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一期一会
ベル・ペンドリへようこそ
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 [030] 鯛の一夜干し
鯛 鯛は刺身で食べても、昆布〆でも、塩焼きや酒蒸しにしても、魅力的な魚である。魚料理の専門店で、メニューを見ていると「鯛の一夜干し」が目に入った。よく食べるメニューでないだけに、そそられた。秋は鯛がおいしい季節である。

開いた鯛がこんがりときつね色に焼かれている。香ばしさとともに、かすかな甘みが漂ってくる。身をほぐすとほくっとした鯛の身が湯気をあげた。ほどよく脂がのっているが、あっさりした鯛の上品な味、塩焼きよりもしっかりとした味わいがある。部位によって脂ののりも異なり、背中、腹、頬、それぞれに少しずつ味が違う。最後は骨としっぽだけがきれいに残った。
帰り際、料理長に「いい鯛だった」と言うと、「干上がりといい、焼いている時の脂の焼ける音といい、火の通りといい、いい感じだったんで自信があった」といい笑顔が返ってきた。その横を干し網に吊るされたからすみが通っていった。いろいろがうまくなる季節である。(2007.10.23)
 
 
 [029] ソバ デ アホ
ソバ デ アホ これからの季節のスペイン料理の代表が「ソバ デ アホ」。薄くきったニンニクをオリーブオイルでじっくり炒めて、パプリカとオニオンを加えさらに炒め、コンソメのスープを加えて作るスープである。生ハムの端やかたくなったフランスパンを入れ、卵をかきたまふうに回して完成。

オリーブオイルに十分にしみこんだニンニクの味と風味、生ハムから出るスープ、それらがコンソメと融合すれば、深い味になる。生ハムの切れ端が口に入ったかと思うと、次はトロトロのニンニクとフランスパンが。一様ではないのも味に変化をつけてくれる。
寒い夜には、「ソバ デ アホ」が恋しくなる。汗をいっぱい掻くので風邪のひき始めにもってこいのスープだ。(2007.10.16)
 
 
 [028] 天ぷら
天ぷら からっと揚げた海老を塩で食べる。小ぶりの海老は尾まで食べる。海老の甘みと天ぷらのころものさくっとした感じが、塩で一気に表出する。
キスの天ぷらは、天つゆに大根おろしを多めに入れたので食べる。天つゆのだしがキスの淡白な味にしみこみ大根おろしの辛味がアクセントをつくる。

茄子は天つゆで、たまねぎは塩、かぼちゃも天つゆにする。塩でさっぱり食べるのもいいが、丁寧にとっただしで天ぷらに一味加えるともっといい。
アナゴにいく前に、小さめの海老を入れる。この順番がおつなのである。試してみるとわかる。もちろん塩。最後はかき揚げ。かき揚げをお茶漬けにする。天茶は油っぽくてしつこく思われがちだが、わさびとごまとお茶で、さっぱりしている。わさびの香りがきめてである。(2007.10.09)
 
 
 [027] 鉄板焼き
鉄板焼き 牛肉の鉄板焼きは、ときどき食べたくなるメニューである。フィレかサーロインを鉄板で焼くという最もシンプルな料理だ。
肉好きならばレアで、焼かれた肉のうまみとやわらかい肉を味わいたいならミディアムに仕上げてもらう。料理人が目の前で焼いてくれるので、途中でもう少し焼いてなどと注文をつけてもすぐに対応してもらえる。

鉄板に置かれた肉は、ジューと音を出しながら、肉汁が滲み出さないようすばやく焼き色をつける。と同時に、肉が焼かれていくにおいが漂ってくる。おなかは十分に受け入れ態勢を整えている。
ニンニクの香ばしく独特の香りが、さらに食欲を誘う。カリカリに焼かれたニンニク、たれも準備された。
口に入れると、肉汁が広がり、幸せに思わずうなずく。締めは、ガーリックライス。ライスとニンニクと肉のうまみがたまらない。(2007.10.02)
 
 
 [026] 栗
栗 モンブランは栗のお菓子の代表である。一年中、食べることができるが、やはり秋にかぎる。栗を練りこんだクリームが細く幾重にもたっぷり盛られており、その上には栗が乗せてある。中はやさしく軽い生クリームが詰まっており、底にはきめ細かなスポンジがある。

フォークで最初に上から下のスポンジまでを取って食べると、そのハーモニーに笑みがこぼれる。栗の味、生クリームの甘みとやわらかさ、スポンジがその味をさらに引き出してくれる。
レストランでも、カフェでも、ケーキ屋でも、栗のケーキには腕をふるっているこの時期、いろいろ食べ比べると、その店のフィロソフィーがわかっておもしろい。(2007.09.25)
 
 
 [025] 秋味
鮭の塩焼き 海洋に出た鮭が秋になると生まれた川に戻ってくる。産卵のためであるが、川に入る直前に海岸でとれた鮭は「秋味」と呼ばれ、一番おいしい。シンプルに塩焼きにして食べるとそのおいしさはよくわかる。鮭の身のほどよい柔らかさと塩とのバランス。脂がのった身からは、コクのある肉汁が滲み出る。

温かいご飯に鮭の塩焼きは言うまでもないが、お茶づけにもいい。子どものころから知っている味だからか、安心感も加わり、味も倍加する。(2007.09.18)
 
