

『怪談』の豊志賀の新吉に対する愛は、いわば独占欲です。でもそれは、清純だからです。それまで男の影がなく、初めて本当に好きになったのが新吉だった。一途に愛してしまうがゆえに、独占欲が抑えられなくなってしまうんでしょうね。
新吉は若いし、たいした稼ぎがあるわけでもない。どこが好き、というはっきりした理由はありません。会ったその瞬間に、恋に落ちてしまうんです。
この人がいないとダメだ、という愛し方。とても強いものを感じます。はたして、そこまで一人の人を愛したことがあるかと聞かれると……一応、既婚者ですから(笑)、「あります」と答えたいところではありますが(笑)。客観的に見て、自分もあそこまで人を愛し、愛する人を独占し、ジェラシーの炎を燃やすことができるのかしら? やっぱりほどほどがいいのかな、などと私もいろいろ考えました。
新吉だって、豊志賀の愛にのめり込んだはずなのに、豊志賀の死後、ふらふらと他の女の人に心を移し、次々と同じことを繰り返してしまいます。新吉は、言ってみれば、どうしようもない男なんですよ。男ってバカだなとも思いますが、でも、だから可愛いんでしょうね。最後には、「あっ、やっぱり僕は豊志賀のもとが一番安らげるんだ」と……。「ほーら、言ったとおりでしょう」って。あぁ、コワイ。(笑)
物語としては、親の因果があって出会います。先祖の因果って、本当にあるのかどうか、私は分からないけれど……。
前の代で解決されていない問題が、今生に現われる。でも最終的には、親が残した恨みは、愛によって溶かされる――。今ここで結末をお話するわけにはいきませんが、私は、二人の愛が恨みに勝ったのではないかと、解釈しています。
愛の深さが、愛の怖さでもある。オバケより幽霊より、本当は人間の業のほうが怖いんですね。それが『怪談』というタイトルの意味かもしれません。私は、愛ゆえのホラーだから、勝手にこの映画を「ラブホ」と呼んでいますが(笑)、けっこう怖いと思いますよ。特に男性にとっては。
女性にとっては「男と女の愛」「愛するとは」「愛の形」について考える映画になると思うし、男性にもぜひ、この映画をバイブルにしてほしいですね。
福岡県出身。1985年、宝塚歌劇団退団。映画『化身』(86年)で日本アカデミー賞新人俳優賞受賞、『失楽園』(97年)で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞受賞、『破線のマリス』(2000年)日本映画批評家大賞女優賞受賞。出演作品に映画『東京タワー』(05年)、『魍魎の匣』(07年末公開予定)、舞台『ハムレット』(90年)『MAMA LOVES manboT〜W』(00年〜06年)、テレビドラマ『オヤジぃ。』(03年)、『GOODLUCK!!』(03年)、『白い巨塔』(03年)、『プリマダム』(06年)など多数。詩やエッセイも執筆。代表作は『もう夫には恋できない』(04年)、五行詩『恋のちから 愛のススメ』(06年)などがある。映画『怪談』は07年8月4日より全国一斉ロードショー