

昨年、『赤い鯨と白い蛇』といいう映画で、久しぶりに樹木希林さんと共演しました。一緒にお芝居をするのはしばらくぶりだったので、現場で希林さんを見て、緊張しましたね。撮影が進んでいく過程で「あっ!」と強く感じることがあって、自分の中で「演じること」に関して、新しいものが芽生えました。
言葉にするのは難しいんですけど、「真摯な姿勢で向き合わなくてはいけないんだ」といったことかな。希林さんに「こうしなさい」と言われるんじゃなくて、演じる姿勢や向き合い方から学ばせてもらいました。
この世界で長く続けていると、仕事に慣れてきます。でも希林さんと仕事をすると、また、初心に戻れるんですよ。いい意味ですごくドキドキしたし、緊張もしたし、慣れすぎてうまくこなすようになってはいけないなと思いました。
デビュー直後から、言われていたんです。気持ちから入らなくてはダメだって。気持ちがあれば、人には通じる。芝居を「形」でしてはいけないって。私、それだけは守ろう。最初に教わったことを、ちゃんと守ろうと思ってやってきたつもりだけど、慣れてくると、つい、形で芝居をしそうになる。それではいけないと、改めて気持ちを引き締めました。
7月からは、『地獄の沙汰もヨメ次第』という連続テレビドラマに出演します。野際陽子さんが姑、江角マキ子さんが嫁で、私は出戻りの小姑の役。でも意地悪ではなくて、嫁姑のバトルを興味津々で見ている客観的な立場です。
9月初めには、『釣りバカ日誌』の新作も公開されます。今回の『釣りバカ日誌』は、スーさんにちょっとボケが入ってきたという話で、スーさんが社長を退陣して会長職につきます。少し老人問題が入っているかな、という内容ですね。岡山が舞台です。
老人と言えば、うちの犬は二匹とも15歳。ほぼ介護の生活に入っています。でも、ぜんぜん苦になりませんね。口もきけないし、何かができるわけではないので、私が気をつけないと、犬は生きていけないわけでしょう。何か手助けをしたいと、自然に思ってしまう。できるだけ一緒にいたいので、海外ロケは入れないようにしているし、旅番組もほとんどお断りしています。
あの子たちがいることで、どれだけ助けられているか。イヤなことがあって気分が悪い時も、家に帰ってあの目で見られると……。全身全霊で喜んでくれるので、「はい、はい」って撫でているうちに、イヤな気分がなくなる。あれが不思議。縁あって、うちの子になってくれて嬉しいですね。
最近、つくづく思います。縁って大事だなって。人との出会いも縁ですよね。
私はこの世界に入って最初に、樹木希林さんというすばらしい方と出会えて、本当によかった。右も左も分からなかった時期に、何から何まで教えていただいた。あれがなかったら、もしかしたらこの仕事をやめていたかもしれないし、間違った方向に行っていたかもしれません。
大事な人は、大勢いる必要はないですよね。本当に分かってくれる人が一人か二人いれば。その関係を大切にしていきたいですね。
1956年、東京都生まれ。東京女学館高等部在学中にスカウトされる。新人オーディションに参加し、25,000人の中から選ばれ『時間ですよ』でデビュー。たちまち人気を集める。劇中歌で、デビュー曲『赤い風船』は大ヒットし、93年、日本レコード大賞で新人賞を受賞。『寺内貫太郎一家』『時間ですよ・昭和元年』などに出演。77年、吉田拓郎氏と結婚し引退するが、83年に離婚。芸能活動を再開。