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一期一会
ベル・ペンドリへようこそ
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 [020] 葛きり
葛きり 葛きりは、いま夏のデザートと限ったお菓子ではないが、やっぱり夏が一段とおいしい。二段重ねの漆器で運ばれてくると、絵柄が上になるように蓋を置き、まず、塗器を愛でる。こういうところが日本料理の真骨頂である。上の段には黒蜜が入っており、下の段には氷水に浸された葛きりが入っている。水に透き通った氷が浮かび、その下に乳白色の短冊に切った葛きりが潜んでいる。黒蜜、葛きりと一つひとつをまずは目で楽しむ。涼やかであると同時に風流がある「和」の楽しみ方である。

黒蜜につけて葛きりを食べる。蜜の上品な甘さ、葛の淡白さ、冷たく独特の弾力と食感、喉を通るそのつるりとした感触に清涼感がます。冷房のない時代の知恵に脱帽。(2007.08.14)
 
 
 [019] すいか
すいか 気温30度をこえて暑くなると、水分を身体が求める。きりりと冷えた大きなすいかに包丁を入れると、「パキッ」と亀裂が入る。半分に割ったすいかをスプーンで真ん中からくずしていき、ぶっかき氷を入れ、赤のポ−トワインを加えてポンチをつくる。

果肉はシャキシャキしていて、水分たっぷりである。すいかの素っ気ない甘さとポートワインのまるい甘さが喉に満ち、一気に生気と潤いを与えてくれる。残りの半分はきりりと冷やして、三角に切り、そのまま食べ、のこった白い肉で紫外線を浴びて悲鳴をあげている皮膚を癒す。すいかには、血液をさらさらにする効果があるのだから、夏の身体には必須である。(2007.08.07)
 
 
 [018] 冷やし中華
冷やし中華 中華料理店のメニューに冷やし中華が加わると夏、しかしほんとにおいしいのは晴れ上がって気温が30度を超えてから。醤油味や坦々麺の冷やし中華もあるが、やっぱり“ごまだれ”で食べたい。酢は利いているが利きすぎず、こくはあるがすっきりしている好みの“ごまだれ”に出会うと無心無言で食べてしまう。

暑い中、オフィス街を歩いていると「今日はあのレストランのあのごまだれ」と決まってしまう。きくらげのコリコリでも、きゅうりのシャキシャキでも、鶏肉のさっぱり感でもなく、ごまだれが決め手になる。坦々麺のような深い“こく”ではない。すっきりした“こく”、すっきりしているからといって薄いわけではない、しっかりしている。ごまに涼やかという表現は合わないが、クリーミィでさらっとした涼やかさはある。こしのある中華麺にたっぷりの具を乗せて、たっぷりのごまだれをかける。適度な冷たさで、さらに食が進む。(2007.07.31)
 
 
 [017] 鱧
鱧 おいしい食材が極端に少なくなる盛夏。祇園囃子のチャンチィキが聞こえてくれば鱧。花火の音が響きだすと、枝豆、そうめん、それがすべて。
鱧料理の定番は「牡丹鱧」である。鱧は小骨が多いので、細かく包丁を入れ、小骨を切っていく。この時、皮は切らない。骨切りを細かく丁寧にしたものは、熱湯に通すと反り返ってきれいな白い花のように開く。「牡丹鱧」と言われるゆえんである。冷やして梅肉をつけて食べれば、まさに夏の味覚。

梅肉の酸味とさっぱりした感じが、鱧の淡白な身に味を作り出す。なんともすっきりした味と気分。活〆された鱧は、身が引き締まって真っ白。見た目にも涼やかである。
鱧料理を有名にしたのは京都の料理人だ。生命力の強い鱧は、祇園祭に欠かせない魚となった。暖海性の魚で本州の中部から南で捕れ、関東地方以北と日本海には少ないという状況もあるが、「涼」を表現して「牡丹鱧」のように絵画的な美を生み出すのは、京都にはかなわない。(2007.07.24)
 
 
 [016] 新鮮な魚介類
新鮮な魚介類 夏の北海道は湿度も低く、爽やかで、海のもの、山のもののどちらの食材も豊富だ。
雲丹は殻を割って、その殻に盛る。ただそれだけでいい。磯の香りと海水の塩分だけでも、わさび醤油でも、甘みは口に広がり、柔らかさは記憶に残る。
たくさん盛られたイカの刺身。優しくきめの細かさを感じる舌触り。なんとも柔らかいのに芯は歯ごたえがある。こんなに甘かったのかと認識を改める。
ホッキ貝を軽く火であぶって醤油で食べる、噛めば噛むほどその甘さは強くなる。
毛蟹を茹でたものにしゃぶりつく、ほどよい塩加減にほどよいうまさ、たれなどいらない。店の主人がたらば蟹を炭火で焼いたものを持ってきてくれた。炭で焼くと一段と甘みが増す。もちろん何もつけずに食べる。新鮮なものが近くでとれるのだから、一番のご馳走はそのまま食べることである。(2007.07.17)
 
 
 [015] 鰻
鰻 土用といえば鰻である。この日に鰻を食べようとするとどの店も長蛇の列である。老舗の中には、土用には世間で鰻が売れすぎで、いいものが量入らないことを理由に店を閉めるところもある。それほど、客が集中する。鰻は1年中食べられるが、夏の暑さにへたり込んだ体にはスタミナが必要と感じるのだろう。

