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一期一会

樋口可南子樋口可南子 心に残る出会い



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ブイヨンがやってきた 2

「うちの希望だ!」

樋口可南子 イメージ
実は数年前、東京にいるとビルが迫ってくるような気がして、汗が出てイヤな気分になる時期があったんです。チカチカと、危険信号が出ていたんでしょうね。これではいけない、生活を変えたいと思い、京都に家を持つ決心をしました。家が決まったとき、なぜかものすごく、「犬を連れてこの場所を歩きたい」と思ったんです。飼えない状況だったのに、イメージの中では、犬を連れて歩いている風景があった。それだけ求める気持ちが強かったから、インターネットを通してブイヨンが現われたのかもしれません。

京都の家ができあがったのは、おととしの秋。ブイヨンがいないと、京都に行ってもつまらないんです。夫婦二人では、なんか寂しいというか、物足りない。だから行くときは、いつもブイヨン連れです。


樋口可南子 イメージ1 私、疲れると、ブイヨンの体に顔をギュッとおしつけるんですよ(笑)。すると、犬の温もりやふわふわした感触、匂いがとても気持ちよくって、頭も楽になるし、目の疲れもすーっととれていく。つきあいが深くなればなるほど、いとおしさが増していきますね。大人になるにつれて私たちのことをよく理解するようになってきたので、子犬の頃とは違うコミュニケーションが生まれてきます。ときどき「人間じゃないか」と思うこともあるし、自分が産んだんじゃないかと思うこともあるし(笑)、体の一部みたいな感じ。いつか、人間の言葉をしゃべるような気さえしてきます。(笑)


樋口可南子 イメージ2糸井の仕事にも、変化がおきました。私たちが惚れこんだジャックラッセル・テリアの写真を、自分のブログ「ほぼ日刊イトイ新聞」で紹介し始めたところ、ものすごい反響で。それがきっかけとなって、『Say Hello! あのこによろしく。』という本が生まれました。また、昨年のお正月からデジタルカメラで写真を撮って、「気まぐれカメら」という連載を始めました。これもブイヨンがいなければ、やらなかったでしょうね。同じようなものを撮っても、犬がいるだけで、ドラマが生まれるんです。だから仕事に関しても、すごくいいものをいただいた。

それまでは自分たちのことだけを考えていればよかったけれど、動物と一緒に暮らしていると、そうはいかない。大変だけど、「世話をする」喜びがあります。世話をする対象ができたことで、少し成長できたのかな、という気がします。

樋口可南子 イメージ3犬って不思議ですよね。なんでこんなに人間と相性のいい動物がこの世に生まれたんだろうと思う。いつも寄り添ってくれるけど、一人でいたいときは、す〜っと離れていく。寝いときは、「ちょっと失礼」みたいな感じで。「今、寝室に行こうとしているでしょう!」と言うと、「ハッ!」とびっくりしてこちらを見る。(笑)

ブイヨン出会えたおかげ、生活も仕事も活性化されました。糸井は「ブイヨンはうちの希望だ!」と言っています。たった一匹の犬だけど、「ブイヨンがいるのといないのでは生活の楽しみ方の量がぜんぜん違ったなぁ」と、しみじみ思う3年間です。


[Say Hello!] Photograph by Yukio Iwasaki
©2004-2007 HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN


樋口可南子

樋口可南子樋口可南子(女優)
1958年、新潟県生まれ。女子美術大学在学中、スカウトされ、20歳でテレビドラマ『こおろぎ橋』で主演デビュー。
1992年『陽炎』で第15回日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞。代表作に映画『ベッドタイムアイズ』『陽炎』『阿弥陀堂だより』『明日の記憶』、舞台『近松心中物語』『欲望という名の電車』、など多数。『樋口可南子のきものまわり』『樋口可南子のものものがたり』を出版



小泉佳春 「樋口可南子のものものがたり」より
ほぼ日刊イトイ新聞 -Say Hello! あのこによろしく。
樋口可南子


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