

人との出会いで大きく生活が変わったのは、夫(アートディレクター ローラン・グナシア氏)と結婚したことですね。他人と生活するわけですから。まだ1年ですが、至って平和ですね。異文化だし、発想が全然違うから、おもしろくて仕方ないんです。私の考え方とは違うけれど、そっちもいいのかなと思ったり。たぶん、彼もそう感じていると思います。身近で違う文化に触れられて、幸せだなぁと思いますね。
私たちは、とにかく話しますね、何でも。徹底的に語り合うんです。喧嘩のときも、何か決めるときにも語り合う。その分、日本人の侘びとか寂びみたいなものはなくなってきている気がしますけど(笑)。フランス人と結婚した女性が強くなっていくのは、わかります。まずイエス、ノーがはっきりする。そうしないと、なめられてしまうから。すべてに理由づけが必要で、自分の考えを伝えるとき、自分のことばで自分の意見を言わないといけないんですよ。結果は一緒だとしても、自分の表現方法で言わないと、同調していることになってしまうんです。そうしないと人間として魅力的じゃないと受けとめられるんです。(笑)
ときどき「なんで私は日本で生きてこられたんだろう」と、日本人の考え方に疑問を持つことがあって、「あ、いけない、いけない、私は今ここで仕事をしているんだ」なんてハッとしたりする(笑)。弟(歌舞伎役者の五代目尾上菊之助氏)に言わせると「毒舌がさらに輪をかけて毒めいてきた」らしいです。毒というより、言いたいことをストレートに伝えてしまうんですね。「ここで言わないほうがいい」と思うことが少なくなって、逆に「言っておかなきゃ」という場面が増えました。
それだけに喧嘩が致命的ではなくなったと思います。意見の違いを発表する場なんですね。細かいところでいっぱい喧嘩をやっているから、決定的なことにはならずにすんでいる。日本人は、そういうことが不得意だし、すべて同調から始まるんですよ。「これ、どうですか、このジュース?」と聞かれて、飲まないのに、「はい」というじゃないですか。でも、その「はい」は、飲むのか、要らないのかわからない。
そうやって日常しゃべっていると、自分の内面も発見したり、よくわかったりしてきます。私の場合、相当わがままに育ってきたことがわかってきました(笑)。やりたい放題で育ってきたんですね。たくさんの発見があって、まさに家庭内留学です。私のフランス語はまだまだですが、彼は日本語のリスニングが大体できるようになりました。うちの家族とも、私がいなくてもコミュニケーションをとれますね。この前も、私以外の4人で天ぷらを食べに行っていましたから。(笑)
夫は、忙しくしている私が好きだと言ってくれます。私は自分では意識していませんが、どうも、そのときの役柄をひきずるみたいで「僕はいろんな女性とつき合っている気がする」と言われます(笑)。部屋でプラップラしていると、「仕事をしたほうがいいんじゃないの?」と心配されます。(笑)
こうして何の支障もなく仕事ができるのは彼のお陰です。仕事をしている私がいちばん生き生きしているのを、理解してくれます。母にも「幸せそう」なんて言われます。
これから生活も含めて、いろいろな状況が変わるかもしれません。でも、常に自分に正直に生きられたらいいですね。「この人どこへ行くの?」というような役柄を演じていきたいし、「ああ、寺島しのぶを貫いているなあ」という生き方をしていきたいんです。
