘書の役でパリッとしたスーツを着て、ハイヒールでカッカッと歩く。まだ演技にも慣れていないのに、自分とかけ離れた大人の女性を演じなくてはいけません。正直、頭を抱えてしまいました。
もう役が決まっているのに、「私には無理です。やめます」なんて言い出して、事務所の人を慌てさせたり(笑)。ほんとうに、苦しかった。
監督はとても厳しくて、撮影期間中は、ずっと怒られっぱなしでした。一切、演技を褒めてくれなかった監督が、撮影を終えて打ち上げの時に、「よくやったな」とひとこと言ってくださった。あの厳しい監督が、そう言ってくれた……本当に嬉しかったし、それが何より自分の励みになりました。
それまで、「私はこのままでいいんだろうか」とずっと思ってました。撮影の時間はいいんですが、いったん現場から離れると、悩んでばかりで。女優として何もできないのに、ずっとここにいていいのかな、という思いが強くあったんです。それなりに評価をしてくださる方もいたとはいえ、素直に受け入れられない。何度も「もうやめて親元に帰ろう」と思いました。
『age、35』は、評判もよかったんですよ。「あのシーンで泣いたよ」とか「感動した」と言われると、「私の演技を見て感動してくれた人がいたんだ。それって、すごい」と私が感動してしまって。そういう感想をいただいたことが、本当に嬉しかったし、力が湧いてきました。
演技がうまいかどうかは別として、伝わったか、伝わらないかということで言えば、伝わったんだ、と確信できました。気持ちが伝わったとしたら、女優は自分に向いているのかもしれない。だったら、もっともっと、伝えていく演技をしよう……そんなふうに思えた。この作品との出会いが、女優を続けることを決心するきっかけになりました。
今もまだまだ、勉強しなくてはいけないけれど、少しずつ引き出しは増えています。今までの経験を、引き出しから出して演技できるようになってきたかなと感じています。
シナリオを読んだ段階で自分なりに役を作っていくと、監督から「その感じで大丈夫です」と言っていただけることが増えました。もちろんディティールに関しては、いろいろな要求はされますが、ベースの部分では監督が求めているものからそうはずれないようになりました。
もう、女優をやめようとは思いませんね。