蒲焼のにおいに誘われて鰻屋に行き、空腹を再認識すれば食べたい思いは最高潮に達する。そこにビールと「にこごり」がすばやく出てくれば、その冷たくツルンした素っ気ない食感と湧き上がる鰻の味に期待どおり満足する。ゆっくりビールを飲み、さくっとさっぱりした鰻の酢の物「うざく」で冷酒にかえ、「肝焼き」をいただく。天然物の鰻の肝は、歯ごたえも苦味もほどよい。1本の肝焼きを大事に味わう。

鰻は客の顔を見てから裂くので、焼きあがるまで大分間ができる。ちょっと前まで、若い女性を鰻屋に誘うと下心を疑われた。やっと上がった厚みのある「白焼き」に天然塩と酢橘をかける。塩で鰻のこくと脂がいい感じになる。さらに酒が進む、最後に「蒲焼」で馴染みの味の満足感に浸る。口に入れるとふわっと柔らかい鰻、山椒のかけ加減で味を調節し、たれのかかったご飯と蒲焼で満腹、堪能。これでスタミナも十分。今日だけはダイエットに目をつぶる。(2007.07.10)
 
 
 [014] ガスパッチョ
ガスパッチョ 照りつける太陽、真っ青な空に入道雲、夏休みが待ち遠しい。指折り数えて予定を考える。で、夏には「ガスパッチョ」。スペイン南部、アンダルシアのトマトベースの冷たいスープ。

スペインの軟陶、茶色い飴釉の器にたっぷりと入れられた赤いスープ。キューリやピーマン、トマトが小さな角切りにされてそのまま入っているレストランもあれば、別の皿に盛られて好みでトッピングして食べるところもある。赤、黄、緑、白と野菜も色鮮やかで、スペインの乾いた夏を思わせる。

口に含むと酸味が先走り完熟トマトの甘みが口全体に広がる、にんにくやビネガー、オリーブオイルなどが深みを出し、シャキッとした新鮮な野菜の角切りが味に変化を与える。絡まるこくとシンプルな味の調和。しかもキリリと冷たく喉越しもいい。暑さで萎えた胃に食欲が蘇える。
ガスパチョは火を使わずに作るため、野菜が持っているビタミンA、ビタミンC、ミネラルが壊されることなくそのまま存在しているので低カロリーで栄養価が高い。夏に食べられる理由は、おいしいからだけではないのである。(2007.07.03)
 
 
 [013] 鮎ごはん
鮎ごはん 食事の最後の締めを何にするか、食べ進めなければわからない時もある。満足するためには、締めは大切である。
白いごはんに香のものと汁ものでシンプルにすっきり終わらせるのもいいし、冷たい麺でさらりと終わるのもいい。しかし、今日は鮎の焼きものだけではもの足りないので「鮎ごはん」にする。

鮎ごはんを待っているが、いったい何分経っただろうか。待ちくたびれているのを主人が察し、ゆばのさしみがなぐさみに運ばれてきた。注文を受けてごはんを炊くのだから時間がかかるはずである。ごはんは蒸し方でおいしさが変わってくる。ここは待つしかない。
やっと土鍋が運ばれてきた。開けると、すでに鮎はほぐされてまんべんなくごはんと交ざっている。鮎の香りが漂う。やっと口にする、出汁のしみこんだごはんに鮎の味わいが合って「おいしい」と呟く。待った甲斐があった。(2007.06.26)
 
 
 [012] 鮎
鮎 土塀伝いに歩いていくと、門に盛塩が置かれ、三和土(たたき)には水が撒かれていて涼しげである。塀からのぞいた竹がわずかな風に揺れている。格子の戸を開けると、藍色の麻の暖簾が迎えてくれる。中は燭台にろうそくが灯され、鉄扇が活けてある。日本料理店に来るたびに日本の風情はいいものだと思う。

品書きに加えられた「鮎の焼きもの」、そういえば解禁の処もちらほら。串に刺されて焼かれた鮎、焼きあがった鮎は、身が崩れないように丁寧に串をとって皿に置かれる。すらりとした美しい姿。骨を奇麗に取り除くために、箸で押さえて身離なれをよくする。一気に引き抜くと頭と骨と尻尾がきれいに残る。焼きたてを食べたいが、この作業は楽しい。口の中に、やわらかく淡白な身の触感と濃くのある苦味が広がった。繊細と野卑が同居する。初夏は鮎を食べなければ始まらない。(2007.06.19)
 
 
 [011] パルメザンチーズのリゾット
パルメザンチーズのリゾット 「ボナセーラ!」店に入ると、数人の大きな声と笑顔で迎えられる。イタリア語は得手ではないが、つい「ボナセーラ!」と挨拶してしまう。午後7時半。テーブルに座ると満席だった。パスタ、魚のグリルなどが運ばれていく。隣のテーブルは、白ワインのボトルがさげられ、赤ワインに変わった。注文したものがイタリア語で厨房に知らされる。客の話し声と調理場の熱気が交差する。

ウエイターが大きなパルメザンチーズをテーブルまで抱えていき、中を見せている。皿に盛ったかと思うと、次の客のところへと重そうなチーズを運ぶ。そしてまた、抱えていく。その中身は、「パルメザンチーズのリゾット」である。こんなに人気のメニューならば、トライしないわけにはいかない。

半分に切られたパルメザンチーズがくりぬかれて、リゾットが入っている。皿に盛る直前にさらにチーズをからめる。2年間熟成させて作られたとても硬いチーズである。芯がわずかに残ったご飯とチーズの凝縮された味、ほどよい塩分、濃厚な味がからまるが、しつこくない。イタリアチーズの王様と呼ばれるだけはある。(2007.06.12)
 
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