 
 [024] 松茸の土瓶蒸し
松茸の土瓶蒸し 天高くぬけるような青空に乾燥した涼しい風を感じるようになると秋本番。湿度が低く、夜の気温も下がり、睡眠も十分に取れるようになると食欲が出てくる。

日本料理店では、松茸のメニューが並ぶ。その中でも、まず最初に食べたいのが松茸の土瓶蒸し。急須のような土瓶にお猪口のような器がかぶせてあり、器の上には半分に切った酢橘が置いてある。土瓶の口からは、いかにも食べごろと言わんばかりに湯気が出ている。
蓋を開けると、松茸の香り漂う。一年ぶりの香りが食欲を誘う。松茸と鱧と鯛の土瓶蒸し。まずは、酢橘を搾り、スープ(※スープ、と言っていい? だし?)を飲む。松茸の香りとともによく出ただしの香りが絡まる。お猪口の一杯、一杯がありがたい。この秋は、何回食べることができるのかと思いながら、深まり行く秋を愛でる。(2007.09.11)
 
 
 [023] ポルチーニのリングイネ
ポルチーニのリングイネ 9月に入ると、この前までの猛暑がうそのように秋風に変わった。心地いい風の中に、凛とした冷たさを感じる。秋と言えば、待ちに待った食材が豊富な季節。その中でも特徴的なのはキノコだ。

日本料理もフランス料理もイタリア料理もキノコ料理が用意される。シェフオリジナルの工夫されたメニューが手書きでつけ加えられる。
イタリア料理店のワゴンにも、新鮮な野菜が並べられていた。イタリア人のウエイターが、慣れない日本語で熱心にフレッシュのポルチーニ茸は栽培が不可能なため、この時期しか食べられず、香りがよくて、リゾットにしても、パスタで食べるのもいいと説明するので、ポルチーニのリングイネを食べることにした。 ポルチーニ茸は、イタリアで採取されるキノコの一種。パスタが目の前に置かれると、フワァーとポルチーニ茸の甘い香りが漂う。独特の旨味があるがしつこくない。また、歯切れのよい食感もこのキノコ独特のものだ。イタリアではよく使われて最も親しみのあるキノコである。
秋が深まるにつれて、おいしい食材はたくさん出てくる。まさに食欲の秋、本格到来ももうすぐである。(2007.09.04)
 
 
 [022] ミョウガご飯
ミョウガご飯 毎日、35度という猛暑。涼を求めて新幹線に乗る。長野新幹線ができてから、車で3、4時間かけて東京から軽井沢に向かうよりも、新幹線のほうが気軽である。約1時間で着いてしまう。渋滞もなければ、運転の疲れもない。

軽井沢の日中の気温は25度。風が爽やかである。真っ青な空に木々の葉が輝き、木陰はさらに涼しい。どこまでも緑が続いている森を見て森林浴。緑が多いため空気は澄んで気温が下がる。木々におおわれたテラスでの食事は暑さで萎えた食欲を取り戻してくれる。
とはいえ、まだ着いたばかりなのでさっぱりと日本料理を食べる。ゆばとおひたしと今年最後(9月に入ると禁漁となる)の鮎の塩焼きを食べて、最後はミョウガご飯。このミョウガご飯がすばらしい。油揚げとだしで炊いたご飯に千切りにしたミョウガをたっぷり乗せてある、ただそれだけ、いたってシンプル。茶碗を手に持つと、ミョウガの香りが漂っている。よく出ただしとミョウガの微妙な味、シャキシャキという歯ごたえが清涼、静謐、絶妙。まさに盛夏の一腹。さて、今夜は何を食そうかと思い巡らす回復の早さに唖然。(2007.08.28)
 
 
 [021] 車海老のビスク
車海老のビスク ビルからの熱気とアスファルトの照り返しで気温は40度近い。東名高速道路を西に走っていると、御殿場に近づくにしたがって緑が多くなって、外気温度を示すメーターが0.5度ずつ下がり始める。
箱根まで1時間30分。芦ノ湖畔に到着したのは午後4時半。湖面に写る太陽の光はすでに夕方の輝きである。漣がたっている。風も吹いてきた。木々のざわめきと蝉時雨を聞きながら湖畔の森を散策し、食事の前に一休み。
ここは高い分、山に囲われている分暮れるのが早いのだ。あまりの暑さにたまりかね、そうだ箱根でディナーをと思いつき、レストランを予約したが、薄暮で食事を始めたいと希望すると、5時半にお越しくださいと言われたのはこういうことかと合点した。

テラスで食前酒を飲み、ダイニングに入る。オードブルが終わり、スープが運ばれてきた。細長く小さなグラスには2層になったスープが入っている。上はクリームのカプチーノ仕立て。下は車海老のビスクである。まるでデザートのようだ。
冷たくクリーミーな感触が唇に触れたかと思うと、熱いビスクが流れ込んでくる。ロブスタービスクのような濃厚さはないが、うまみがよく出たさっぱりした味、温度差、その調和が清涼、繊細である。暮れはじめた庭を渡る涼やかな風を感じる。見事である。ちなみにこの時外気温23度。(2007.08.21)
 
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