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一期一会
ベル・ペンドリへようこそ
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 [040] トリュフのコロッケ
トリュフのコロッケ メインディシュの子羊の料理に添えられていたのが、黒トリュフのコロッケ。見た目は何の変わりもない普通のコロッケである。口に入れるとトリュフの香りが広がった。衣に封じ込められていたときにはわからなかった香りである。世界三代珍味だけあって、やわらかい香りに満たされた気持ちになる。トリュフは日本名を西洋松露という。その名のとおり、日本が松茸ならば、西洋はトリュフである。フランスの南西部ベリゴール地方が産地で、フランス料理によく使われる。

5ミリぐらいのサイコロ状のトリュフがたくさん入っており、歯ごたえもある。食べるにしたがって、さらに香りが広がる。
コロッケという日常、家庭の食卓に出てくる料理に使ったシェフの大胆さに驚くが、その柔軟な感覚に感謝。(2008.01.08)
 
 
 [039] 鯛めし
飴釉の土鍋が白木の井桁にのせられ、鯛めしが炊けてきた。高温で十分に時間をかけて炊かれた鍋の空気穴から蒸気が立ち上がっている。

鯛めし 蓋をあけると、湯気が一気にひろがる。鍋の真中に、赤く炊き上がった鯛が一匹そのまま、だしでほんのり色づいていたご飯に埋もれるように横たわっている。下に隠れているおこげのこおばしさが漂う。ここでもう食べたい思いで唾を飲む。

ここからは店主の出番である。鯛と対面したかと思うと、まず背びれ側の骨と身の間に箸を入れて切り離す。腹側も同様に骨と身を分ける。次に箸が皮を持ったかと思うと、薄い皮を破れることなく取りさる。背骨以外の骨を、1本も残さずに取っていく。早い。頭の身と頬の肉を外す。ここで頭を皿に移すのだが背骨も鯛の姿のまま、肉片もつかずについてくる。その箸さばきに見入ってしまう。鯛の身とご飯が混ぜられ、つやのある鯛めしが茶碗に盛られる。まだ一口も食べてもいないのに、おかわりはおこげのところを、そして茶漬けでしめようと考えている。
残った鯛めしは折につめてもらう。明日の朝食である。鯛めしは冷や飯もたまらなくおいしい。(2007.12.26)
 
 
 [038] 鴨とフォアグラのテリーヌ
フランス料理店のアントレのメニューに「鴨とフォアグラのテリーヌ」というどっしりとした重いものがあった。メニューの下にパイ包みと説明が加えられている。まるでメインの料理のようである。お勧めといわんばかりに最初に記されていた。

鴨とフォアグラのテリーヌ 真ん中に鴨があり、鴨をフォアグラが囲み、さらにそれらをパイが包んでいた。パウンドケーキのように形作られたものを、厚さ1センチ弱に切って皿に盛ってある。

ナイフを入れるとサクッと乾いた音がする。パイはサクサクしているが、生地の一枚一枚がきめ細かく優しい食感である。表面は香ばしく焼いてあり、なかのパイよりは少し硬い。フォアグラと鴨は同じくらいの量である。軽く焼いた鴨の存在感と味を感じたかと思うと、フォアグラのまろやかな、しっとりとした甘みが広がる。フォアグラがあっさりしているのには驚いた。いくらでも食べられそうな錯覚に陥る。素材の特徴を生かした組み合わせに脱帽。オードブルから重い料理を頼んでしまったと不安だったが、メインを食べる意欲が増す。(2007.12.18)
 
 
 [037] 舌平目のムニエル
舌平目のムニエル こんがり焦げ目のついた舌平目の皮が皿の上で、ジュージューと小さい音を立てている。
500グラムはあると思われる大きな舌平目から、バターの甘く香ばしい風味が漂う。ウエイターが手際よく取り分けてくれる。骨の身離れもいい。
端がカリカリに焼かれていて、その焼き加減と身の柔らかさにバターのこくが合う。舌平目はあっさりしているので、ムニエルに向いている魚である。
パリの古いブラッセリーで、白ワインを飲みながら、大きな舌平目をおいしそうに食べていた紳士の幸せそうな笑顔を思い出す。(2007.12.11)
 
 
 [036] 麻婆豆腐
麻婆豆腐 今はなくなったが、北京の袁世凱の家のあとに四川飯店があった。門をくぐり、敷地内に入ると、中国の歴史を感じさせる建物と庭がある。全部が10畳ぐらいのこじんまりとしている個室である。窓からは中庭の池が見え、池を渡る赤い橋の中央に楼がある。

麻婆豆腐は日本で食べるようなこくはない。日本では調味料に味噌を入れて、味に深みを加えているところもあるが、ここはすっぱくて辛い、中華料理には六種の辛さがあるが、これは酸辛である。しかもストレートに辛い。舌をピリピリと刺すようであり、じわっと汗がでるような辛さだ。中国の黒酢がきいていて、あとを引く。もう食べるのをやめようと思うが、つい口に運ぶ。
デザートのマンゴープリンでほっとする。あの味を思い出すとまた行きたくなるが、なくなってしまったのが残念である。(2007.12.04)
 
