

『マイ・フェア・レディ』のイライザは、ちゃきちゃきっとしたところもあれば、ふんわりしたところもあって、キャラクターとしても両極端なものを求められる役かもしれません。幅広い人物です。その上、歌の音域も広いんですよ。
今、私は発声練習の時、3オクターブ出るのですが、最初の頃は上のほうは出ませんでした。宝塚時代、男役をやっていたときに、どんどんどんどん下のほうの音域を訓練していたので、『マイ・フェア・レディ』の初演のときは「踊り明かそう」などのナンバーはオリジナルキーではなく、半音下げていました。でも、そのうちトレーニングして高音が出るようになってからはずっとオリジナルキーで歌っています。
声帯って本当に小さなもので、非常にデリケートなところなのです。男役時代に下を訓練したから、その音域を置いたままで上にも伸ばすのは難しくて、上を伸ばしていけば、下はだんだん出なくなる。そこから下を出せるようにするためには、改めて下の訓練もして、そちらにも伸びるようにしていかなければいけない。そういうトレーニングを積んでいきます。
やはり声を出すためには、ボディをうまく使う訓練も必要ですから、それも一所懸命やります。声というのは不思議なもので、自分があるテンションをイメージすれば、その音が出るようになるんですね。そういうことで克服できるのです。深いですよね。私もヴォイス・トレーニングは欠かしませんが、まだまだ、そのたびに驚くことばかり。教える方がうまく引っぱり出してくださるので、自分の持っている楽器である声帯とそうした練習との積み重ねで、どんどん声が出るようになっていくものなのです。
もちろん、これはお稽古の段階ですませておくことで、本番になればテクニックそのものを見せつけるわけではありませんし、実際、3オクターブの歌なんてありませんからね(笑)。最終的には、歌がその人物の溢れ出る思いであるとお客様に感じていただけるように、自然に演じながら歌えることを目指します。毎回毎回、それに挑戦するのが楽しいからこそ、公演を重ねても新鮮な気持ちで続けることができるのでしょうね。
昨年、初舞台から35周年を迎えました。早かったですね。そんなになるかなぁ……という感じです。まだまだ通過点という気持ちもありますし、もうそんなにきたの? という驚きもありますね。
幼い頃から、将来は女優になって舞台で活躍したいと思っていました。その道を一筋に進んでこられたのは本当に幸せだと思っています。でも、私ひとりの力ではここまでこられませんでしたし、いろいろな方との出会いがあったからだと感謝しています。月並みな言葉になってしまいますが、ひとえに皆さんのお陰だと、節目が巡ってくるたびにその思いを強くしますね。ここに至るまでには、自信を失くしたり、不安になったことはもちろんありました。でも「もう辞めようかな」と思ったことはなかったですね。舞台が好きで、宝塚に入って、宝塚を辞めてもまた素晴らしい舞台に恵まれて、ここまでこれましたのは、ひとえに周りの皆さんやお客様のおかげだと感謝しています。もちろん映像にも興味があるし、そちらも好きです。でも、やはり私の基本は舞台だと思います。
7月は新作『ガブリエル・シャネル』です。これは、あのシャネルの生涯を舞台化したもので、新橋演舞場で1ヵ月間シャネルの人生を演じます。
長く演じ続けているものと、新しい作品と、どちらも今から楽しみです。皆さんに幸せを感じていただけるような舞台をつくっていけるよう、全力を注ぎたいと思っています。