

メインディシュの子羊の料理に添えられていたのが、黒トリュフのコロッケ。見た目は何の変わりもない普通のコロッケである。口に入れるとトリュフの香りが広がった。衣に封じ込められていたときにはわからなかった香りである。世界三代珍味だけあって、やわらかい香りに満たされた気持ちになる。トリュフは日本名を西洋松露という。その名のとおり、日本が松茸ならば、西洋はトリュフである。フランスの南西部ベリゴール地方が産地で、フランス料理によく使われる。
蓋をあけると、湯気が一気にひろがる。鍋の真中に、赤く炊き上がった鯛が一匹そのまま、だしでほんのり色づいていたご飯に埋もれるように横たわっている。下に隠れているおこげのこおばしさが漂う。ここでもう食べたい思いで唾を飲む。
真ん中に鴨があり、鴨をフォアグラが囲み、さらにそれらをパイが包んでいた。パウンドケーキのように形作られたものを、厚さ1センチ弱に切って皿に盛ってある。
こんがり焦げ目のついた舌平目の皮が皿の上で、ジュージューと小さい音を立てている。
今はなくなったが、北京の袁世凱の家のあとに四川飯店があった。門をくぐり、敷地内に入ると、中国の歴史を感じさせる建物と庭がある。全部が10畳ぐらいのこじんまりとしている個室である。窓からは中庭の池が見え、池を渡る赤い橋の中央に楼がある。
イタリア料理店のワゴンには、スズキ、鯛、キンキ、メバル、蛤など新鮮な魚介類が氷の上に並べられていた。「今日のお勧めは?」と聞くと「ホウボウです。秋から冬にかけておいしい魚です」といわれた。「アクアパッツアにとても合います」とつけ加えられれば食べたくなる。
ふぐの厚いお造りを何枚か大胆にとり、もみじおろしとあさつきを入れたポン酢で食べる。ふぐの歯ごたえを感じる。大皿に並べられたふぐの刺身を見るたびに、なぜ皿の模様が見えるほど薄く切るのか残念だった。さらに皮のコリコリした食感も味わい、コラーゲンを補給する。
鯛のお腹にローズマリーとローリエ、タイムを詰めて、オーブンでアルミホイルの包み焼きにする。テーブルに運ばれると、ローズマリーの香りが漂い、安らかな気分にさせてくれ、食欲を誘う。
デミグラスソースと、とろとろに柔らかくなった肉が決め手のビーフシチュー。にんじん、たまねぎ、トマト、セロリといった野菜の原型がなくなるまで長時間煮込んだシチューは、トマトと赤ワインの酸味に、にんじんとたまねぎの甘みが加わり、さらに牛肉のうまみが絡み合う。どの味が勝っているともいえない、絶妙のバランスを楽しむ。
秋には必ず上海蟹を食べに出かける。シーズン中に何度か食べたいが、最初の上海蟹は特別な思い入れがある。シーズンが来るまで、待たされて食べる上海蟹となれば、気持ちも高揚する。当然、期待値も大きい。