 
 [035] アクアパッツア
アクアパッツア イタリア料理店のワゴンには、スズキ、鯛、キンキ、メバル、蛤など新鮮な魚介類が氷の上に並べられていた。「今日のお勧めは?」と聞くと「ホウボウです。秋から冬にかけておいしい魚です」といわれた。「アクアパッツアにとても合います」とつけ加えられれば食べたくなる。

アクアパッツアは南イタリアの代表的な料理である。フライパンにオリーブオイルとニンニクを入れて、ニンニクのうまみが十分出るまで待ったところに魚を入れ、軽く焦げ目をつける。そこにあさり、ドライトマト、オリーブ、ローリエを加えて水煮にする。最後に塩とこしょうで味をととのえ、パセリを少しふりかける。大きな皿に盛られたホウボウ。まわりにあさりが置かれ、ドライトマトの赤とパセリの濃い緑が色を添える。
ホウボウとあさりから出たうまみに、ドライトマトの酸味と甘みが絡まっている。ローリエとニンニクの味もしみこみ、香りが食欲をそそる。脂にのったホウボウが適度にこくを加えている。シンプルに水で煮るので、それぞれのうまみが素直に引き出されている。(2007.11.27)
 
 
 [034] ふぐ
ふぐ ふぐの厚いお造りを何枚か大胆にとり、もみじおろしとあさつきを入れたポン酢で食べる。ふぐの歯ごたえを感じる。大皿に並べられたふぐの刺身を見るたびに、なぜ皿の模様が見えるほど薄く切るのか残念だった。さらに皮のコリコリした食感も味わい、コラーゲンを補給する。
塩をかけた白子を軽く火であぶる。白子のまわりに少し焦げ目がついているが、中はやわらかくとろりとしている。ひれ酒がすすむ。

ふぐのから揚げには冷えたビールが合う。塩焼きのふぐはあっさりしていて、ふぐらしい食べ方である。ここでひれ酒に戻るのだ。
こんなに食べたのだから、もう十分とは頭だけで思っているらしいが、「ぞうすいをつくりましょう」と言われれば、もちろん食べる。最初はそのまま、2杯目はもみじおろしとあさつきが入ったポン酢を少し加えて、味に変化を出す。
デザートのいちごの甘酸っぱさで満足度は最高潮になる。(2007.11.20)
 
 
 [033] 鯛の香草のグリル
香草 鯛のお腹にローズマリーとローリエ、タイムを詰めて、オーブンでアルミホイルの包み焼きにする。テーブルに運ばれると、ローズマリーの香りが漂い、安らかな気分にさせてくれ、食欲を誘う。

身は柔らかいが引き締まっている。鯛自身のうまみを塩が引き締め、包み焼きで適度に脂が落ちている。ウエイターが「ゲランドの塩を使っています」と説明してくれた。ゲランドの塩はフランスブルターニュ地方で、太陽と風の力だけで、手作業で丁寧に乾燥させて作られる天然天日海塩。マグネシウム、カルシウム、鉄が多く含まれて優しさと深みを作り出す。
最後にギュと絞ったレモンで一味加えて口に運ぶと、なんとも豊饒で思わず声が出る。(2007.11.13)
 
 
 [032] ビーフシチュー
ビーフシチュー デミグラスソースと、とろとろに柔らかくなった肉が決め手のビーフシチュー。にんじん、たまねぎ、トマト、セロリといった野菜の原型がなくなるまで長時間煮込んだシチューは、トマトと赤ワインの酸味に、にんじんとたまねぎの甘みが加わり、さらに牛肉のうまみが絡み合う。どの味が勝っているともいえない、絶妙のバランスを楽しむ。

大きな白い皿に濃いソースの強いアクセント、丁寧に作ったシェフの思いを感じさせる。肉は口に入れると、溶けるように崩れる。なかまでしみ込んだソースの濃厚な味に、これぞメインディシュという存在感がある。(2007.11.06)
 
 
 [031] 上海蟹
上海蟹 秋には必ず上海蟹を食べに出かける。シーズン中に何度か食べたいが、最初の上海蟹は特別な思い入れがある。シーズンが来るまで、待たされて食べる上海蟹となれば、気持ちも高揚する。当然、期待値も大きい。

上海蟹を紹興酒に漬けた酔っ払い蟹を1盃、先に食べる。蟹の身の甘みが紹興酒とあいまって、食欲をそそる。そのとろけるような食感としっかりとした味のコントラストも見事である。次にボイルした蟹のオスとメスを2盃づつ、豪快に食べる。
ほぐした身をそのまま食べると、塩分をわずかに感じ、身の甘みとやわらかさが、口の中に広がる。次にお店で出してくれるたれをつけて食べる。甲羅には味噌がたっぷり入っている。こくと珍味を味わう。
最後に生姜湯を飲んで、蟹を食べて冷えた内蔵を温める。合計5盃の蟹をただひたすら食べた。秋の贅沢なひとときである。(2007.10.30)
 
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